
三毛猫ななこ
@mikeneko_nanako
- 2026年10月10日
アガサ・クリスティのイギリス新井潤美読み終わった- 名探偵ポワロ、ミス・マープルを中心に アガサ・クリスティの作品の背景にあるイギリス社会と文化を紐解く一冊 「ポワロはベルギー人(フランス語が母語)だから英語が苦手」という視点が、個人的に新鮮だった。考えてみれば確かにそうなのだが、日本語訳でクリスティの世界を見てきた私にとって、ポワロは「片言のフランス語を話す人」だったので、目から鱗 ロナルド・ノックスの探偵小説十戒も面白い。 「双子の兄弟や、その他瓜二つの人物は、いきなり読者に紹介されてはならない」など、本当にその通り - 2026年10月3日
夢みる宝石 (ちくま文庫 す-31-1)シオドア・スタージョン,川野太郎読み終わった- 孤児ホーティは義父アーマンドの暴力から逃げ、おもちゃのジャンキーと共にサーカス団へ。ジーナをはじめとした風変わりな団員たちは彼を優しく迎え入れたが、団長モネートルは不気味な存在。彼は不思議な力を持つ「宝石」を集めて、密かに人類への復讐を企んでいた ファンタジーSF小説であり少年の冒険成長譚。 ホーティの成長とともに物語の鍵となる「宝石」の謎が明らかになっていく。人間と違う生態を理解するのが難しいが、「特定の相手との絆(ペア)」や「感情を持つ」という共通点がラストに綺麗に結びついて、読後感はすっきり。 時間を置くと別の視点を得られそうなので、いつか再読したい - 2026年9月30日
逃亡の書 西へ東へ道つなぎ前川仁之読み終わった「人はある日突然、日常を絶たれ、生きるために逃げねばならなくなることがある(p67)」 戦乱や災害、貧困から生き延びるために逃げた人と、逃げてきた人を先住者がどのように迎え入れたかのノンフィクション 内容は ・内戦の起きたイエメン→韓国済州島 ・侵略されたウクライナ→日本 過去の例としてWW2前後の時代に亡命した先人たち ・内戦の起きたスペイン→フランスに逃げたがナチス侵攻→スペイン 他に、牛久入管収容所の訪問取材も。 日本人の国民性と社会システムの欠点が率直に書かれているので読むのが辛いが本当にその通りだ。 心に残ったのは、著者が逃げてきた人に「未来の自分」を重ねていること。 今の日本は戦争放棄の憲法を持つ平和主義の国だが、今後は怪しい雲行きだ。災害も多い。日本人も「逃げる人」になる可能性はある。東日本大震災が証明済みだ。他人事ではない。 私だったらどうするか。戦うか、逃げるか。逃げるならどこへ? 答えを出すのは難しい。 - 2026年9月28日
語学の天才まで1億光年高野秀行読み終わったアフリカや東南アジアなどの辺境を探検してきた著者が、赴く土地の言語をどうやって勉強してきたかの実録 使う前提の学習なので、達成の目安が「現地でウケるかどうか」なのがユニーク。 また現地で驚いたことや失敗を冷静に分析してユーモアたっぷりに書いているので、著者が酷い目にあっていても楽しく読んでしまった この本はミャンマー語までだが、ソマリ語などの続編が出れば読みたい - 2026年9月27日
- 2026年9月23日
シークレット・エージェントコンラッド,高橋和久読み終わった19世紀ロンドン。グリニッジ・パークで1人の人間が爆死した。身体は粉々に散ったため身元も目的も不明だったが、ロンドン警察の情報屋として働く男が捜査線上に浮上する。彼は某大国の密偵〈シークレット・エージェント〉で二重スパイだった。テロはなぜ起きたのか? 実際に起こったグリニッジ天文台爆破事件を下敷きに、章ごとに主観が変わる多視点テロ小説。登場人物1人1人の心理描写が緻密で物語に必然性がある。 理想や出世、できる限りの怠惰な生活が全ての自己中な男たちより、生活と家族のために自分の幸せをあきらめたウィニーに感情を持っていかれる。ラストが辛かった - 2026年9月19日
ロンドン骨董街の人びと六嶋由岐子読み終わったロンドン セントジェームズ街(骨董街)の古美術商スピンクに日本人として初めて勤めた著者のイギリスと東洋美術のエッセイ。 同じ島国ながら日本とは違う価値観と美意識を持つイギリス。著者は違和感を感じて働いているが、上司である古美術商の最期によって彼らとの人生観の違いに気づく。 イギリスの古道具が好きなのでこのエッセイを手に取ったが、多文化理解、エンパシーの観点でとても考えさせられた - 2026年9月15日
