灰の王
22件の記録
DN/HP@DN_HP2026年8月16日優れた「犯罪小説」にはいつも音楽が流れている。というのはマイケル・コナリーが推薦コメントに書いている「優れた犯罪小説に必要なもの」のひとつだ。多分。特にS•A•コスビーはいつもその趣味も良いというか、好みが合いそうな気もしている。 「ダンテは自動車修理工場に着くと、レンタカーを通りの向かいに駐めた。衛星ラジオで九〇年代ヒップホップ専門チャンネルを聴いていた。ゲトー・ボーイズの『マイ・マインド・プレイング・トリックス・オン・ミー』がスピーカから大音量で流れ、窓ガラスを震わせた。」 … 「ダンテは立ち上がり、銃を腰に差してドアに向かった。『ヘイ、タグ。いろいろありがとな』『ああ、またあとで』タグが言った。『ああ、ほんとにありがとな』ダンテは言った。そしてTLCの『ホワット・アバウト・ユア・フレンズ』を鼻歌で歌いながら去った。 … 「ラジオの曲が変わった。R&Bのヒット曲で、映画『ビート・オブ・ダンク(アバブ•ザ・リム)』のサウンドトラックに収録されている、スウィート・セイブルの『オールド・タイムズ・セイク』だった。 ここは実際には哀しさや無力感も漂うようなシーン。そんなときにも音楽は流れている。それは現実でもそうなはずだけれど、それが省かれずしっかりと書かれていて、その曲たちに覚えがあることにはかなりあがってしまったりもして。まあそれはその場面に合いすぎているような気もするけれど、映画で流れる音楽とかはそういうものだし、それを小説でやったって良いわけだ。








DN/HP@DN_HP2026年8月16日発売日直後に買ったけれど、乗り切れなくて一ヶ月の間を開けてようやく読み終わった一冊。これはたしかに帯にあるようにこの作家の「最高傑作」かもしれない。と綺麗に素早く手のひらを返しているところ。 隠し通すはずだった秘密は暴かれ、誰もが罪を犯し、あるものは死にあるものは去り、またあるものは新たな王になる。タイトルの意味も完全に理解した気になっている。 中盤あたりまでに主人公(最後までいけすかないぜ、というのにも理由があるけれど)にも読者(わたしには)にもかかるプレッシャーやストレスは、その後に訪れるカタルシスを予想というか渇望させるけれど、この小説も優れた「犯罪小説」の殆どがそうであるように、完全に「この世はままならない」、「解決しない物語」だった。 そこにはわかりやすく解放されるようなカタルシスは勿論ないけれど(気持ちの良いどんでん返しとかはある)、そう考えてみればあの中盤までの不快感さえもそこにあるべき、感じるべきものだったとも思えてくる。 ひとつのトラブルは去ったけれど、根本的にはなにも解決することのない、それどころか新たなトラブルや問題の予感、この世のままならなさをたしかに残して終わるような小説を読み終わった後に、なにを思えば良いのかは未だわかっていないけれど、たしかに素晴らしい小説を読んだことだけはわかっている。そんなことも思える小説。 読み終わってみれば最初の乗り切れなさはなかったことにして、全部素晴らしかったと都合よく思っているし、こういうのがやっぱり好きなんだよな、というのも改めて実感している。ちゃんと最後まで読んで良かった。






DN/HP@DN_HP2026年7月26日「音楽は柔らかく官能的なR&Bからワカ・フロッカ・フレイムのオールドスクールの代表曲『ノー・ハンズ』に切り替わった。」(p233) ワカ・フロッカ・フレイム懐かしい、と一瞬思ってあがりかけたけど、実はそんなに聴いたことなかった。 それよりもその数頁前にあった 「業(カルマ)が怖いのか?おれはもう二度と、誰にもおれたちに手を出させない。そのためにおれがカルマに苦しまなきゃいけないなら、それでかまわない」ローマンは言った。 「おれが怖れてるのはカルマじゃない。報いを受けることだ」ダンテは言った。 「同じことじゃないのか?」 「カルマは自分がやったことに対して返ってくる。報いは自分が何をしようと、いずれ捕まえに来る」(p223-224) という兄弟の会話を読んで思い浮かんだTHA BLUE HERBの「路上」という曲にある思い出と懐かしさと寂しさを思っている。 今流れているのはBun BとStatik SelektahのTrillstatik 3。このシリーズは大好き。


DN/HP@DN_HP2026年7月9日「たとえ兄と弟が助けはいらないと言っても、ネヴェアはいまのひどい事態を解決する方法を見つける。これまでもそうしてきた。それは人生が彼女に与えた運命だった。自分を助けることはできなくても、兄弟を助ける、そのことだけはできる。」 1/3位読んで、地元でトラブルを起こした弟はお人よしで無責任だし、そのトラブルを解決しようとした「主人公」、都会から帰ってきたエリート兄貴はさらにトラブルを大きくするし、家父長制とか女性蔑視を内面化している雰囲気もあるし(みたいなヤダみをしっかり感じるのはよく書けた小説ということでもあるけど)、物語もドライヴしはじめないし、ちょっとダルいかも、と思いはじめたところで、完全に「脇役」として読んでしまっていた妹に関するこの描写である。結構あがった。まあ、「自分を犠牲にしても家族を助ける女性」というの設定はちょっとアレかもだけど、タイトルの「灰の王」というのは家族が経営している火葬場にもかかっているわけだけれど、その火葬場を今取り仕切っているのは、そもそもその妹だ。つまりここからは「灰の女王」たる彼女の物語としても読める、かもしれない。期待。













