

はぐらうり
@hagurauri-books
本にまつわる仕事をしています。
紙の本は主に透明書店、電子はhontoを使ってます。
- 2026年2月23日
エピクロスの処方箋夏川草介読み終わった本屋大賞候補作。スピノザ、の続編。医師の覚悟と患者の覚悟、の話であった。 何度も目頭が熱くなる。前作でも思ったことだけれど、映像で観たい小説。映像化されそうだな、はよく思うけれど、映像で観たいと思うものはほとんどないので珍しい。 そして、映像化されたらもっと泣いてしまいそうだけれど、本を読む時間が減ってしまうのでたぶん観ない。 往生を描くのが上手い。医師という職業柄なのかもしれないが。誰もが自分の親族を思い描いて涙腺にくる。それが嫌味じゃない。小説を読み始めた人にとって本当に良い小説。 - 2026年2月16日
ありか瀬尾まいこ読み終わった本屋大賞候補作。 小説ってのは読む人の育った環境によって捉え方が大きく変わるもんだな、と。親とか元夫とか叔父とか、こんなことあるのかと違和感しかなかった。小説のなかの人だな、と。最初は。 まだひかりより小さい子どもを持つ親として、刺さる言葉が多かった。そして親とその親のやり取りがしんどい。最後に空の話が出てくるけれど、自分は子どもが生まれた日の空のことを覚えてないなと思い、気がついた。真夜中だったからだ。晴れてはいたが、都会の空で星も見えなかった。夏だけれど、気が動転して暑さも覚えてない。 三池さん、出だしからきっと良い人だと思っていたので、想像どおりで嬉しい。ウキウキ入院グッズは、いつか参考にしたい。自分の子でも、友人でも。最高だった。 三世代の母と娘の物語。良かったけれど、ちょっと玄人向けな構成だった。 - 2026年2月11日
暁星湊かなえ読み終わった本屋大賞候補作。 湊かなえさん、イヤミスの女王ということでずっと避けてきた作家さんだったけれど、ついに読むことに。本作はこれまでの作風とは、まったく違うのだろう。 現実のあの事件をベースにした、愛の物語。何周も回ってこのような形に着地したのだと思うけれど、かなりの苦悩があったんじゃなかろうか。 宗教の皮を被った団体の被害者と、その人物に殺害された被害者。どちらも加害者となる。結局のところ、どちらも悪い、目的が愛だとしても。葉間中さんの『家族』も愛だったな。 でも、宗教被害者側の情状酌量の余地として「想像力や言葉の力を持たない者の、最終手段」であったと言わせている。小説家や編集者、政治家などが多く出てくるので、どうしても対比していまう。言葉の力すごいけどね、暁。 言葉や対話ではなく力で制してしまったことはどうしたって肯定できないけれど、それでも救済したいという思いから書かれたものなんじゃないか。全然違うかもわからんけど。 - 2026年2月6日
夏を赦す長谷川晶一読み終わった面白かった。元気いっぱい、お調子者のように思っていた元日ハム・ガンちゃんの、高校三年生のときの話。 今でもたまにある、不祥事による甲子園辞退。予選すら出られなかった。取材も良いし、ノンフィクションライターではあるものの人間味溢れる最後も良かった。 運命、というのは自分の人生でも周りの人々のことでも、そういうものがある、と認識している。予期せぬ何かがあれば、それは運命だ、誰かが悪いわけではない、と常から思っているフシもある。 元プロのガンちゃん以外に有名な人が出てくるわけではないけれど、それぞれの人生をみんなが生きている感じが良かったなぁ。 - 2026年2月3日
- 2026年1月28日
