過ぎてゆく時間にしばられないのが、本の生命力だ。本は読書によって絶えず新しくされてゆく時間をもっている。

もしや明日死んでも、あるひは十年生きてから死んでも、できるだけ裕（ゆた）かな心できれいな体で生きてゐたい。

久しぶりにとても楽しい読書体験だった。国境を越え、母語ではない言葉を話し、性を引っ越したり、何かを探して旅をしたり。登場人物たちの言語に対する洞察や使う言葉の選択が面白く、メモしておきたい箇所がたくさんあった。 「君は仏教徒なの？」 「違うわ。わたしは言語学者。」 「それって宗教だっけ？」 「違うけれど、でも言語は人間を幸せにしてくれるし、死の向こう側を見せてくれる。」

とてもよかった。雪の降る頃にまた読み返したい。

「月の上では」あたしは言いかけてやめた。 「月の上では」コンスタンスはふり向いてにっこりした。「一年じゅうレタスが採れるのかしら？」 「月の上にはなんでもあるのよ。レタスも、パンプキンパイも、アマニタ・ファロイデスも。ネコの毛の生えた植物も、翼をはためかせて踊る馬も...」

レオナルド・ダ・ヴィンチが晩年を過ごしたお城のオーナー一族に生まれた著者が描くルーブル美術館の裏側。歴史ある作品がずらりと並ぶ壮麗なルーブルで、AIや乗用型の洗浄機など新しいテクノロジーがたくさん使われているのが新鮮。