

はぐらうり
@hagurauri-books
本にまつわる仕事をしています。
紙の本は主に透明書店、電子はhontoを使ってます。
- 2026年4月10日
あのころの僕は小池水音読み終わったすごく繊細で、とても良かった。 小池水音さんはいまとても好きな作家で、いつか芥川賞を獲ると思っている。 5歳のあの頃の僕が、さらに小さいあの頃を必死に思い出そうとし、その5歳当時の記憶を、高校生になった僕が思い出す。その時々の記憶や感覚が、どれも愛おしいものに思える。まだ小さい、まだ今を記憶として残すことすらしないだろう息子がいるおじさんとしては、たまらん。 とても好きな文体。からだのなかにすぅっと入ってくるような。 今作は色が印象的。なんとなく、終わりの青、始まりの赤、なのかなと思った。 - 2026年4月8日
- 2026年4月1日
ラーメンと愛国速水健朗読み終わった2011年の発刊。最終章ではラーメンの未来について語るはずが、3.11によって不透明になり削除。 面白かった。ラーメンは中華料理の扱いで入ってきたのに、戦後闇市で屋台が興り、店舗を構え、インスタントの発明があり、いつしか日本独自に進化するように。 さらには地域主義から排他的ナショナリズムが乗っかりファッションとしての右傾化が始まる。 ラーメンをテーマに壮大な考察だったが、飛躍がないように思われる。地に足のついた書き方でとても好感。素晴らしい新書の書き手だと思う。 - 2026年3月26日
PRIZE-プライズー村山由佳読み終わった本屋大賞候補作。これで10作。村山さんは同窓だけれどやはり自分のテリトリーではないと思っていて読まなかった方。 面白かった。業界的に近しいので誇張もリアリティも理解できるところがあり、本書で固有名詞を出している文春を版元としているというのも意欲的。塩田さんもそんな感じだったか。 直木賞獲った人じゃないと書けない小説でずるい、という思いもありつつ、それでも自分の作品に自信がないと書けないような描写が多数。その境地に達したということなのだと思う。 揺れとか機微とかを描くのかと思いきや、後半で展開があったのが意外。 - 2026年3月19日
探偵小石は恋しない森バジル読み終わった本屋大賞候補作。売れているのは知っていたけれど、タイトルとイラスト装丁から自分のテリトリーではないなと勝手に判断していた。本屋大賞候補になったので読んだら、めちゃめちゃ面白いじゃないか。 叙述トリックとかアンコンシャスバイアス系の話はいくつもあるが、見た目に反しバックボーンが割と描き込まれているし、ストーリーも練られていて欠点がない。あんまりトリックがわかった後も読み返したいと思うことは少ないけれど、これはまた読みたい。 本作にあるファンタジー要素は、タイトルと装丁と文体からもっとファンタジックに思えても良いはずなのに、妙な現実感があって面白い。 - 2026年3月15日
熟柿 (角川書店単行本)佐藤正午読み終わった本屋大賞候補作。初っ端から心掴まれる。文章が良い。単語が良い。さすが佐藤さん。 ここからネタバレになってしまいますが、会えないんだろうと思っていた。会えたとしても、会わないんじゃないかと思っていた。だから会ったときに、これがラストじゃなかったことが怖くなった。 やったことは、とはいえずっと苦労してきた主人公のことだから、この先にまだ不幸なことがあるんじゃないか。 そこでこのタイトル「熟柿」だった。この先に希望というか生きていく意味みたいなものがある、というのは嬉しいことなんだな、と改めて。今日も息子のバイバイを見てから出勤できて良かったな、と。 - 2026年3月9日
さよならジャバウォック伊坂幸太郎読み終わった本屋大賞候補作。いまさら伊坂幸太郎が候補になるのか!と驚いたが、新人賞でもなんでもなく売りたい小説、だから良いのか。 SFミステリでもあり、いつものアクションエンタメでもあり、面白かった。真に迫ったと思ったら委ねる、みたいないつもの描き方。だけどずっと違和感があった(目線は進むんだけどストーリーが腑に落ちてこない)のは、叙述トリックがあったからか。8割読んでもどう着地するのかわからなかったのも、読了してみれば納得。 他人と過去は変えられない。だけど、自分と未来は変えられる。よく言われるというこのフレーズが好きです。そこで自分を変えよう!となかなか動けないのも自分。 - 2026年3月4日
