生物と無生物のあいだ

18件の記録
- pamo@pamo2025年3月17日かつて読んだ心に残る一節引用:よく私たちはしばしば知人と久闊を叙するとき、「お変わりありませんね」などと挨拶を交わすが、半年、あるいは一年ほど会わずにいれば、分子のレベルでは我々はすっかり入れ替わっていて、お変わりありまくりなのである。(p.163)
- ishiguro_reads@ishiguro_reads2024年11月6日読み終わったカイヨワの「反対称」を読んで、生物と無生物の連続性と分水嶺について興味を持ち、生物学者の福岡伸一氏が記した本書を手に取った。2007年のベストセラー本である。 生物学についての本を読むのは初めてだった気がするが、その作法が非常に面白い。ある分野での過去の学者たちの発見と失敗の歴史、哲学的思索、具体的に取られた実験方法の記述など、様々な方向から織り込まれたテクストは重厚で、門外漢にも示唆に富んでいる。 たとえば、砂浜に散在している小石と貝殻を見たとき、同じような見た目であっても片方は生命の営みによってもたらされたものであることを見る。小さな貝殻に、小石とは決定的に違う一体何を私たちは見ているというのだろうか。著者曰く、有機的かどうかは自己修復を行うか否かであり、動的平衡を保ちつつ更新し続ける性質に依存する。 この生物学的視点に、カイヨワの「反対称」に記される美学的視点を足してみるとどうなるか。建築自体が、安定と不安定、対称と反対称のあいだにあることで、そこに生命的な律動が感じられる。サンゴ虫の作り出すサンゴ礁のように、建物とヒトと、ヒトの振る舞いにより動かされるモノのレイアウトが、フラクタルな関係性を築くのが生物として好ましいのではないか。