Reads
Reads - 読書のSNS&記録アプリ
詳しく見る
kibita
kibita
kibita
@kibita
読書感想文を投稿しています。
  • 2025年3月19日
    プロジェクト・ヘイル・メアリー 上
    プロジェクト・ヘイル・メアリー 上
    上質の一言。面白すぎる。 SFってこんなに魅力的なんだな、と改めて思わされた。 ※ネタバレあり 未読の方は引き返すように。 物語の骨格自体はシンプル。 グレース(主人公)が異星人と出会い、協力して課題を解決し、お互いの惑星を救う。そんな王道なストーリー。 なのに、まあ面白い!!! グレースは記憶喪失の状態で目が覚めるのだが、少しずつ取り戻す記憶と共に謎が明かされていく。 現在の状況と思い出される過去の記憶が交互に描かれることで、「次は何が判明するのか?」というミステリー的な楽しさで退屈させない。 そしてSFとしての納得感。 物語の展開がご都合主義ではなく、科学的思考と実験の積み重ねによって進んでいく。登場する疑問にはすべて論理的な説明がなされ、謎が一つずつ解明されていく展開が心地よい。 派手な展開がなくても、こんなにも熱中できる物語が生まれるとは!と感動した。 ロッキーという魅力的なキャラクターの存在も忘れてはいけない。 ロッキーは知的で優秀な異星人の技術者。言葉も肉体の姿も仕組みも人類とはかけ離れている。 しかしどこか素朴で愛らしい。人間的な価値観も共有していて異形の姿など気にさせない。 お互いの得意分野を活かして支え合いながら、バディとしての絆を結んでいく姿が胸を打つ。 『三体』の暗黒森林論に衝撃を受け、「 本当に異星人がいたとしたら、隠れるか絶滅させるかしかないのかもな」と思った。けれど、彼らのようなハートフルな交流の実現に希望を持ちたくなる。 ちなみにラストのトラブル、ロッキーの罠かと思ってしまった。 「ラップトップから得た情報によって人類の危険性を察知し、絶滅させようとしているのでは?」と。 完全に『三体』のせいである。 結局地球はどうなったのだろう? アストロファージへの対応は迅速だったようだし、もしかするとストラットの悲観的な予想よりは良い未来になっているのかもしれない。 グレースがストラットに一言文句を言いに行ける未来が実現したらいいなあ。 さて、次はどんなSFを読もう? 『三体』、そして『プロジェクト・ヘイル・メアリー』と連続で傑作に当たってしまった。期待値が上がりすぎてしまうな。
  • 2025年3月18日
    読みたいことを、書けばいい。
    この本を手に取った時、まず考えたのはタイトルの意味だった。 「読みたいこと」とは誰にとってのものなのか? 自分か、それとも読者か? できれば前者であってほしい。 そのほうがシンプルだし、何より楽しい。そう期待しながら読み進めてみると—— 安心した。 本書は 「自分が読みたいことを書いて、自分が楽しむ」 ための本だった。 実際、noteでは「自分が読んで楽しい」と思えるものを書くようにしているが、それが純粋に書いてて面白い。 第2章までは「すべての文章は自分のために書かれるもの」「テクニックは不要」「ターゲットを想定する必要はない」「そもそも読まれない」などが書かれている。 一般的な文章術とは異なるが納得できることばかり。読者の存在を気にせず、自分に向けて書くことが大切ということだ。 第2章までは頷きながら読んだが…… しかし第3章「どう書くのか」で突然、毛色が変わったように感じた。 「うんうん、そうだよなあ」と共感しながら読み進めていたので困惑する。 一番「ん?」と思ったのは、「物書きは調べるが9割9部5厘6毛」 という話。 この本の主張ではネットで読まれている文章のほとんどは「随筆」、つまり 「事象と心象が交わるところに生まれる文章」 らしい。 だからこそ事象について徹底的に調べることが重要であり、筆者の感じたことは1%以下で良いという。 急にマッチョになったなと思った。 ここまで「自由に書けばいい」というスタンスだったのに、突然「自分の内面ばかり語る人間はつまらない」「幼児性が強い」 など厳しい言葉が並ぶ。 しかし章の要約を読むとそれまでの主張と矛盾するわけではないと気づいた。 「事象に出会ったとき、そのことについてしっかり調べて、愛と敬意の心情を抱けたならば、過程を含め、自分に向けて書けばいい」 素敵な言葉だ。 なるほど、マッチョさは愛と敬意の表れなのだろう。腑に落ちた。 とはいえこれを完全に実践するのは難しい。 自分が書きたいのは「随筆」ではなく「思考」なんだろうと思う。内面を掘り下げる文章を書くのが好きだし、それが「幼児性」だと言われてもやめたくはない。 全体的に共感できる一冊 第2章から第3章への落差には少し驚いたが、全体的に書かれていることには共感できる。それは書きたいものが随筆ではなくても変わらない。 よくある「バズるためのテクニック」ではなく「書きたい!」という原動力を力強く応援してくれる一冊だった。
  • 2025年3月16日
    太陽を創った少年:僕はガレージの物理学者
    ギフテッドの子ども、テイラー少年とその周囲の大人たちの物語。