殺し屋の営業術野宮有読み終わった本屋大賞候補作。著者は漫画原作なども手掛けている方とのことで、コミカライズや映像化に向いた小説だった。良いエンタメ。 稀代の営業マンである鳥井が、殺し屋に攫われるけれどその手腕で殺し屋稼業の営業としてノルマ達成を目指す。これは設定勝ちでした。面白い。 トリックの善し悪しはあまりわからない。出来過ぎな気もするし、叙述トリック的なところは「!!!」ともなった。 ともすればコミカルになり過ぎる設定かなと思うけれど、ダークな面も描くことでファンタジー感が強くなかったところも良かった。 - 2026年2月27日
青天若林正恭読み終わったANNであれだけ宣伝されたら、ラジオリスナーとして急いで読まなくては、となる。アメフト小説なんて、こんなことでもないと読まないだろうなぁ、と思いつつ。 読了の瞬間、タイトルを思い出す。そうだった。ルールは正直わからないものの、スポーツ小説として面白かった。身体の声を聞いてる感じ、体験した人にしかわからない感じが良い。あるよね、そういうの。 アキのセリフがどうしても著者の声で聞こえてくるのでしばらく戸惑ったけれど、かなり著者を反映させたキャラクターで、こういう人生、を描いたのだと思う。倫理的に、努力で、抗った。 これが一作目、という感じがする、なんとなく。これからどんどん驚くのだ、たぶん。加藤シゲアキのように。 書影、差し変わってないね。 - 2026年2月23日
エピクロスの処方箋夏川草介読み終わった本屋大賞候補作。スピノザ、の続編。医師の覚悟と患者の覚悟、の話であった。 何度も目頭が熱くなる。前作でも思ったことだけれど、映像で観たい小説。映像化されそうだな、はよく思うけれど、映像で観たいと思うものはほとんどないので珍しい。 そして、映像化されたらもっと泣いてしまいそうだけれど、本を読む時間が減ってしまうのでたぶん観ない。 往生を描くのが上手い。医師という職業柄なのかもしれないが。誰もが自分の親族を思い描いて涙腺にくる。それが嫌味じゃない。小説を読み始めた人にとって本当に良い小説。 - 2026年2月16日
ありか瀬尾まいこ読み終わった本屋大賞候補作。 小説ってのは読む人の育った環境によって捉え方が大きく変わるもんだな、と。親とか元夫とか叔父とか、こんなことあるのかと違和感しかなかった。小説のなかの人だな、と。最初は。 まだひかりより小さい子どもを持つ親として、刺さる言葉が多かった。そして親とその親のやり取りがしんどい。最後に空の話が出てくるけれど、自分は子どもが生まれた日の空のことを覚えてないなと思い、気がついた。真夜中だったからだ。晴れてはいたが、都会の空で星も見えなかった。夏だけれど、気が動転して暑さも覚えてない。 三池さん、出だしからきっと良い人だと思っていたので、想像どおりで嬉しい。ウキウキ入院グッズは、いつか参考にしたい。自分の子でも、友人でも。最高だった。 三世代の母と娘の物語。良かったけれど、ちょっと玄人向けな構成だった。 - 2026年2月11日
暁星湊かなえ読み終わった本屋大賞候補作。 湊かなえさん、イヤミスの女王ということでずっと避けてきた作家さんだったけれど、ついに読むことに。本作はこれまでの作風とは、まったく違うのだろう。 現実のあの事件をベースにした、愛の物語。何周も回ってこのような形に着地したのだと思うけれど、かなりの苦悩があったんじゃなかろうか。 宗教の皮を被った団体の被害者と、その人物に殺害された被害者。どちらも加害者となる。結局のところ、どちらも悪い、目的が愛だとしても。葉間中さんの『家族』も愛だったな。 でも、宗教被害者側の情状酌量の余地として「想像力や言葉の力を持たない者の、最終手段」であったと言わせている。小説家や編集者、政治家などが多く出てくるので、どうしても対比していまう。言葉の力すごいけどね、暁。 言葉や対話ではなく力で制してしまったことはどうしたって肯定できないけれど、それでも救済したいという思いから書かれたものなんじゃないか。全然違うかもわからんけど。 - 2026年2月6日
