移動と階級

移動と階級
移動と階級
伊藤将人
講談社
2025年5月22日
21件の記録
  • 先日観た映画『LOVE in THE BIG CITY』にて、 「夜道は危険だ。送っていくよ」 「だったら男が帰ればいいじゃない」 という会話が印象的だった。 『移動格差を生み出す要因に、「ジェンダー」に起因するものが多くある』 自動車は平均的な男性の身体になじむように設計されてきた歴史があるらしい。 『多くの女性にとって自動車移動からの排除は大きな問題であり、このことは女性が家の外で働き、社会進出する可能性を制限し、移動資本やネットワーク資本の拡大を困難にしてきた。』 『運転中に事故に遭った場合、女性は男性よりも1.45倍もケガをしやすい。さらに、女性が自動車事故に遭った場合は、身長、体重、シートベルト使用の有無、衝突の激しさなどの要素を考慮しても、重症を負う確率は男性より47%高く、中程度の傷害を負う確率は71%も高いという驚くべきデータがある。』 最も一般的なダミーは身長177cm、体重76kgと、筋肉量比率や脊柱の形状も平均的な男性の体格に基づいている。 衝突安全テストにダミーが初めて導入されたのは1950年代だが、それから数十年の間変わらない。女性のダミー使用が始まったのは2011年と最近のこと。
  • 『移動をめぐる自己責任や能力主義、生存者バイアスから抜け出すには、移動が困難であったり、自分とは移動をめぐる状況が異なったりする人がこの世界にいることへの想像力を働かせることが大切だ。』 どのような事を考えるにしても、人の立場になって考えることが大切。想像力を養うことで広い視野を持つことができるようになる。 ■ノマド  →もともとは、草原を移動して生活する遊牧民を意味する言葉。脱産業化とグローバル化が進む現代社会において、工場の壁や国境、規範的なアイデンティティといったさまざまな境界を越えて移動する人々を表す言葉として、新たな注目を集めるようになった。 〈ノマドの3つの分類〉 ■ハイパーノマド  →経営者や実業家、法律家、金融業者などの人たちであり、いくつも肩書きを持つような階級・階層の高い人を指す。 ■バーチャルノマド  →実際には定住民であり、インターネットを通じて世界とつながりつつ生活する中流階級を指す。 ■下層ノマド  →生き延びるために移動を強いられる人々であり、超帝国、ハイパーノマドの出現によって減少どころか増加し続ける貧困層。 「ノマドワーカー」、そういえばいっときテレビでよく聞いたワードだったな。スタバにノートパソコン持ち込んで仕事しているイメージ。自分には無関係の人種の話だわとか思って、あんまり興味が湧かなくて調べもしなかった。 一概にノマドと言ってもその中にまた分類があるなんて知らなかった。 映画『ノマドランド』は、あぁ、名前は聞いたことある、くらいの認識しかない。元々中流階級だったが金融危機の影響で株の暴落、資産差し押さえに遭い車上生活の出稼ぎ労働者となった人たち。 いつ何が起こるか分からないご時世。突然転落する可能性は誰にだってある。なんて恐ろしい話なんだと恐怖を感じた。
  • 『ノマドランド』の原作著者ブルーダーのエピソードより、ワーキャンパーの集まりに参加した際に非白人はほんの一握りしかいなかったそう。 ん?なんで?むしろ白人の方が比較的お金持ちそうなイメージ…と思ったけれど読み進めていって愕然とした。 『丸腰の黒人が赤信号で止まっていただけで警官に撃たれるような地域だと特に、人種差別的な取り締まりの犠牲になりかねない人が車上生活をするのは危険すぎる』のだそうだ。 『移動をめぐる格差や不平等を考える際には、特定の属性に着目するだけでは不十分であり、重層的なカテゴリーを前提に、移動に関する問題を捉える視点が求められる。』 物事を多角的に捉えられるようにしたい。
  • 『生産性の向上と無駄の排除が高い価値を持つようになった現在、小型化されたモビリティーズの登場と普及が合流したことで、ますます成功するための移動時間術が広く支持を得ているのである。』 『本来、移動時間に何をするかは、個人の自由である。移動のどんな行動に意義を感じるかも、人によるだろう。ぼーっと窓の外の景色を眺めることも、目を閉じることも、読書をすることも、仕事をすることも、本質的に意義に優劣はない。』 生産性の向上と無駄の排除、かぁ。私はただ家だとテレビの音がうるさくて気が散るから通勤電車で本を読んでいるけど…。 でも思い返すと、前に本を忘れて手持ち無沙汰な時、何かしなくては!と焦燥に駆られたことがあったなぁと思った。 言われてみたら時間が無駄になる!って無意識に思っていたのかもしれないな。 『「移動時間は無駄だ」「移動時間には生産的な活動をしたい」と考える人の割合は、年収が高いほど強い傾向が示唆された。』 そういえば先日テレビで「耳の隙間時間」という特集をやっていた。料理中や歩いている時間を活用して耳から情報を得る、というものだったけど、へーそういうのがあるんだー、愚鈍な私には無理だなー、くらいにしか見てなかった。 自分で考える時間がなくなってこわくないのかな?とは思ったけれど。 あぁ、頭の良い人は同時に考えられるのか。 …なんか時間効率のことばっかりで窮屈な世の中になったな。
