鶴 ――長谷川四郎傑作選 (ちくま文庫は-57-2)

12件の記録
- 文箱@hubaco2025年8月25日読み終わったXを追わなくなって久しく、版元筑摩書房の激熱の紹介投稿も見逃していた。曰く、ものすごい作家、と。 降伏、捕虜生活、逃亡兵のお話ばかり。『シベリヤ物語』より読むのに時間がかかったのは、よりいっそう静かで果てのない牢獄のような世界だったから。後半の随筆「デルスー時代」を読むと作品の素材のようなものも窺い知れる。でも語り口がまるで違っていて、その落差に作家の矜持を感じた。
- とめ@m_ake2025年6月16日読み終わったシベリヤ物語がとても良かったので、すかさず「鶴」を購入。シベリアが、ソ連の捕虜になってからの話であるのに対し、こちらはソ連の捕虜になるまでを描くものが多い。 表題の「鶴」は、望遠鏡でずっと監視をしている兵隊が、鶴や、いろいろ、ひとびとの生活を見つめる。ある兵士が、本を読んだり、立小便をしたりするのを見る。オーウェルの「カタロニア賛歌」で、相手方の兵士がずぼんを抑おさえながら逃げていくのを見て、とても銃を撃てなかった…という話を思い出したりもした。敵というよりも、ひととしての存在が生々しい。 戦争中で、つかまれば命の危機がある。しかし、そんなことにお構いなしに、自然が美しい、ということを随所随所で感じた。兵士が逃げる。北の大地で人もまばらで、逃げ切るのではないか…と思うのだけど、結局はからめとられていってしまう悲しさ。 カンボジアでツールスレン収容所跡地に行ったとき、監獄の中から外を見ると緑があおあおして、自然が豊かで、そんな中でどうして、と思ったことを思い出した。