感応グラン=ギニョル

17件の記録
- よあけ@mogumogu2025年5月5日読み終わった残酷で、耽美な物語。登場人物はそれぞれ傷を抱えているが、可哀想な私であることを拒絶し、私らしく生きようとする。そんな印象のお話たち。 SFらしい特殊な(そして美しく耽美な)設定がなされているのだけれど、最初は全容がわからず、読み進めるうちに少しずつ事情が理解できていくのも面白い。しかも、全容がわからないことでの読みにくさも全くない。 空木春宵先生の単著はまだこれと『感傷ファンタスマゴリィ』だけのようだが、久々に著作を追いかけたい先生かもしれない、、!
- きいろ@yellowpetal2025年3月25日読んでる2話目「地獄を縫い取る」読了。タイトルからの想像に反してSF、でもちゃんと地獄。正直悪趣味なのだろうけど好きな世界観で、浸れました。感情の掘り下げをもっとしようと思えばできそうなのに意外に淡白なのは筆者さんの好みなのか、世界観が独特なのでそこを軽めにしてバランスとっているのか。1話目より好きでした。
- のーとみ@notomi2025年3月5日かつて読んだ空木春宵「感応グラン=ギニョル」読んだ。雑誌やアンソロジーで作品を読む度に、この第一短編集を読まねばと思いつつ、うかうかしてたら去年の暮というか先月、文庫になってしまって、もう、そんなに時間が経ってしまったのかと慌てて買って読んだ。大傑作。牧野修と皆川博子が合体して、乱歩と谷崎の意匠を借りて作った、正しい意味での和製サイバー・パンクが、ここにあった。または、特殊設定変格探偵小説としての現代ホラー。そして、全編、少女たちの怒りが世界を滅ぼしたり変容させたりする物語で、ハッピー・エンドはひとつもないのに、ものすごく読んでいて気持ちがいい。そう、SFって、どうやったら世界を滅ぼせるかを考える文学だったじゃん、と、思い出した。そういうのが読みたくて中学時代、夢中になってSFを追っかけたのだった。 表題作「感応グラン=ギニョル」で描かれる、濃厚な、乱歩というより谷崎潤一郎的な猥雑な浅草と、レジデンツ味のある見世物小屋の描写が、そのまま世界の崩壊の伏線になっている見事さと、ラストシーンでの少女の叫びのリアリティ。続く「地獄を縫い取る」の、サイバーパンク的VR世界と、地獄大夫と一休禅師とのやり取りを重ね合わせて、あらゆる嗜虐趣味の男女をまとめて地獄に堕とす企みの壮絶さ。牧野修「死んだ女は歩かない」を寓話に書き換えたような世界の中で、百合とBLを混沌化した恋愛と自己実現の果てを道成寺伝説に乗せた「メタモルフォシスの龍」。ゾンビは何故、人を食い、ゾンビ化させるのかに鮮やかな解答を提出した、意識のあるゾンビ物の最前線であり、凄まじい百合小説でもある「徒花物語」の構成の妙技。江戸川乱歩オマージュを、「感応グラン=ギニョル」の後日譚として描いた「Rampo Sicks」の、まるで紅蜥蜴=lizardが歌ったような未来の淺草六区で展開するルッキズム論と、それをぶち壊す少女の怒り。その少女の名前が不見世で、黒蜥蜴の物語をベースにあらゆる乱歩作品をギミックに使いながら、明智小五郎を否定している物語世界の勁さに震える。 で、これらの話がホラーとして描かれてるけど、ものすごく正統的にSFなのだ。しかも、ネットワークと演算機構が物語の中心にある。ITライターは、ちゃんと読んで欲しい。ちょうどギブソンの後期作品も全部電書になったから、サイバーパンクの現在を追う意味でも、その辺、まとめて読むのだ。ギブソンにとっての西部劇は、日本人にとっての明治探偵小説だったというのは発見だなあ。そしてアナログ・コンピューティング的なアイディアがあちこちにあって、そして全部ぶっ壊す。
- ゴトウ@ptk5102025年1月3日読み終わった2025年始一発目からオールタイムベスト級の短編集を読んでしまったのですが! 全編どれも良いけど『徒花物語』がSFホラーとして特に自分の感性に一番ビビっときて好き。少女と花と死は取り合わせがいい要素よね……。