ハドリアヌス帝の回想

24件の記録
Moonflower@Moonflower02262026年1月8日読み終わったかつて読んだ厳しい修練 忍耐 作者による覚え書き 【感想】 20年ぶりの再読だった。 当然のことながら、感じ入る場面の違いにその後のわたしの足跡を見る思いがしたのだったが、異様なまでに密度の高い文章のなかをゆっくりと泳ぎまわるかのような読書体験をふたたびできたことが、何よりも嬉しかった。これぞ文学。これぞ言葉の力。 凡百の作家なら、この内容を5倍いや10倍(あるいはそれ以上)の長さにして絢爛豪華な波瀾万丈の物語をものすだろう。しかし、ユルスナールの美意識と才能はそれを許さなかった。簡潔にして濃密な文体ゆえに凄まじい情報量がものの見事に凝縮されていく。それも、ハドリアヌス帝の「声」によって。何たる文学的達成、芸術的精華だろうか。歴史小説として比類なき傑作だとあらためて感嘆するほかなかった。 いつか再読せねばと思っていたが、今このタイミングでよかったのかもしれない。「帝国」が崩壊しつつある現代世界からするとハドリアヌスのような賢帝の登場を期待したくもなるのだが、そういう時節的なものだけでなく、いわゆる「中年の危機」的な観点からも感じるものが多々あったのだ。 若い頃はハドリアヌスの表面(皇帝としての活躍)に反応していた気がするが、今回はむしろ裏面(人間としての葛藤)にこそ惹かれた。終盤の静けさが胸に沁みてならなかった。そして、あの結び。あまりに見事すぎる。永遠に脱帽。
ジクロロ@jirowcrew2025年10月17日ちょっと開いた「思いちがいをしないでほしいが、希望的想像と同じくらいおろかしく、それよりもたしかにずっと苦しい恐怖の幻想に身を委ねるほど、わたしはまだ弱っていない。仮にわたしが自分を欺かねばならぬとしたら、信頼の側に身をおくほうがましであろう。そのほうが恐怖の側に身をおく以上に失うことはなく、苦しみはより少ないというものだ。」 弱るということは、想像と幻想に身を委ねること。 失うことを避けようとするならば信頼を、 得ることを避けようとするならば恐怖を。 本当の自分を知ろうとしないということは、 快楽に身を委ねている証拠。 死ぬ寸前に、ハドリアヌスは、そして自分は、 何を得ようというのだろうか。
















