バトラー入門

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- amy@note_15812025年5月10日読み終わった感想クィア・フェミニズムジュディス・バトラーの難解な主著『ジェンダー・トラブル』を、社会的背景や思想的文脈とともにわかりやすく解説し、クィア理論やドラァグ論、パフォーマティビティの核心に迫る一冊。 おもしろかった。偏見がなくならないという現実があるからこそ「自己や他者に倫理的に生きることに駆り立てることができる」という一文には痺れた。そうあろうとすることは正直しんどい日もあるけれど、力強く言葉にしてくれることが支えになる。 また、家父長制についてのバトラーの考察には膝を打った。フェミニズムの前に立ちはだかる大きな岩といえば家父長制だが、それについて「家父長制は歴史的に必然でも、絶対的でも、自然なものでもない」という指摘があった。 家父長制を歴史の一部として認め、「家父長制前/後」と分けてしまうことが、むしろその存在を歴史的に必然化してしまう。つまり、解放のための思考が現在ある抑圧を知らず知らずのうちに正当化してしまう危うさについても語られていた。 さらに、連帯と対話の困難さについてもバトラーは論じている。団結の裏にある排除の危険や周縁化される人々へのまなざしも忘れず、フェミニストやリベラルのなかにも環境や意見の相違を受け入れられない人は多いという現実を見ている。SNSでもよく見かけるその構図についてもバトラーは考えを巡らせており、それでもなお「対話を諦めない」という希望を示してくれている。 正直、難しい部分も多かったが、読んでいてバトラーの考えに少しでも触れられたことが嬉しい。もっとバトラーについて知りたいし、途中で挫折する可能性はめちゃめちゃあるけど『ジェンダー・トラブル』も読んでみたい。
- こるびたる読書部@group_kolbitar2025年3月8日読み終わった著者が「『ジェンダー・トラブル』の1ファンが書いたファンジン」という通り、入門書というよりはある程度自分の解釈を持った人が他の人の解釈語りを聞くような立て付け。口語調の、まぜっかえしなど含む距離の近い語りは、本書の内容を踏まえたパフォーマンスということなのかもしれないが、正直だいぶ面食らった。できるだけ男性の哲学者を関わらせずにジュディス・バトラーの仕事を語る試み。参考文献リストはあり。