  • 『3人に1人が、他人の移動を7羨ましい」と思っている』 あれ、と思ったらやっぱり濫読している『嫉妬論』からの出典だった。 スピリチュアル的なことってあまり信じていないけど、引き寄せってあるのかなと思ってしまった。 学生時代に友人と旅行に行った際、明らかにもう少し歩けば着きそうな距離なのに、地図が分からないからタクシーに乗ろうと言い出した子がいた。 金銭的な面やタクシーの利用経験の差なのかな、感覚が違うんだなって当時も思った。 『背景には、人生がうまくいっていると感じられる(「見込みのある人生」)ためには、その人が「どこかに向かっている」と前進している感覚(「想像的な移動性」)が不可欠であるという現代の状況がある。』
  • 『格差や不平等と聞くと、貧困をまず思い浮かべる人が多いと思うが、誰が貧困かだけでなく、誰がお金持ちか、といったことも不平等の議論の一部である。格差や不平等はマクロな視点であり、いうなればすべての者が、格差や不平等の対象になる。』 目から鱗だった。 言われてみれば、格差とか不平等と聞くと下ばかり見てしまいがちだけど上だって差になるんだ。 『この本を読んでいるあなたも、書いている私も、含まれているのである。』 ドキリとした。 なんだか順位をつけられているみたいで嫌だけど、誰にとっても格差は人ごとではない、例外ではないと思い知らされる一文だった。 『当事者であることと当事者でないことは背反の関係ではない。』 『移動をめぐる格差や不平等を考え語ることは、誰もがもっているそうした可能性を考え語ることである。』
  • 昨日もらったフリーペーパーのテーマが『目的の旅』でこちらを思い出したから読み進める。 ●モビリティ・ジャスティス:権力と不平等が、移動をめぐる統治や制限にどのように影響し、人、資源、情報などの環境における不平等なモビリティとインモビリティのパターンを形成するのかを考えるための包括的な概念 →移動とそれをめぐる社会構造や制度、政策が公正かどうかを問うための見方 《この本における『移動』の定義》 観光や出張などの長距離移動、通勤通学や買い物など各種交通手段を利用した日常移動、移住や引っ越しなどの長期的移動といった、期間や距離を問わず空間的・地理的な移動すべてを含む 平日1日の移動にかかる平均費用より、 「お金がある人ほど遠い距離からの、日々の費用がかかる移動が選択しやすいため」≒「経済的な余裕があるからこそ、住まいと移動の自由さを享受できる」というのが腑に落ちない。 自分的にはお金がある人は職場の近くに居住して移動時間をあまりかけない、という印象が強い。 斯くいう私も自宅から某港町まで毎日2時間電車に揺られて通勤していたことがある。交通費が支給されるなら引っ越したりせず自宅から通うように言われたからだ。 これは例外?(というか論外?) もしくは、家賃を日割り計算して上乗せすると考えたらいいのか? 二項対立に注意と著者が言っていたのはこういうことかと思った。 正解なんてない。 こういう傾向がある、というように参考データとしてざっくり捉えることにする。
  • 週末友だちに会う機会があり、交通費について考えた際にこの本を思い出してまた読むことにした。 『お金があるほうが移動しやすく、お金がないと移動がしづらい-私たちはそんな社会を生きている。所有しているお金の量が移動の機会や可能性を左右するというわけである。』 社会人になって大学生のときの友だちに会う際に思ったこと。 今までは学校に行けばみんなに会えたのに、今はお金をかけて時間をかけて約束したりしないと誰にも会えない。 そのことを友だちに話したら寂しいこと言わないでと怒られてしまったけれど。 事実そうだった。 大人になったら自由になれると思っていたけれど、むしろ逆でお金がなければどこに行くこともできない。 ★ムーヴメント →物体が一つの物理現象としての移動 ★モビリティ →ムーヴメントを囲む環境や構造、文脈、背景をセットで考えた際の移動 『移動とは、社会的で、政治的で、経済的なものなのである。』
  • 『移動は資本、すなわち「所有・蓄積し、活用する」ものでもある。』 移動について考えるには二極化されたものの比較ではなく、多角的に視野を広く様々な可能性を考慮する必要がある。複雑に絡み合った要因を丁寧に解きほぐしていく作業。とても難しい。
  • Cota
    Cota
    @Cota-CAT4rd
    2025年5月29日
  • 真冬
    真冬
    @k31x31
    2025年5月29日
  • 卯木
    卯木
    @ustuginus_readx
    2025年5月29日
  • いくの
    @iqno
    2025年5月28日