最初に抱いた感想は「よくもまあ、こんなに教育にエネルギーを注げるな」 という驚きだった。
子どもが興味を持ったことに対し、全力でサポートする親や協力者達。その熱量に半ば呆れながら読み進めた。

しかし、両親は単なる親バカではない。

テイラー少年の興味の対象は率直に言って制止したくなるものばかり。
ロケットの実験で爆発を起こしたり、放射性物質を集めたり……普通ならすぐに止めるようなことを、彼の両親は受け止め続けた。
そして、彼の成長とともに実験はますます複雑で大規模になっていく。

もちろん、テイラー少年は安全性についても十分に考え対策をしている(らしい)。
だが、その水準は凡人の理解をはるかに超えている。

親は彼を止めるべきか、応援すべきか、判断がつかない。
その葛藤が随所に語られ、「天才の親も大変だな……」 と同情してしまう。

もし自分の子どもだったら?
間違いなく止めるだろう。 特別な才能を持つ子どもたちに対し抑圧的に振る舞う大人は、物語では悪役として描かれがちだ。
しかし、テイラー少年のエピソードを読むとそう単純には割り切れない。

実際、彼の実験はあまりにも危険だし、周囲に与える影響も計り知れない。
それを「理解できないから」と抑え込むのは、必ずしも悪意からではなく本能的な防衛反応だろう。

だが、この本に登場する大人たちは皆驚くほど協力的だった。
自分が彼の周囲にいたらこんなに寛容でいられるだろうか?

ちょっとした違和感を覚えるほど、彼を支える大人たちは一貫して肯定的だった。
自分の感覚がおかしいのか? それとも、こうした環境こそが、天才を伸ばす鍵なのか? もうひとつ印象的だったのは、平等という考え方の持つ負の側面についての指摘だ。

アスリートとは違い、知能面での天才は公的な英才教育を受けにくいらしい。
教育格差を生むことへの抵抗から、「落ちこぼれを出さない」方向にエネルギーが注がれるからだ。

