はじめての動物倫理学

はじめての動物倫理学
はじめての動物倫理学
田上孝一
集英社
2021年3月17日
22件の記録
  • Audibleで聴いた。本書は動物倫理学の概説書的な新書であるが、動物倫理の観点から現実社会に存在する個別の問題を詳述しあるべき指針を示すというよりは、むしろその思想的・哲学的な源流と基本原理を詳しく説明している。特に3章でショッキングな描写はありつつも、積極的にヴィーガニズムを推し進めようとしているというわけではなく、押しつけがましい態度はとっていない (あくまでも倫理学的に一貫した立場をとるのであれば、こうする必要がある、という話をしている) ので、アンチヴィーガニズムの立場の人だとしても読む価値はあると思う。そもそも動物倫理学はもはや倫理学の概論的な大学の講義でも一つのトピックとして扱われるほどに正当なものなので。 紙幅の問題もあるのか、若干論理の飛躍と言うか、暗黙に置かれている仮定がいくつかあるように感じるものの、首尾一貫した形で「徳の高い」生き方はこういうものであろうというのはわからなくはない。なお、本書内でも何度か言及されているが、本書が示すような倫理学的な態度はあくまでも長期における指針、目指していくべき社会や態度のあり方を論じているものであって、今日すぐにそこに到達できるようなものではない。例えば、いまの社会の生産能力や技術水準をもってすれば、肉食なしにも人間が (おそらく健康的に) 生きていくことは可能であろうが、じゃあ明日からそういう風にしようというのは無理な話だろう。それは多数の餓死者や失業者を生み出すような政策であり、常識的に考えても、またおそらく突き詰めて倫理学的に考えても許されることではないはずだ。(もちろん帰結主義的な立場をとる私からすると、屠殺される動物の命と人間の命にどう重みづけるかがここでは問題になるだろうが、そこに関するフォーマルな議論は聞き流した限りではなかったように思う) すなわち、究極的な指針とそれを目指すための移行過程の実践は区別されるべきものであり、なおかつ後者はより困難な問題であろうと思う。 とはいえ、前者の究極的な指針、すなわち、動物倫理学の確立には哲学・思想上の歴史では容易なものではなかったようである。本書ではまず、伝統的な倫理学における功利主義、義務論、徳倫理を概観する。そして、伝統的な動物観の元では、動物が明確に人間とは区別され、今日における動物倫理学が応用倫理学として確立するには至らなかったことを示す。しかし、ピーター・シンガーが『動物の解放』において功利主義的な原則を動物にも当てはめることを主張し、多くの人が (科学の進展や西欧世界における物質的な充足も相まって) それに共感し、今日的な動物倫理学や動物福祉の活動が始まった。その後、功利主義的な立場の限界を認識し、トム・レーガンが義務論に立脚した「動物の権利」の概念を確立し、現代的な動物倫理学が明確に確立した。食肉産業における大規模・高密度な家畜の飼育方法 (Concentrated Animal Feeding Operation; CAFO) の残虐性を考えると、少し肉を食べる気が失せてくる。残念ながら本書を読む前も読んだ後も、倫理的に一貫した生き方をしているのはヴィーガンやベジタリアンであろうという認識はありつつも、私自身は肉食をやめるつもりはないのだが、それでも肉を食べているときにしばらくちらついてくるだろうと思う。 ここまでが2章であり、3章ではそれまでで導き出してきた動物倫理学的な原則を具体的な例、環境問題・倫理問題としての肉食、動物実験、動物園と水族館、狩猟、駆除、エンターテインメント、ペット、動物性愛などに当てはめていく。3章以外は概ね哲学的な議論を展開するのみで、あまり具体的な例を使って動物たちがおかれている凄惨な状況を描写してはいないが、3章はなかなかにショッキングな描写が続くため閲覧注意である。品種改良されたブロイダー (食肉用の鶏) の実情はどこかで見たことがあり、知っていたはずだが、それでも少し気分が悪くなった。 4章では、動物倫理学が1960年代以降になるまで確立されなかった原因である、種差別や人間中心主義の問題をキリスト教西欧圏の文化的思想を紐解くことで示している。5章では環境倫理学とエコロジー思想との関連を述べ、最後に6章でエコロジー思想の限界を超えるヒントをマルクスの思想に見出す。すなわち、ディープエコロジーは全世界の人口を1億人以下にするような非現実的な理想論を唱えているわけだが、現実社会は政治や経済、社会制度に基礎づけられているため、こうした現実を反映しない限り、理想とする社会を実現することなどできないからだ。マルクスは経済と社会の関係を統一的に捉える枠組みを提供してくれるため、彼の理論体系を拡張することで、望ましい社会を実現できないかを探っている。