  • うーん、すごく難しい…理解が追いつかない…今日読んでなんとなく心に留まった言葉や思い浮かんだ事だけかい摘んでメモっておくことにする。 『移動は資本、すなわち「所有・蓄積し、活用する」ものでもある。』 【可動性を規定する3つの要素】 ①アクセス:移動のために、利用可能な選択肢を選べる条件(移動や通信が利用可能な経済的・時空的条件など) ②スキル:アクセスを利用するために必要な能力やノウハウ(運転スキル、目的地へと効率よく達するための情報調査能力や地図読解能力など) ③多様な移動の仕方の中で何を求め実践するかの計画や欲求(価値観、認識、習慣、経験などと関連して形成されるもの) 前に友だちと話したときに違いが表れた、映画を観る際にどう調べるかが思い浮かんだ。 特定の映画館で映画を観るか、 観たい映画ならどこの映画館でもいいか。 この話題も可動性が影響していたのかもしれないと思った。 テレワークでどこに行くのにも交通費がかかるから特定の映画館へ行くか、通勤していて定期があるからその中ならどこの映画館でもいいか。 時間、機会、『移動』にかかるお金…どこに重点を置くか?ということ、考え方合ってるかな。 『移動資本には、望むか必要があれば移動できるという意味合いが含まれる。同時に重要なのは、「移動しない」という選択肢も含まれていることである。』 これは転職するか否か、というところにも当てはまりそう。 転職したいと望んで今いる職場を辞められるということ、望んで移動できるということ。 今いるところに可能性を見出しやりがいを感じる、移動しないという選択肢。 今いるところに留まるか、また別のところへ移動するのか。 移動したいのに移動できない、辞めることができず留まることしかできないは含まれない。 移動資本は自分の意志で動くことができる、という点が重要なのかなと考える。
  • うちにも障がいのある人がいるからよく分かる。 災害が起きて仮に避難指示が出たとしても、家が崩壊したりしていなければうちの家族は自宅に待機していると思う。 心身の負担が重すぎるし、まわりに気を遣うことでストレスになってしまうから。 いや、みんなストレスにはなるだろうから、違う場所に移動いないといけないことを理解できない、が正しいのかもしれない。 「知らない場所に連れてこられた」その上「知らない場所での生活を強いられる」。 心身の負担は計り知れないし、何なら食事を口にしない可能性もすごく高い。 なるほど、『移動できない人』とはうちのことかと思った。 周りにスーパーとかが無いから買い物をするとなるとだいたいは車か電車で『移動』しないといけない。 交通手段がないと生活できない人がいる。 高齢者が免許を返納しない理由。 薄々感じてはいたけれど車がないと日用品や食料の確保もままならない人がいるということ。 そして池袋暴走事故。 『だが、あのとき関心を集めたのは、事故の原因や背景よりも、“上級国民”と呼ばれた被告の特権階級性とパーソナリティであったように思う。』 当初ニュースで報じていたのは「高齢者が運転している車に親子がはねられた」という内容だったはずなのに、いつの間にか「事故を起こしたのはかつてのお偉いさんだった」という事の方がフォーカスされるようになっていった。 命に重いも軽いもないのに、というのは当時も感じていたこと。 『移動と階級』は社会ぐるみで考えていかないといけない難しい問題だなと感じた。 …この時点でまだ目次に到達してない。 内容が濃すぎるし重すぎる。すぐお腹いっぱい頭いっぱい盛りだくさんでパンクしそうになる。なんて濃密な本を手に入れてしまったんだと頭を抱える。ゆっくりじっくり読もうと思う。
  • 『運転免許返納者によるショックや生きがいの喪失は、ときに自殺へとつながってしまうからである。』 宮崎県では2024年から警察と連携して自殺予防の取り組みを行なっているらしい。 初めはなんで?と思ったけど『生きがいの喪失』か…なるほど。 もともと車を運転されていた方にとって、行きたい場所へ行くための足がなくなる、会いたい人にもなかなか会えなくなるということ。 楽しみがなくなってしまったら「何のために生きているんだっけ?」と絶望するのも当然。 『階級・階層や性別、住んでいる地域、国籍、心身の特徴などによって、移動の機会や自由さ、経験には“差”が生まれている。』
  • みみお
    @crossing
    2025年5月23日
  • 【今週の課題】で作った『願望リスト』に「〇〇に行きたい」の文言ばっかり並んでいて、いや、どんだけいまの場所から脱出したいんだよ!とか考えていたら。 冒頭で「行きたい場所に、いつでも行けますか?」って…いやいや、読むしか選択肢がないじゃないですか。読みます。
  • かぢちゃんのラジオにゲスト出演された方の著書。5/22発売。 移動距離と階級の関係性。 『チャンスを獲得する為には自ら足を運ぶ、自発的に移動することが大事』 現状を打破できない、どこにも行けない。 この場所から一歩踏み出す勇気を得られるかもしれない、と気になった一冊。
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