この感覚は、アメリカも日本もそう大きくは変わらないのかもしれない。

一部の天才を優遇するのではなく、すべての子どもに均等な教育を。
この考え方も決して間違っているとは言い切れない。

だが、天才たちにとって通常の教育は、どれほど退屈なものなのか。
もし自分が、小学生向けの授業を一日中受けなければならないとしたら?
自分の能力とかけ離れた低レベルの学習を強いられる。
それを想像すると彼らが受ける「平等」はもはや不公平とも言えるのではないか。
そう思わずにはいられない。
  • 2025年3月14日
    ダチョウはアホだが役に立つ
    YouTubeで見つけた動画 「ダチョウの頭が悪すぎる」。 タイトルからしてインパクト抜群だが内容はそれ以上だった。 ダチョウの驚異的な身体能力と免疫力、そしてそれに反比例するかのような異次元の知能の低さ。 それらがテンポよく面白おかしく解説され、一度見たらダチョウに興味を持たずにはいられない。 ただ、疑問が湧いた。 さすがに誇張しすぎでは? その答えを確かめるためにダチョウ研究専門家の本を手に取った。 専門的な視点から見れば、動画のイメージとは違うダチョウ像が描かれているかもしれない。 そう思っていたのだが……。 驚くほど、動画と変わらない。 まじでそんな生物なの? そんな知能でよく絶滅しなかったなと、思わずにはいられない。 家族を覚えられない、人に乗られてもすぐ忘れる。「知能が低い」なんてレベルではない。あの動画の罵倒は決して誇張ではなかった。 そりゃ、それを補うだけのフィジカルが必要になるわけだ。 本書は全体的に軽い文体で読みやすく、ところどころに挟まれるエピソードも楽しい。 第3章ではダチョウの抗体を応用した製品開発について紹介されている。 コロナ禍に「ダチョウ抗体マスク」のニュースを聞いたことがあるが、それ以外にもさまざまな研究が進められているようだ。 ただ、ダチョウの生態の深掘りという点では期待していたほどの面白さは感じられなかった。 ダチョウ自体よりもダチョウ研究の話が中心になる。(内容を確認しなかった自分が悪い。)
  • 2025年3月13日
    書けるひとになる! 魂の文章術
    書けるひとになる! 魂の文章術
    書くことが好きだ。 昔は苦手意識が強かった。その原因は小学生の頃の読書感想文。あの悪しき習慣のせいで書くことは自分には向いていないと思い込まされていた。 (そもそも本の感想という内面を強制的に書かせるなんて暴力的だと思う。) そんな呪縛を解いてくれたのが『ずっとやりたかったことをやりなさい』で紹介されていた「モーニングページ」という手法だ。朝起きたら考えていることをそのまま書き起こしていく。ただそれだけ。何も思いつかなくても「何も思いつかない」と書けばいい。文章として完成させる必要もないし、誰かに見せるものでもない。ただ書く。これなら自分にもできた。 書くことはきちんとした文章を作ることではなく、ただ頭の中の言葉を形にすること。そう気づいてから、(誰にも読まれない場所で)書くことが習慣になった。 そんな経験もあってこの本を手に取った。タイトルを見たとき、『ずっとやりたかったことをやりなさい』と同じ思想を感じたからだ。 予想通り、共通する部分が多い。「検閲官」という言葉が出てくるのも同じだ。自分の中の検閲官に否定される前の生の思考を“第一の思考”と表現していて、ここから書くことの重要さを繰り返し指摘している。 ただ、読み進めるうちにそれ以外のことも書かれているように感じ始めた。 印象に残っているのは「聴くこと」の章だ。 「文章の達人になりたいなら、基本的に次の三つのことが必要だ。たくさん読むこと、真剣によく聴くこと、そしてたくさん書くこと」 書くことの大切さはすでに実感していたが、「聴く」ということがこの本では強調されているように感じた。 実際に「聴く」という言葉が使われているのはこの章だけなのだが、その本質的な意味は別の言葉で随所に語られている気がする。 この本には単に心の赴くままに書くこと以外の一貫したテーマがあるのではないか?しかし、それが何なのかはっきり言葉にできない。再読しながらもう少し時間をかけて確かめてみたい。 技術的なアドバイスもあるが、それはよくある内容だったので流し読みした。
  • 2025年3月11日
    僕には鳥の言葉がわかる
    とても面白かった! 前半は駆け出しの鳥類学者の日常が描かれている。フィールドワークの様子がリアルに伝わり、それ自体興味深い。ただ、期待していた動物言語学の話とは少し違い、どこに向かうのか気になりながら読み進めていた。 しかし、後半になるとシジュウカラの言語能力に関する話が本格的に展開され一気に引き込まれる。 シジュウカラが「言葉を話すのでは?」という気づきのきっかけは意外とシンプル。 警戒対象によって鳴き声が変わり、それに応じてヒナの行動も変化すること。 この発見を起点に、シジュウカラの鳴き声が単なる感情表現ではなく「単語」として機能している可能性が浮かび、さらにそれを組み合わせて「文」を作る、つまり文法を持つのではないか?という研究へと発展していく。その過程が後半で一気に描かれ夢中になって読んだ。 特に文法を持つことの証明方法が面白い。 読みながら「どんな実験をするのか?」と自分でも考えていたが、まさかルー大柴の「ルー語」がヒントになるとは…! さらに、前半で触れられていた「シジュウカラが混群(別種同士の群れ)を作る」という特徴が意外な形で再登場する。推理しながら読んでいたので「なるほど!」と伏線が回収されるような楽しさがあった。 このミステリのような面白さは意図的に仕掛けられたものではないと思うが、自分にとってはそれが一層面白さを引き立てた。 純粋に研究内容が興味深いのはもちろん、仮説が検証されていく過程が魅力的。まさに、研究の面白さを味わえる一冊。
  • 2025年3月11日
    疲労とはなにか すべてはウイルスが知っていた
    「疲労」という曖昧な概念が納得感を伴って明らかになっていく。その過程が実に快感だった。 本書では疲労と疲労感の違い、さらに生理的疲労と病的疲労の違いをわかりやすく解説している。ただの仕組みの説明ではなく、「どのようにしてそれが解明されてきたのか?」という科学史的な視点も加わっており、知識が組み上がっていく感覚が楽しい。 特に印象に残ったのはメタゲノム解析の考え方だ。遺伝率はヒトのDNAだけで決まるわけではなく、マイクロバイオーム(ヒトに棲む細菌)やバイローム(ヒトや細菌に感染しているウイルス)もまた、遺伝のように伝わるという。つまり、私たちの体の中で生きる微生物が遺伝の一部として機能しているのだ。この視点は新鮮だった。 マイクロバイオームの解析にはヒトゲノム解析の100倍、バイローム解析にはさらにその100倍のコストがかかるらしい。それをどう乗り越えていくのか? 研究の進め方という科学の面白さを感じさせてくれた。 ただ科学的な知識が十分でない自分にとっては、少しずつ明らかになる仕組みを把握しながら読むのが難しかった。先に基本的な概念を押さえてから読んだ方が混乱せずに楽しめたかもしれない。 けれど、その試行錯誤も含めて知識が腑に落ちる感覚が味わえる一冊だった。
読み込み中...
読書のSNS&記録アプリ
hero-image
詳しく見る
©fuzkue 2025, All rights reserved