なぜBBCだけが伝えられるのか小林恭子読み終わった普段ワールドニュースを見るようにしている。視点は欧米中心だが、BBCは事実を伝え取材の過程を明らかにするので信頼している。 この本は2022年開局100周年を迎えた英国BBCの歴史と、「放送」と「公共」の展望についての1冊だ。 特に強く残ったのは元BBC職員/小説家ジョージ・オーウェルの言葉「もし自由という言葉に意味があるとしたら、それは人々が聞きたくないことを伝える権利のことだ」 信じたいことしか信じない人に対して、あきらめずに何度も何度も、まだやっているの、と言われても変わるまで続けていく。BBCの不偏不党の理念は視聴者を信じる誠実な強さからくるものだと思った。人間として見習いたい - 2026年9月9日
雨・赤毛サマセット・モーム読み終わった・「雨」降り続く雨で島に閉じ込められた司祭と娼婦に起きた騒動と結末 ・「赤毛」南海の島に住む白人中年男が太った老船長に語る、赤毛の白人青年と島の娘の美しい恋とその結末 ・「ホノルル」恋に狂った航海士に呪いをかけられた船長の話 南海が舞台で、信用できない語り手(植民地時代の白人男性視点)により話が進み、最後にどんでん返しがある。 「雨」は劇的なラスト 「赤毛」は深い。視点を変えて読み返すと『時の残酷さ』とは違う物語が見える。何度も読み返したい 「ホノルル」は爆笑。素晴らしいオチ - 2026年9月5日
イワーン・イワーノウィッチとイワーン・ニキーフォロウィッチとゴーゴリ,原久一郎読み終わった見た目も性格も対照的だが仲の良い2人のイワーンが、価値観の違いとプライドから喧嘩。すぐに仲直りができれば良かったが、余計な第三者の介入と珍妙な事件のせいで修復困難な仲になってしまう。 語り手のユーモラスで呑気な調子に読んでいて笑ってしまうが、内容は現代にも通じる解決が難しい話。自分の価値観だけを押し付けるのではなく、相手の価値観に寄り添うことが大切だと思った - 2026年8月31日
映画誌への招待四方田犬彦読み終わった年代等を軸に単一視点で語る従来の映画史を否定し、他文化の影響や映画館の設備(弁士の話が面白かった)、観る側の素養など複数の視点から映画を分析する新しい映画の見方・映画誌 ちょうど映画エミリア・ペレス(監督はフランス人、舞台はメキシコ、言語はスペイン語)を観て、「『日本映画』『アメリカ映画』といった国名での映画分類は限界を迎えたのでは?」と思っていたので、映画誌の考え方は一つの解答だった。 最後に映画国宝やゴジラについても論じている - 2026年8月27日
シャーロック・ホームズの凱旋森見登美彦読み終わったスランプに陥り探偵としての能力を失ったホームズと、打つ手のないホームズを励ます助手のワトソン。〈ヴィクトリア朝京都〉を舞台に、スランプの謎と12年前に失踪した少女の謎を追う中で彼らのいる世界の謎へと足を踏み込んでしまう。 シャーロキアンではないので複数レイヤーに分かれた世界を繋ぐものがわからず、同じ名前でも役割を変える登場人物と変化する世界(最初と最後で〈ヴィクトリア朝京都〉が違う世界?)を把握するのが大変だったが、頭の中でホームズはベネディクト・カンバーバッチ、ワトソンはマーティン・フリーマンに変換して読んで、楽しんだ。 - 2026年8月22日
幻のアフリカ納豆を追え!高野秀行読み終わった前作で東南アジアと日本の納豆の歴史・製造方法を調査した探検家が、今回は西アフリカと韓国で現地の〈納豆〉を探るルポルタージュ。そこには日本とは異なるが美味しい〈納豆〉文化があった。 調査する場所が辺境の危険地帯(過激派活動地域など)のため物騒な目に遭いそうになるが、著者の運の良さと呑気でユーモアのきいた文体のおかげで、終始笑いながら読んだ。 ブルキナファソ(アフリカにある国)のスンバラ飯(納豆炊き込みご飯)は、ホクホクとした納豆出汁の旨みが文章から伝わり、食べたくなった。 - 2026年8月1日
モームの謎行方昭夫読み終わった「人間を観察して私が最も感銘を受けたのは、首尾一貫性の欠如していることである(p246)」 血の通った人物描写と高い物語性で人気のサマセット・モームの12の謎 -スパイ活動、医者・劇作家としての側面、日本訪問、結婚と離婚、一人娘との関係など- を、日本のモーム研究者が解き明かす。 著者の文章は、率直でユーモアのあるモームに通じるものがあり、読みやすかった。モーム好きにはおすすめの本。 付録の「モームとの架空の対話」はこれからモームを読んでみたい人におすすめ。自分の興味が向くモーム作品がわかると思う - 2026年7月19日
