パラソルでパラシュート
34件の記録
梔子@asago_4042026年10月31日読み終わった────人間の運命はちょっとした事でいいほうにも悪い方にも転がっていく。その不確かさを、わたしは希望と呼びたかった。 ライブで同じ歌を口ずさんでいたスタッフに口パクで待ち合わせ場所を指定され、行ってみるとそのままと家に呼ばれて…と初っ端から現実味のない急展開だけれど、読み進めると歳を重ねた人間のリアルが描かれていた。 30歳という壁。 私たちは、遠い昔の顔も知らない誰かに人生の途中で勝手に分かれ道を作られ『結婚』か『仕事』かの看板を立てられてしまっている。 夢についても、自分にとっての夢なのに、世間的な『成功』に入っていないだけで、『挫折』した『失敗』したなんて勝手に言われてしまう。 結婚しなくても、わかりやすい成功をしなくても、一人で生活できるて、好きなことを出来る稼ぎがあれば十分。そう分かっていても、どこか安定しない崖っぷちに立たされたような気持ちになるのは、目標を掲げ、何かを成し遂げて生きていかないという風に思ってしまうのは、世間の“何となくみんなそうだから”という圧のせい。 そんな、ただ生きていく事を肯定してくれる物語。 主人公はこの手の話でいがちな、大きな声挫折を味わっているわけでもなく、繊細すぎたり特段切羽詰まっているというほどでもないのが印象的で、勿論年相応に悩んではいるけれど、本当にタイトル通り良くも悪くも傘でふわふわ跳んでいるような雰囲気。夢や目標のなかった人生、それでも周りのいうタイムリミットが迫るなかで、夢を信じて突き進む人たちとの出逢いは、言いようのないけれど、確かな安心感、ひいては希望になったのだろう。 今回も比喩表現と温度感が最高に良くて、構成も丁寧で素敵でした。ネバー君と浅田さんが好き。また読みたいな。 * * * P65 人に話せば繊細すぎるとか甘えているとか言われそうだけど、男女の間だけじゃなく、仕事でも友人関係でも、時には家族の間でさえ、自分の値打ちを絶えず示し続けていなければ酸素を摂取する権利さえ不相応であるような、世の中の空気が苦手だった。 P179 夢とか目標って、一種の呪いだと思った。失うことも諦めることもつらい、でも解放でもある。 P189 最初から、恋愛にも結婚にも興味がない。でも仕事で生きていけるだけの能がないから、そっちのルートを否定してしまえば自分で自分を袋小路に追い詰めてしまうようで怖かった。何もせず楽に生きたいなんて思っていない。でも、目の前の道が「仕事」「結婚」の二択で語られるのは何かが違う。 P225 結婚したくない、とはっきり言えば「じゃあどうするの」と返す刀を受けなければならない。でも、何が「じゃあ」なんだろう。「ただ生きていく」のはそんなにも難しくて駄目なことなのか。 P240 何でもなく生きていくのが難しい。成長、目標、何かきらきらしたものをまとっていないと「怠け」「甘え」の烙印を押される。上昇し続けられない人間は地べたを這いずるしかないという極端な二択の中で「女性が輝く」とか「夢を追うのに年齢は関係ない」とかいうキャッチフレーズを聞くたび、私の頭にはいつも民家のクリスマスイルミネーションが浮かんだ。窓辺に電飾を吊るし、「Merry X'mas」と外に向けて掲げる。それって誰のため? P296 実現可能性とは関係なく、心底嬉しかった。大人になって友達ができること、たまたま同じ会社で知り合った子とあてのない約束をすること、そこにはかたちになる安全や安心は何もない。でも、セーフティネットってこういうものだと思った。社会保障とか福祉とか、お金ありきで回っていく仕組みだけが人を支えるんじゃない。か細い蜘蛛の糸だって、編めば網になる。崖の底から這い上がるためじゃなく、笑って落ちていくために。 P315「(中略)わたしは、わたしを救ってくれるものを守れたら他はどうでもいい。男に寄ってこられる年齢のときは、現実見ろとかやいやい言われた。何言うとんねんって思った。現実見てるからこそ、非現実を愛してんのに。『現実逃避すんな』って、逃がしてくれへんくせに。私にとってこれは、現実と向き合うために必要な武器」
きらきら@moon_light2026年9月12日読み終わった最後の方は息を止めて一気に読んだ 曖昧で心地よくて何にも定義されない関係性、名前のつくものに収まらないでくれて良かったのかもしれない 常識とか世間体から遠く離れた場所でただ生きていく アンバランスなままで、そのまま息をすることは難しいけど、それでも良いと思えたらもう大丈夫なんだなと思った 鳥人間のあの一瞬が、とても印象的だった 本を読んでてスローモーションを感じることがあるんだな 余韻がすごい、大好きな作品になった
穂積໒꒱@hozumi_2026年8月29日買った好きすぎてもう一冊買ってしまった! 今日買ったのは「笑いながら、落っこちてやる。」バージョンの帯! フリーペーパーも付いてた! もう一冊の帯は「本屋大賞の次はこれだ!」バージョン







- kou@kou272026年3月28日読み終わったP294 “時間は絶えず一定方向に流れ続ける。その中で立ち止まり、訪れるものをただ待っているような錯覚につい陥ってしまうけれど、自分の座標も確かに動いていることをふとした拍子に自覚し、驚いたり焦ったりする。(中略)時の流れのしずくが額にぽつっと落ちたような目覚めを「本能」と呼ぶのかもしれない。”

Kioku@noir142025年11月6日読み終わった美雨は譲ってもらったチケットで行ったコンサートで享と出会う。靴擦れした美雨とスタッフとして働く享が音楽の鳴り響く会場で口パクで待ち合わせをする、という物語の始まりが面白く、心を掴まれたままラストまで読み切った。 美雨は29歳。派遣の受付嬢として働くが、30歳で退職するという暗黙のルールまであと少し。享はお笑いコンビを組んでいて、美雨は享の舞台を観に行くようになることで、享の芸人仲間と親しくなる。私が29歳の時は職場関係でも恋愛関係でもない人と親しくなり、友達と呼べる仲間ができることは結婚退職するより難しかった。令和の世を生きる29歳の女の子はどうなんだろう。

しろ。@shiro_book2025年10月17日読み終わった@ 自宅コンサートで同じ歌を口ずさんでいたスタッフさんに、口パクで待ち合わせ場所伝えられる世界線に惹かれた。 30歳の壁みたいなものを、世間体を深く深く捉えて生きていかなくてもいい背中を押された気がした。 関西弁の軽やかな掛け合いも読んでて、気持ちがいい。


- Aki@spica-spring-evening2025年10月6日読み終わった時々思うのは、自分の思っていることをそのままに伝えるのはなんて難しいんだろうということ。 自分の考えていること、思っていることを純度100%、不純物なし、伝えたいことを伝えたいだけに濾過して、過剰も不足もなく伝えるというのは至難の業なのかもしれない。 自分の中にあるものを取り出して言葉に直そうとするとぴったりくるものはなかなか見つからないし、その時の感情が邪魔をすることすらある。そしていくらこちらが努力しても、受け手も受け取るための姿勢と努力がなければ、多分だめなんだろうな。伝えたい通りに伝わらない。伝えるための言葉が却って誤解を生む。 この本を読んでいて、性別に関係なく、ささやかでもさりげなくてもしょうもないことでも自分の言葉を拾い上げて真摯に向き合ってくれる相手がいることは幸福だろうなと思った。




















