ちくま日本文学(037)

16件の記録
- 松本真波@_mm1771772025年5月12日読み終わった読書日記@ 自宅文庫の最後に収録されていたのは、かの子から息子・太郎に宛てた手紙(複数)。 飾らない言葉による(多少かの子らしい気取った言い回しはあるものの)母から息子への手紙からは、彼女がどれだけ息子の事を想い、心の支えにしていたかが伝わってくる。たった一人生き残った息子だもの。まことに最愛の息子である。その文面からは、小説同様かの子が全身全霊を込めて書いている様がうかがえる。 たくさんの素晴らしい小説の最後に、作者の姿が映し出される手紙が収録されていて、とても良い本だった。
- 松本真波@_mm1771772025年5月8日読んでる読書日記@ 自宅『雛妓』読了。 なぜこの作品を知らなかったのだろう?と思う程に心に沁み入るお話で、主な登場人物達と同じ女性である自分としては胸が締め付けられるようであった。 また、この作品には「美」と「家霊」というかの子自身の人生(と言うより岡本家)に深く関係する単語が重要語として出てくる。 まさしく、かの子がこの人生の主題に全身でぶつかっていくように書いた作品なのだろうと思う。
- 松本真波@_mm1771772025年5月4日読んでる読書日記@ 自宅『河明り』読了。 短編とはいえ予想以上に長かったが、飽きる事なく読み切れた。それは娘の行く末が自然気になったのと、これでもかと描かれる情景描写が美しかったからだと思う。 どう着地するのか分からないまま読み進めたが、最後に書かれた主人公の人生観が、かの子自身のもののようで感慨深かった。 曰く、河には、無限の乳房のような水源があり、末にはまた無限に包容する大海がある。河はその中間であり、無限性を隠している。 かの子が自身の人生から導き出された答えでもあったのだろう。なぜかの子の作品に「水」にまつわる描写が多いのか分かったような気がした。
- 松本真波@_mm1771772025年4月27日読んでる読書日記@ 自宅『老妓抄』読了。 歳をとった元芸妓のお話。主人公の老妓が粋な女性で惹かれる。若い時には(芸妓故の)苦労をだいぶしたであろう。だからこそ、「苦労もほどほどの分量にゃ持ち合わせているもんだよ」の一言が沁みる。 最後に、この老妓による和歌が記されているが、それが非常に胸にグッとくる。読者にそう思わせるように、これまでの物語が展開されているのであろうが。 やはり言葉が美しく、登場人物達も魅力的で、とても良い作品だった。 年々にわが悲しみは深くして いよよ華やぐいのちなりけり
- 松本真波@_mm1771772025年4月19日読んでる読書日記@ 自宅『家霊』読了。 かの子の作品の主人公は女性ばかりだ。本作もそう。 当時の女性がどういう生き方をしていたか(強いられたか)。どんな景色を見て、何を感じていたか。女性らしい視点かつ美しい文章でそれらを伝えてくれている気がする。 女としてどう生きていくか、「いのち」とは何かを探る、その気迫を感じた。
- 松本真波@_mm1771772025年4月18日読んでる読書日記@ 自宅『鮨』読了。 今回は主要人物の名前が水にまつわる「湊」であった。 その名の通り、湊の周りには人が集まっているようだが、彼自身は一所に留まる事は出来ずにいるらしい。家の没落という暗い過去に引きづられてなのかもしれない。だが、鮨屋に足を運んでしまうのは、亡き母の精一杯の行為(息子の為に寿司を握る)からなのかもしれないと思うと切ない。 母になった今なら分かるが、子供の偏食が酷くて目の前で痩せこけていく様を見るのは非常に辛い。心配でならない。 母の息子に対する愛情の深さ、必死さを感じた。
- 松本真波@_mm1771772025年4月15日読んでる読書日記@ 自宅『みちのく』読了。 元々知っている話だったが、改めて読んでも深く心に染み入る様な作品である。それぞれが自分の信念を抱いて一生懸命に生きている、そんな姿が儚くも美しいと思う。 今回はあまり水の描写は多くなかったが、ラストはやはり海(浪、船)の一文で終わっていた。
- 松本真波@_mm1771772025年4月15日読んでる読書日記@ 自宅『金魚撩乱』読了。 自分の愛する人を自分の手で創造する。 女は、1人の男をこれほどまでに狂わせてしまうのだが、当の本人の生き様を見ているとまるで男に育てられている金魚そのもののようで切ない。もしかすると、相手を自身に執着させる事でしかその存在意義を示す手段が無かったのかと思うと、やはりかの子の描く女性には同情してしまう。 今回も、"水"関連(特に金魚)の情景描写は美しかった。
- 松本真波@_mm1771772025年4月4日読んでる読書日記@ 自宅『渾沌未分』読了。 ジブリかな?というぐらい、様々な水に関する描写が美しく、また耽美な空気をはらんでいる。映像として見えてくる世界がとにかく美しい。 しかし、時代に置いて行かれてもなお、未練がましく過去(都会)を求める父に振り回される主人公の娘が不憫でならない。その自分の心を押し殺して生きる様は、どこか一葉の作品を連想させた。 彼女の、一生懸命に"水の中"の心持ちでいようとする健気な姿が読んでいて辛い。自分では生活をどうする事もできない、そんな彼女の心に湧き上がる言葉、「渾沌未分」。 彼女は水の世界へと導かれていった。
- 松本真波@_mm1771772025年4月2日読み始めた読書日記@ 自宅『鯉魚』読了。 小説家として活動し出した初期の頃の作品なので仏教色が強いかと身構えていたが、思いの外サラッとした文章で読みやすかった。 登場人物である青年が、かの子好みの美少年であろう事には少し笑った。 また、水辺にまつわる話は初期からあったのだと驚いた。かの子の作品は川や海など、"水"に関係した話が多い。