仕事! 上スタッズ・ターケル,中山容読み終わった仕事について、1970年代初頭アメリカに住む普通の人へのインタビュー記録・上巻 俳優、売春婦、広告、勧誘、自動車の溶接工、運転手、電話交換手などさまざまな職業が登場。個性的な口調で、話題が飛んだり有耶無耶になるのが自由で、生々しく面白かった 生産性が重要視され始めた時代の業績数値化について 警察官レノー・ロビンソン「人々を傷つけてじゃなくて、助けることで点数をあげられるような制度にならなくちゃどうしようもない(p405)」 銀行出納係ナンシー・ロジャーズ「人が人でいることをきらう職場がすごく多い。・・・働く機械になることを望んでいる(p673)」 50年後の今に刺さる言葉だった。変わっていない - 2026年7月18日
老人と海/殺し屋アーネスト・ヘミングウェイ,齊藤昇読み終わった84日釣果がない老漁師サンチャゴと彼を慕う少年マノーリンの85日目の物語 簡潔で余計な装飾のない文章と鮮やか描写が、生き生きとした情景を頭の中に再現させる。 大魚との対決や港への帰還など名シーンはたくさんあるが、特に好きな場面は「酒場での腕相撲」。夜の闇と灯油ランプの揺れる光、漁師たちの熱気とざわめき、ラム酒とタバコの煙たさが文章から香り立つようだった 文春文庫版はニック・アダムスを主人公にした短編が併録。ニックが人生で深く影響を受けた事象-死に初めて触れた瞬間や失恋、父との関係、戦争、自分の子どもを持つなど-の10の物語。 こちらも深く味わえる作品で面白かった - 2026年7月5日
読書案内ー世界文学モーム,W.S.(サマセット),西川正身読み終わった「楽しく読める」を条件にモームが選んだ約50人の作家の本の読書ガイドブック。 解説ではなく読書の楽しみ方の案内で、欠点も書くがそれを上回る長所や読み方の工夫をユーモア溢れる文章で指南している。 私が特に面白いと思ったのは「カラマーゾフの兄弟」 ・全体の統一を欠き、分量が多く、冗漫な箇所があるが読者の心を強くとらえる ・自然災害を見て楽しむ感覚でこの本を楽しむ ・退屈なところは読み飛ばすとより楽しめる 冷静かつ具体的。「これなら読める」と思えた。 またモームのベストセラー論も現代に通じる。とても共感した。 - 2026年7月2日
おとなしいアメリカ人グレアム・グリーン,田中西二郎読み終わった1952年サイゴンの川で若い男の遺体が見つかった。男はパイル、おとなしい真面目なアメリカ人で戦時下のインドシナ(ベトナム)の経済支援をしていた。表向きには彼が死ぬ理由はなかった。 主人公のイギリス人記者ファウラーは、愛人である地元女性フォンを奪われながらもパイルと奇妙な友人関係にあった。今と昔を行き交うファウラーの回想からパイルの死の真相が明らかになる。 登場人物がそれぞれの地域(欧州、アメリカ、アジア)を象徴した性格・考え方・行動をし、それが物語を流れるように動かしていく。 また作者はインドシナ戦争を現地で体験しており、闇夜の攻撃や戦闘機の描写がリアル。その上で主人公の「戦争は嫌だ」という言葉に痛いほど共感を覚えた - 2026年6月27日
シャーロック・ホームズは引退しましたホリー・ヘップバーン,廣瀬麻微読み終わった1932年、ロンドンベーカー街にある住宅金融組合には実在しない名探偵宛の相談の手紙が毎日届く。組合で働くハリエット(ハリー)の仕事は、その手紙を読んで「名探偵は引退しました」と返信すること。ある日気になる手紙を見つけたハリーは、少しでも助けになりたいと「名探偵の秘書」を名乗って依頼者に会い、事件に巻き込まれていく。 男爵令嬢のハリーは探偵の素人。名推理はできないが気になることに首を突っ込み、物騒な目に遭いながら真相に近づいていくので、危なっかしくてハラハラする。サポート役が頼りになる 解説によると、住宅金融組合は過去実際に存在し、相談の手紙も実際に届き、その内容をホームズ研究家がまとめた本がでているとのこと。読んでみたい - 2026年6月20日
外套・鼻ゴーゴリ,平井肇読み終わった・「外套」質素に生きてきた真面目な官吏が、素敵な外套を手に入れて人生の喜びを知り、外套を失って絶望を味わう話 ・「鼻」ある朝食べようとしたパンの中から他人の鼻が現れて処理に困る男と、ある朝起きると鼻を失っており取り戻そうとする男の話 どちらの主人公もとても酷い目に遭い、状況を打破しようと一生懸命。懸命すぎて感情と思考がおかしな方向に進むところが面白く、妙に共感を覚えた
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