夏を赦す長谷川晶一読み終わった面白かった。元気いっぱい、お調子者のように思っていた元日ハム・ガンちゃんの、高校三年生のときの話。 今でもたまにある、不祥事による甲子園辞退。予選すら出られなかった。取材も良いし、ノンフィクションライターではあるものの人間味溢れる最後も良かった。 運命、というのは自分の人生でも周りの人々のことでも、そういうものがある、と認識している。予期せぬ何かがあれば、それは運命だ、誰かが悪いわけではない、と常から思っているフシもある。 元プロのガンちゃん以外に有名な人が出てくるわけではないけれど、それぞれの人生をみんなが生きている感じが良かったなぁ。 - 2026年2月3日
- 2026年1月28日
家族葉真中顕読み終わった直木賞候補作。ノンストップサスペンスとはこのことを言うのか。 モチーフがあるとのことだが、人物相関図があっても読み解くのにかなり難儀する。いくつもの"家族"が出てくるので致し方ないし、すべて理解しておく必要もなさそうだけれど、最後までわからず。 ストーリーは最後まで恐ろしい。オウムとか、戸塚ヨットスクールとか、これまでの理解し難いいくつかの事件に近い。し、救いがない。 読むタイミングを選ぶかな、と思う。筆致は確かだし小説としては素晴らしい。読後が悪く、好きな人には良いかと思う。 - 2026年1月21日
カフェーの帰り道嶋津輝読み終わった直木賞受賞作。前の候補作となった『襷がけの二人』も良かったけれど、今作も前を向ける作品で良かった。 戦前からあるカフェー西行で女給をする女性たちが、戦中・戦後を生きる物語。こんな時代だから立ち止まったりもするけれど、みんな前を向いて暮らしていけて安心する。 人物描写が上手く、時代考証もきちんとされているのだと思うけれど、違和感がなくて凄い。受賞前に読みたかったなぁ。 - 2026年1月16日
叫び畠山丑雄読み終わった芥川賞受賞作。発表までに読みきれなかった。。 昭和と令和を結ぶお話。万博と、そこに生きる青年が結びつき、中盤からはフィクション味が増してくる。 恋愛政治小説とのことだが、政治というか政治思想というか、生き方とか在り方のことを描いたのかなと思う。 参考文献も凄いし、新人としてはあまりに堂に入った書き方だなと思っていたら、もうデビューして10年という方だった。小説としては芸術的だし芥川賞納得だけれど、新人賞という意味合いではないのかも。 大屋根リングとか、ここまで直近のものが固有名詞として出てくる経験があまりなかったので新鮮だった。 - 2026年1月14日
白鷺立つ住田祐読み終わった直木賞候補作。デビュー作でこんなに筆致鮮やかとは。。 比叡山延暦寺で、千日回峰行を成し遂げようとする二人の仏僧の物語。なんとなくバディものとか、同世代で切磋琢磨し、みたいなものを想像していたら全然違った。 ストーリーもどう転ぶか想像もつかない展開。専門用語も多くて難解な世界のはずなのに、ぐいぐい読み進められる。これは面白かった! 受賞ならずで残念だけれど、大成しそうな作家さん。 - 2026年1月9日
女王様の電話番渡辺優読み終わった直木賞候補作。 この世界はスーパーセックスワールド、って言い得て妙。たしかにそうですね、種の本能みたいなものですかね。 そこで生きにくい人たちの物語だったけれど、芯のある人が多くてなんだか安心しながら読めた。性的マイノリティを扱う小説は本当にここ数年で増えたけれど、これまでよりライトな文体というか、また違う読者層に向けて描かれてきているのが印象的だった。 - 2026年1月6日
読み終わった芥川賞候補となった久栖博季『貝殻航路』。 実際にある貝殻島(Google MAPで見られる)の灯台は、実際に点灯が復活し、廃墟ではなくなったということなのだろうか。日本が作って、ロシアが直している。 事実が基になっている部分が多いので、ノンフィクション的な要素も多い。北方領土とアイヌを扱っているが、アイヌのほうはあまり重点的には扱われず。こちらももっと読みたかったけれど、それは個人的な関心の強い方向だっただけ。 全体的に美しい物語で静かに時が流れる。でも、抱えている問題は多い。当事者性も必然性もある感じ。割と好きな文体でもあるので、芥川賞候補になったことで広く読まれていくと良いなと思う。
読み込み中...