列

19件の記録
- 橋本吉央@yoshichiha2025年5月11日読み終わった列に並ぶ、つまり序列の中で自分と人とを比べて浮き沈みする、ということから人は逃れられないし、自分自身が「列に並んでいる」ことを俯瞰しようとすることも困難なくらい日々の認識の中に序列と比較が刷り込まれている。そんなことを物語の中で表している。 中村文則作品によく出てくる絶対的な悪の存在は登場しないが、列というシステム、構造がそれにあたるのかもしれない、と感じた。列の中でもがく中で、個々人の醜さが見えてくるような。 列の中であらゆる手段(他者の罪を暴く、暴力で前に並ぶものを排除する)で自分の快を得ることを試みつつ、どれもうまくいかず、最後はやはり「いつの間にか列に並んでいる」という状況になって終わる。 しかしながら、列に並ぶことから逃れられないなら、少しでも心持ちを楽しくあれ、というささやかな希望を最後にメッセージとして伝えている、そんな印象。 相変わらず、文体とかちょっとしたセリフの引っ掛かりみたいなものが自分には残るなあと思う。
- こんぺい@konpei2025年4月21日読んでる一気に読んで、第1部が終わった。「銃」「遮光」から追っていたけれど、「掏摸」で作者のなにかが変わってしまった気がして離れていた。が、文頭と野間文芸賞に惹かれた。間違ってなかった。「掏摸」以前の肉肉しさをそのままに、不安定だった文体(それも魅力だったけれど)が豊潤な執筆経験で安定している。ここまではほとんど完璧なのだけど、2部3部の不安もある。この熱は技術で保ち続けられるとして、そこからの展開が。あまりに息苦しいので、中長編に向いてない作家なのかな。 古典はともかく、文学は持たざる者にかぎると思っていたのだけど、円城塔しかり、やはり説得力が違う。社会学学士が社会を現すと、もう敵わないのだな、という絶望感がある。