未来

32件の記録
Yamada Keisuke@afro1082026年7月31日読み終わった美玉ラジオで紹介されていて、それを聞きながらブックオフをぶらついていたら、偶然にも目の前に本著があった。そんな巡り合わせで購入したまま積んでいたのだが、ここ数年は「Summer Reading」に乗っかり、夏に鈍器本を読むのが恒例になっており、満を持して500ページ超の本著に挑んだ。現代的なテーマをこれでもかと盛り込みながら、それらをエンターテインメントとして見事に昇華した一冊だった。 著者は前作『パワー』が世界的なベストセラーとなり、そちらで知っている人も多いだろう。訳者あとがきによると、マーガレット・アトウッドの弟子筋にあたるらしい。本著は終末SFという王道の枠組みを用いながら、「世界を支配するビッグテック企業のCEOたちが急に姿を消したら社会はどうなるのか」という思考実験を起点にしている。この設定が非常に新鮮だった。しかも舞台は限りなく近未来であるため、SFでありながら現実の延長線上として読めるリアリティがある。テックに関心のある人なら、とりわけ引き込まれるだろう。 主人公はサバイバル系YouTuberとビッグテック企業の秘書という二人。冒頭で謎めいた激しいアクションが描かれ、その出来事を起点に、終末世界をどう生き延びるのかが多角的な視点から語られていく。 印象的だったのは、終末論を思想的に支えるソドムとアブラハムをめぐるモチーフだ。旧約聖書を下敷きにしているのだが、神話は毎回読んでもなかなか頭に入ってこないのだが、比較的理解しやすかった。それは複数のテーマに重ねながら繰り返し描かれるため、寓話として自然に読み解くことができたからだろう。 なかでも表紙に描かれた「キツネ」と「ウサギ」は、本著を象徴する重要なモチーフである。狩りをしながら移動していたキツネだった人類が、一か所(都市)に定住するウサギへと変化してしまった。そんな比喩を通じて現代社会を読み解いていく。その停滞こそが世界を滅ぼす根源だとするラディカルな視点に、環境問題や資本主義への批判が接続されていく構成が見事だった。それは現在の加速度的な資本主義の浸透に対するカウンターでもあり同時代性があった。 物語全体にインターネット、SNS、AIを中心としたテクノロジーに対する懐疑的な視線が投げかけられており、フィールする内容が多かった。ネット上で机上の空論を交わし、何かを成し遂げた気になっていても、現実は何一つ変わっていないことはよくあることだ。そこから抜け出すには身体を伴った行動が必要であり、その先には現実世界そのものの尊さがある。そんなメッセージが胸に響いた。 物語のギミックが豊富で、500ページを超える長さにもかかわらず最後まで飽きさせない。掲示板形式の書き込みが随所に挟まれる構成が効果的だし、終盤にはどんでん返しが何度も繰り広げられ、読んでいてハラハラした。複雑な人間関係のなかで、それぞれの思惑が絡み合いながら社会が変化していく様子は読み応え十分だった。その展開は計算されているというよりも、未来の予見不可能性を物語に組み込んでいるようだ。さまざまな出来事や個人の選択が少しずつかみ合って社会は変化していく。つまり「一人一人の行動変容こそが未来を変えていくのである」というメッセージだと受け取った。まさにONE PERSON ONE POWER。 未来という言葉には期待と不安が常に同居している。本著はその両極を振り子のように行き来しながら、私たちは何を拠り所にこれから生きていけばいいのか問うてくる。目先の利益を利己的に目指していくような現代だからこそ、誰のために、何のために生きていくのかについて、考えさせてくれる小説だった。
錦@nsk2026年1月17日読み終わったパンデミックによる崩壊が始まった世界で、未来を予測するAIを手に入れた巨大テック企業の3人のCEOが、安全なシェルターに避難し、終末を逃れようとする。そこへ、偶然同じAIを手に入れたサバイバリストでネットライターの主人公が避難しにやって来て、物語が動き出す……。これがネタバレなしの大まかなあらすじ。 半分読んだ時点で「このまま普通のディストピアサバイバルものだったら、読み終わる自信がない」と思っていたが、そんなことはなかった。 実は、この終末はフェイクなのだ。貧富の差を拡大し、世界を着実に滅亡へ導いている「持つ者」を消すために、CEOたちの身内が考えた計画だったのだ。そうとは知らず、情報が遮断された島へ文字通り島流しにされた3人は、ひとりを除いて悲惨な最期を迎える。そして、「持つ者」を失った世界は、より良い方向へと変化していく。 挿入されるソドムの物語が「世界を良くするために悪人を排除しても良いのか?」という問いにもなっていて、単純な勧善懲悪ではないのがよかった。
空尾@0s0ra02025年8月21日読み終わった面白かった!終末SF?なのか?くらいの前知識で読み始めたら、意外とサスペンスフルでワクワク楽しめた(謎解きを過度に期待し過ぎると肩透かしをくらうかもしれませんが)。世界的テック企業の経営者たちがもしもこうなったら…というところで、色々と現実と比べて考えられるし、0か100か(作中で言えば、絶対的なITへの信仰か原始的な狩猟採集生活への回帰か)的な議論の危うさを思い知らされる。読んでよかった。

Dende@dende2025年7月13日読み終わった面白かった!前作のパワーも面白かったけど本作はSFプラスちょいサスペンス風味でグイグイ引き込まれてどんどん読み進められる!Amazonのレビューで「そんなうまくいくか?」的な感想を見て、まーそう思うけど最後の最後のエピローグで「結局人間てやつぁ…」となるので、そこまでめでたしめでたしじゃないかな。前作のラスト同様。(訳者あとがきに書かれている通り「前作もそうだったが、そんなこんなで本作の読後感はけっして爽快とは言えない。」)
Y_KATSUKI@k2_44162025年5月13日読み終わった冒頭にル=グィン訳の老子の一節。 訳者あとがきにもあるけど、このテーマの変奏、最近よく見る気がする。 〈未来を予測するなんて……そんなの無理よ〉























