Reads
Reads - 読書のSNS&記録アプリ
詳しく見る
あしか日記
あしか日記
あしか日記
@ashikanikki
  • 2025年5月24日
    菜食主義者
    菜食主義者
    ハン・ガン『菜食主義者』を再読した。この小説は、人間であることを放棄して木になりたいという願いに強く囚われたひとりの女性・ヨンヘを中心に、三つの視点から展開される。ある夢を見たことを契機にヨンヘは肉食を絶つ。やがてヨンヘは一切の食事を頑なに拒むようになる。一種の信仰とでもいえるその拒絶をはじめとした一連の出来事に周囲は激しく動揺し、安定は崩されていく。 ヨンヘの真意が何であるのか。本人の口から直接語られる場面は限定されている。それを知るためには、読者は想像力を振り絞らなければならない。そしてヨンヘの姉・インへがそうしたように、自らの深い絶望と傷ついた身体を媒介にして、彼女の心の深奥に降りていかなければいけない。 ただ、そうしたところで必ずしも他者を理解できるわけでもなければ、救いがもたらされるわけでもない。大抵はすさまじい徒労感が残るだけだ。人の世を見限った個人にとって、生きていればいいこともあるから、という生温い言葉は効力を持たない。 インへの重たい視線は「木になりたい」という願望に共感しながらも、実際に木になることを選ぶことができない私たちの葛藤を代弁している。それは、いつまでも生き続けているような、同時に死に続けているような木々に向けられている。 どこからか鳥の羽ばたきが聞こえる。何かがわたしたちを繋ぎ止めている。
  • 2025年5月17日
    YABUNONAKA-ヤブノナカー
    頭のなかで登場人物たちをバサバサと裁いていくことの奇妙な快感があった。彼らのものの考え方、他者への発言や振る舞い方に対して、「それは間違っている」と断罪することの密やかなよろこびだろうか。 けれど章が変わり語り手が交代するたびに、裁かれて当然と思っていた人物たちの、これまで語られたこととは微妙に異なる経験が明かされると、認識はぐらりと揺らぐ。ひとつの出来事は無数の小さな出来事が複雑に絡み合ってできていて、認識がわずかに揺らぐだけで、真実味はあっという間に脆くなる。まさに「藪の中」だ。 普段、私たちの多くは異なる認識を抱えていると知りつつも、その差異をいちいち確かめることはほとんどない。「考え方は人それぞれ」というのは正しくて安全な考え方だろう。だけどその達観した一般論に傷つき、消耗させられることがあるのも事実だ。どこかですり合わせが必要なのだろうけど、それこそがとてつもなく困難な作業だということを思い知らされる。 時代と価値観の変化が止まることのない状況で、さまざまな幻想に支えられながらも結局は個として生き死んでいく私たちが、お互いを許容できる合流地点ははたしてあるのか。正直うまく想像ができない。常に姿を変える北極の海氷のどこかで待ち合わせをしているような途方もない感覚がある。 けどまあ絶望を突き抜けてはじめて見える希望もあるだろうと、どこか楽観的な気持ちにもさせられるのがこの小説の凄さだろう。どのようなやり方でもいいから、注意深く、ときに大胆に、言葉のバトンを繋いでいくこと。これから語り出そうとしている若い人たちの姿は眩しい。 無思考に裁くことのよろこびなどというのは、実につまらない。
  • 2025年5月17日
    ポスト資本主義の欲望
    ポスト資本主義の欲望
  • 2025年5月6日
    四元康祐詩集
    四元康祐詩集
  • 2025年5月6日
    最近
    最近
  • 2025年5月5日
  • 2025年5月5日
    資本主義リアリズム 増補版
    資本主義リアリズム 増補版
  • 2025年5月1日
  • 2025年4月30日
    すべての、白いものたちの
    すべての、白いものたちの
  • 2025年4月21日
    チョーク!
    チョーク!
  • 2025年4月12日
    サバイバー〔新版〕
    サバイバー〔新版〕
  • 2025年4月6日
    ハイ・フィデリティ
    ハイ・フィデリティ
  • 2025年4月6日
    ファイト・クラブ新版
    ファイト・クラブ新版
読み込み中...
読書のSNS&記録アプリ
hero-image
詳しく見る
©fuzkue 2025, All rights reserved