
鯨るか
@cugiraluca
生徒たちに助けてもらいながら生きたり書いたりしています。また、大切な人と静かに話すこと、及び信頼という徳を、何よりも大切にしています。
★あなたのすべての徳を保ちつづけてください。そのひとつでも汚そうと試みる卑しい人間は滅びるがいいのです。(J・J・ルソー)
★離脱をはたした思考は、諸価値のあいだに真の序列を構築することを対象とする。したがって離脱した思考がめざす対象とは、ひとつの生きかた、よりよき生である。(S・ヴェイユ)
- 2025年5月11日嵐が丘(上)エミリ・ジェーン・ブロンテ,河島弘美読み終わった登場人物の誰にも共感できない、不幸な暴風雨みたいな物語――そう読んでいる方が多いようで驚きました。というのも私は登場人物みんなに共感しつつ、たしかに不幸な物語だとは思いながらも、暴風雨の中であそこまで魂の激しいぶつかり合いが生じるのは幸福だと感じられたからです。「心の中心にいるのはヒースクリフなのよ。たとえほかのすべてが滅びても、ヒースクリフさえいればわたしは存在し続けるし、すべてがそのままでもヒースクリフがいなくなったら、宇宙はひどくよそよそしいものになって、自分がその一部だとは感じられなくなるでしょうね」
- 2025年4月30日コンビニ人間村田沙耶香読み終わったコンビニで18年バイトを続ける女性の話。「外から人が入ってくるチャイム音が、教会の鐘の音に聞こえる。ドアをあければ、光の箱が私を待っている。いつも回転し続ける、ゆるぎない正常な世界」(p.36)「私はコンビニ店員という動物なんです。その本能を裏切ることはできません」「そんなことは許されないんだ!」(…)「いえ、誰に許されなくても、私はコンビニ店員なんです。(…)コンビニ店員という動物である私にとっては、あなたはまったく必要ないんです」(pp.159-160)本当に人間の他者は要らないの? でもちょっと共感
- 2025年4月23日地球星人村田沙耶香読み終わった存在を否定される少女時代を過ごした34歳の主人公。51頁「「何だか気が滅入るわ。只でさえ疲れてるのに」/母は溜息をついた。/家の中にゴミ箱があると便利だ。私はたぶん、この家のゴミ箱なのだと思う」とかリアルに思った。ただ、著者は230頁「常識に守られると、人は誰かを裁くようになる」 や221頁「私は、「人間工場」の道具としての務めを果たせない自分を感じていた」以下の箇所などで、恋愛結婚生殖主義を撃ちたいようだけど、その規範ってまだ強いのかな。私はもう閉じた人間関係しか築いていないので、抑圧は正直ほぼ感じない
- 2025年4月23日生命式村田沙耶香読み終わった食や性を通して生を内視させる短編集。トリッキーな切り口だけど切実。私は「魔法のからだ」が一番ピンときた。「誰かが作った「いやらしいもの」の話をしているだけで、自分の身体の中のいやらしさを、きちんと育てていない」(p.148)人がとても多いと私も感じる。「うーん、うまく説明できないけど……それがセックスだってことまでは、あんまり考えてなかったんだ。抱き合っているうちに、彼の皮膚の内側に行きたくなったの。それだけ」(p.145)もちろん妊娠や感染症については熟慮すべきだけど、性はいつも純粋で真剣であって欲しい
- 2025年4月20日最後のユニコーン〔新版〕ピーター・S・ビーグル,鏡明読み終わった金原瑞人訳で。仲間を探すユニコーンは「わたしは雄牛と対決せねばならないのです。仲間たちがみな死んで、助けるものなどなにもないとしても。わたしが自分のことを永遠に忘れてしまう前に」(p.201)と述べるも、王子に「あなたの夢のなかに入っていきたい。そしてあなたを守ってあげたい。あなたを追い回すものを殺してやりたい」(p.226)など言われるうちに、「あなたが死んだら、わたしも死にたい」(p.265)と零すに至る。ロマンチックだけど仲間の一角獣たちの幽閉描写はグロテスク。アニメ版のユニコーン造形や主題歌ラヴ
- 2025年4月13日世界99 上村田沙耶香読み終わった世界に媚びて生きる主人公は共感できないけど、次のような著者の剔抉は鋭いと思う。「服には記憶が宿っている。さっきまで穿いていたズボンもそうだった。あれを穿いて学校へ行き友達と遊んだり(…)。そういう記憶が全部、粉々になって消えていた」(p.66)次もエグい。「「ピョコルン、ピョコルン」/白藤さんがゆすっても、ピョコルンはぴくりともしなかった。/あちこちに〇〇が飛んでいた。〇〇の中で、ピョコルンは死んでいた」(p.247)あと417頁の「『ダブルロール 3倍長いトイレットペーパー』」以下は凄いブラックユーモア
- 2025年4月5日蛇にピアス金原ひとみ読み終わった恋人アマと彫り師シバさんに出会ったルイが、渋谷を舞台に身体改造にのめり込む話。暴力や性描写が多いけど不思議と清潔な感じ。ルイの以下の台詞には共感しないでもない。「こんな世界にいたくないと、強く思った。とことん、暗い世界で身を燃やしたい、とも思った。」(p.45)「私はただの一般人で構わない。ただ、とにかく陽の光の届かない、アンダーグラウンドの住人でいたい。子供の笑い声や愛のセレナーデが届かない場所はないのだろうか。」(p.46)でも、ルイが男性と関係を持つ前提で生きているのは短絡的な感じがして乗れないかな
読み込み中...