  • cio
    cio
    @cio_105
    2026年3月26日
  • かちもち
    かちもち
    @gdgd90xjq
    2026年3月10日
    動物の権利主体性を認めながらも、人間は人間中心主義から脱却して動物も含めた環境全体を管理する責任を負うから野生動物の個体調整の必要があれば動物種の存続のため間引きも許容されるというのは納得できなかった。結局は人間と同等の権利を個々の動物には認めていない。
  • かちもち
    かちもち
    @gdgd90xjq
    2026年3月7日
  • 功利主義、義務論、徳倫理学が動物倫理学にどう位置づけられているかが(著者の好みありきで)指摘されている。またマルクスを動物倫理学に位置づける試みは見たことがなく、独自性があると感じた。
  • せか
    @sekaikeichan
    2026年2月3日
  • こたか
    こたか
    @kotaka
    2026年1月3日
  • ぐ
    @busy-lake
    2025年10月30日
    面白いというには語弊のある、衝撃的な内容。 難しいけどギリギリ着いていける! どう衝撃的なのかというと、 自分の、動物が好き、動物はかわいいと思う気持ちを手がかりに、 自分や社会に存在する様々な差別の存在と構造に気付かされる。 例えば、奴隷を虐待するところを見て「奴隷制は良くない」と思う人が、 奴隷を大切に扱う人を見て、しかしあくまで奴隷として扱う人を見て、同じことを思えるか。 みたいなことを考えた。 わしはYouTubeに動物好きと思われていて、 次から次へと動物動画が流れてくるが、 中には見ていて辛いものもあるから、あまり見なくなった。 また、動物園で飼育されている動物の名前を覚えてしまうと、 意外と早く死んでしまったりして、それもまた辛いので、 敢えて名前は覚えないようにしている。 その辺の気持ちに整理をつけたい。
  • ぐ
    @busy-lake
    2025年10月30日
    まだ途中。 初めの頃より話が小さくなってきた?? 肉食を悪と言い切って、ヴィーガンを目指そう! みたいな話になってるんだけど、 さっきまで動物の権利の話をしていた筈。 肉しか食わない動物ってたくさんいると思うんだけど、 肉食動物は悪なのかな? そこのところがちょっとわからないです。 あと、だったらどうして植物を食べていいのかもわからない。 また、牛の環境負荷の話もしていたんだけど、 アボカドの環境負荷の話もどっかで聞いたことあるんだよねえ。 あとあと、人間の子供は肉を食わずして健やかに育つことができるのか? 両親共にヴィーガンで、ヴィーガン食しか食べさせてもらってないが為に、発育不良な子供の話を聞いたこともあってさ。 動物倫理っていう哲学のジャンルの存在はとても興味深いけど、 この本に書いてあることはちょっと偏ってる気がしています。 まだ途中だから、このあとどう展開していくか。
  • Blue moon
    Blue moon
    @mimosamimi
    2025年10月30日
  • aino
    aino
    @aino8
    2025年9月4日
  • 17+1
    17+1
    @17plus1
    2025年3月8日
    理髪店の待ち時間に「はじめに」だけ読んだ。いま書こうとしている小説に関連するトピックだけ拾い読みでもいいかもしれない。
  • bus
    bus
    @busco
    2025年3月7日
  • Usui
    @lighbury
    2022年2月1日
  • quei
    @quei
    2021年12月1日
  • k.
    k.
    @rom-random
    1900年1月1日
  • 鴨居
    @kamokamokamoi
    1900年1月1日
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