くるまの娘

25件の記録
- あるく@kinokonomorimori2025年10月9日読み終わった感想かんこはこの車に乗っていたかった。この車に乗って、どこまでも駆け抜けていきたかった。 (本文より引用) ある一家が親戚の葬式に出席するため、車中泊をしながら帰省する話。 ただそれだけなのに、家族のエピソードが濃縮してあって、読んでいて何度も胸が締め付けられた。 主人公かんこの家は、世間一般から見たら機能不全家族である。父親はDV加害者だし、かんこはそれで鬱病を発症した被害者だ。脳卒中で倒れた母親は過去の家族に縋り、兄は家を捨て、弟も家から距離を置きつつある。 それでもかんこは家族を見捨てられない。自分を保護してくれる筈の両親を自分が護るべき子どもと錯覚し、切り捨てることができない。 父親の受けた暴力が彼の拳によってかんこに染み渡り、共鳴する。かんこはもがき苦しみながら、時折自分も家族を傷つけながら、家にしがみつく。 とっくにボロボロで、いまにも崩壊してしまいそうな車は、不可逆な時間の流れを突き進んでいく。その後ろに、耐えられなかった家族の死体が積み重なってゆく。 かんこを病気だから、と「カウンセリング」するのは容易いだろう。しかし、彼女は最早そんな社会を求めていないのだ。 泥のなかで息をしているような読後感だった。
- O@46_962025年4月27日読み終わった今まで宇佐見りんは「かか」がいちばん好き、と言っていたけれど、今日から「くるまの娘」になった。 名前のない形を、そのままの姿で書くのが本当に上手い。変な主観や脚色なく、誰が正しいも悪いもなく。すべてを受け取れている気が到底しないが、誰もが被害者であり加害者、血によって脈々と続いていること、彼らは親であり子どもであるという曖昧さを得た。家庭に関する中々しんどい描写も多いので、人によってはつらいと思う。 あとは、最後の一文を個人的に愛している。最後の一文とその周りの文章の、雰囲気。簡潔で舌の上に転がしたくなるサイズ感。あれほど収まりがいいのは素敵。 この話が好き、読めてよかった。
- osio@ssio___62025年3月10日かつて読んだ覚えのある感覚の連続で子供の頃、実家にいた頃を思い出して息が上手くできなくなった。 でも描写の中で懐かしさを感じる所があって、あの人達のこと全てを嫌いにはなれないんだな、地獄と思っていても、離れがたく捨てられない思い出があるんだってことに気づかされた。 それがまた悲しくてどうしようもなくて辛い 辛いけど、昔に戻れる気がして何度も読んでしまう。 もう居なくなった人達に会えてる気がして
- 夏しい子@natusiiko2025年3月9日かつて読んだこれはシラフで読むのキツいわ。 けどね、面白い!もちろん笑える面白さじゃないけれど心が痛いながらに読んでしまう。 私は兄の言う『自立」より親を子のように思う、火事場に子どもを置いてくる事が出来ない想いというのに共感した。 父親が悪だ、はいお終い。となるには私は歳を取りすぎたし人生経験も積んでしまった。だからと言って、父親に同情的にもなれない。 あの父は一生薄っぺらいままだろう。 かんこが不憫だ。 親が子どもに当たり散らす事はしてはいけないが、子どもが親に当たり散らすのはアリだと思う。
- 万願寺@manganji_2025年3月7日読んでる@ ブックファースト 新宿店三宅香帆さん『娘が母を殺すには?』で出てきて、そういえばまだ読んでいなかったなと思いひっぱりだしてきた!宇佐見さんは『推し、燃ゆ』だけ読んだことがあるが、あれはおそろしい小説だった。
- 猫@mao10122025年3月5日かつて読んだ地獄というのは、終わらない苦しみのことを言う。兄妹の中で自分だけが、その地獄を切り離せずにいる。 くるまの娘、というのはそういう意味か〜。暴力は決して許される行為では無いが、父親の境遇には同情せざるを得ない。 恐らくこの家族が元に戻ることはないし、その中で生き続けるかんこのことを思うと痛々しくて見てられない。家族を助けたいだけなのに。思考と現実の齟齬。 最後の父親のセリフが一番しんどくて、私自身にも響いてきて、最後にそれを持ってくるのか……。