「本陣殺人事件」、「車井戸はなぜ軋む」、「黒猫亭事件」の三篇を収録。どれも正統派のミステリーといった具合で、魅力的な謎や驚きに満ちていて惹きつけられた。 昭和レトロな雰囲気を文字で追うのも趣があり、楽しめた。作中で、度々、獄門島に触れている場面があったので、いずれは獄門島も読みたいところ。

戦時中の神戸、芦屋での女学生たちの暮らしぶりが丁寧に描かれていた事が印象的だった。ハッピーエンドなのは予想できたけど、それでも、惹かれ合う二人が幾度もすれ違うシーンは切なくて、互いの恋が結ばれた瞬間はホロリとした。

マジック・レアリズムに圧倒されながら読んだ。一家を襲う様々な出来事、事象に時には頭を捻り、時には家系図を見返し、途中で深い事を考える事をやめて読み進めていく事に。呆気なくも、幻想的な結末が、物語全体の不思議な雰囲気あい良かった。

あまりミステリーっぽくはなかった。主人公をはじめとする登場人物たちが、救助者の身を案じ救おうとする様に好感が持てた。じんわり温かくなる様な結末も良かった。