予想どおりに不合理

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- ishiguro_reads@ishiguro_reads2025年4月4日読み終わった伝統的な経済学では、製品価格は需要(購買意欲)と供給(生産量)のバランスで決まるとされている。しかし、本書は、消費者が支払ってもいいと考える金額は簡単に操作されてしまうこと、支払い意思が市場価格を左右するのではなく逆転していることを指摘する。価格は相対的なものであり、気持ちにも左右される。 行動経済学という聞き慣れないジャンルに属する本書は、心理学と経営学を修めたイスラエル人の著者によって書かれている。「社会規範のコスト」「高価な所有意識」など、個々のトピックも面白く、特に二酸化炭素排出権取引が社会規範と市場規範が交差するところ、という話などは刺激的だ。だが、最も面白いと感じたのは、たとえば「性的興奮のさなかで倫理的判断に変化は生じるのだろうか」というような仮説・疑問を思いついた後、どのように条件を整えて実験を行うことで定量的な実験とすることができるか、という実験のデザインにあった。 『生物と無生物のあいだ』と同じように、世界の知らない切り口を知る喜びを感じられる本だった。