家族葉真中顕読み終わった直木賞候補作。ノンストップサスペンスとはこのことを言うのか。 モチーフがあるとのことだが、人物相関図があっても読み解くのにかなり難儀する。いくつもの"家族"が出てくるので致し方ないし、すべて理解しておく必要もなさそうだけれど、最後までわからず。 ストーリーは最後まで恐ろしい。オウムとか、戸塚ヨットスクールとか、これまでの理解し難いいくつかの事件に近い。し、救いがない。 読むタイミングを選ぶかな、と思う。筆致は確かだし小説としては素晴らしい。読後が悪く、好きな人には良いかと思う。 - 2026年1月21日
カフェーの帰り道嶋津輝読み終わった直木賞受賞作。前の候補作となった『襷がけの二人』も良かったけれど、今作も前を向ける作品で良かった。 戦前からあるカフェー西行で女給をする女性たちが、戦中・戦後を生きる物語。こんな時代だから立ち止まったりもするけれど、みんな前を向いて暮らしていけて安心する。 人物描写が上手く、時代考証もきちんとされているのだと思うけれど、違和感がなくて凄い。受賞前に読みたかったなぁ。 - 2026年1月16日
叫び畠山丑雄読み終わった芥川賞受賞作。発表までに読みきれなかった。。 昭和と令和を結ぶお話。万博と、そこに生きる青年が結びつき、中盤からはフィクション味が増してくる。 恋愛政治小説とのことだが、政治というか政治思想というか、生き方とか在り方のことを描いたのかなと思う。 参考文献も凄いし、新人としてはあまりに堂に入った書き方だなと思っていたら、もうデビューして10年という方だった。小説としては芸術的だし芥川賞納得だけれど、新人賞という意味合いではないのかも。 大屋根リングとか、ここまで直近のものが固有名詞として出てくる経験があまりなかったので新鮮だった。 - 2026年1月14日
白鷺立つ住田祐読み終わった直木賞候補作。デビュー作でこんなに筆致鮮やかとは。。 比叡山延暦寺で、千日回峰行を成し遂げようとする二人の仏僧の物語。なんとなくバディものとか、同世代で切磋琢磨し、みたいなものを想像していたら全然違った。 ストーリーもどう転ぶか想像もつかない展開。専門用語も多くて難解な世界のはずなのに、ぐいぐい読み進められる。これは面白かった! 受賞ならずで残念だけれど、大成しそうな作家さん。 - 2026年1月9日
女王様の電話番渡辺優読み終わった直木賞候補作。 この世界はスーパーセックスワールド、って言い得て妙。たしかにそうですね、種の本能みたいなものですかね。 そこで生きにくい人たちの物語だったけれど、芯のある人が多くてなんだか安心しながら読めた。性的マイノリティを扱う小説は本当にここ数年で増えたけれど、これまでよりライトな文体というか、また違う読者層に向けて描かれてきているのが印象的だった。 - 2026年1月6日
読み終わった芥川賞候補となった久栖博季『貝殻航路』。 実際にある貝殻島(Google MAPで見られる)の灯台は、実際に点灯が復活し、廃墟ではなくなったということなのだろうか。日本が作って、ロシアが直している。 事実が基になっている部分が多いので、ノンフィクション的な要素も多い。北方領土とアイヌを扱っているが、アイヌのほうはあまり重点的には扱われず。こちらももっと読みたかったけれど、それは個人的な関心の強い方向だっただけ。 全体的に美しい物語で静かに時が流れる。でも、抱えている問題は多い。当事者性も必然性もある感じ。割と好きな文体でもあるので、芥川賞候補になったことで広く読まれていくと良いなと思う。 - 2026年1月3日
- 2025年12月29日
時の家鳥山まこと読み終わった芥川賞候補。時間軸を交差させながら、ひとつの家ができるところから描いている。ある意味で、というか正に、というか、家が主人公の小説。 死ぬことともう会えないこと、思い出せず埋もれた記憶と忘れること、その違い。あるものとないもの、かな。なにかすごく大事なことが描かれているような気がする。 ひとつひとつの意味が大きいので、文章がさらっと頭のなかを流れていかない。家を建てるときの設計図のよう。一文ずつしっかり理解しながら読んだ方が良い小説。 - 2025年12月19日
BOXBOXBOXBOX坂本湾読み終わった文藝賞受賞にして芥川賞候補作。不思議な作品だった。 いかにも文藝賞という次世代感がありつつも、芥川賞候補になりうる読みやすさも持ち合わせている。なにかが起こっているわけではなく極めて日常のお仕事小説でもありつつ、でもなにかは確実に起こっている、というサスペンス小説のようでもある。 中村文則が『銃』で出てきたときのような感じ。言語化ができなくてもどかしいけれど。あの頃はまだ感受性も豊か過ぎたのでかなり衝撃だったし、むしろ嫌悪もあったけれど、今この小説に近しいものを感じているのに、好感がある。 年齢を重ねることで受け止める土壌が広がることもあるんだなぁと思うと同時に、文藝の幅広さに慄くなど。 商品説明の「ベルトコンベア・サスペンス」に、何を言ってるの、と、サスペンスに落着させて良いのか、という思いもありつつ、令和の蟹工船とか言われても陳腐だなぁ、となってしまうし、表現が難しい。 とにかく読んで損はないので多くの人に読んでいただきたい。 - 2025年12月18日
失われた貌櫻田智也読み終わったこのミス2026年版・ミステリが読みたい! 2026年版・週刊文春ミステリーベスト10 2025 国内部門ともに1位で年末ミステリランキング3冠となった本作。エンタメとしてとても面白かった。 濃密な8日間。捜査としては短い時間で解決できているけれど、そこに至るまでの経緯がだいぶ濃くて面白い。かつ伏線もそこまで引っ張らないので、わかりやすくて良い。これは読みやすい。 どんでん返しというか、途中でこういうことかというのはわかってしまったので、だいぶミステリーにも慣れてきたんだろうと思い。2025年を代表するミステリー長編、広くおすすめできそうな一冊だった。 - 2025年12月15日
海神の島池上永一読み終わったもはら沖縄にとどまらず、台湾だったり米中との対立だったりも描きつつ、現代から古代を深掘りする壮大なエンタメ。さすがの真骨頂。面白かった。 「語りの上手い先輩の話を、酒を飲みながら聞くような小説だ。」という解説の一文がまさに! 池上作品はいつも入りが難しいけれど、面白くなるのはわかっているので読み進められた。今作はかなり過激で笑ってしまった。政治色も強いものの、そういうの嫌いじゃない。ご本人の思想なのかはわからないが平和というものへの考え方はとても示唆に富んでいた。 三姉妹のバチバチなやりとりも、ユーモアがふんだんにあり、愛情が垣間見えたりして面白い。 そろそろ沖縄の歴史も体系立てて勉強したほうがいいかもなぁ。 - 2025年12月3日
ミナミの春遠田潤子読み終わった山田風太郎賞受賞。独創的で、有望な作家に贈られる賞とのこと。漫才コンビ・カサブランカにまつわる人々を描く連作短編集。 小説としては良かった。自分には、残念ながらはまらなかったが、おそらくこの著者の読む順番と、大阪に馴染みがないことも原因だと思う。お笑いは好きなんだけどね。 - 2025年12月1日
- 2025年11月24日
- 2025年11月15日
神都の証人大門剛明読み終わった山田風太郎賞受賞。足掛け80年、3代にわたる壮大な「冤罪」ミステリー。かなり長かったけれどそれだけの月日があるし、ジェットコースターでぐいぐい読ませるし、終わってほしくないと思った。 フィクションではあるけれど、冤罪覆すのがこれほどまでに難しいとは。新証拠だけでは動かせないのか。 ラストは、そうくるか、と唸る。こっちは長旅で肩入れしているので、人情で攻めても良かったのかもしれない。 昔からなぜか伊勢神宮が好きで、三重が仕事場だった時代もあるので、出てくる地名が懐かしかった。とても充実した読書でした!
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