

酒飲みぱんだ
@sakenomipanda7
- 2025年10月10日
- 2025年10月6日木幸田文ついでながらいえば、紅葉黄葉ほど美しい別れ、あるいは終りといったらよかろうか、ほかにあるまいと私は思っている。今年のいのちの退き際に、ああも華やかに装いを改めて、しかもさりげなくふっと、なんのためらいもなく、居場所をはなれてしまう。はなれて散り敷けば、これがまたどこに舞いおりようと、かならずぴたっと姿よく納まって美しい。
- 2025年10月3日
- 2025年10月3日デザートはあなた森瑶子テーブルに大小十個の箱が所狭しと並べられ、ふたが取られる。ありとあらゆるケーキやパイやムースやフルーツが、飾りたてたパーティーの夜の女たちのように厚化粧の顔を露にする。 「いつもいつもおあずけだったから、今夜は思いきり、あなたにデザートを食べさせてあげようと思って」
- 2025年9月29日成瀬は天下を取りにいく宮島未奈「わたしはずっと、楽しかったよ」 島崎の穏やかな表情を見て、成瀬は黙ったままうなずいた。成瀬もずっと、楽しかった。でも、口に出したらすべてが終わってしまう気がして、言えなかった。遠く離れて暮らしていても、島崎が同じ空の下にいると思えばやっていける気がした。
- 2025年9月27日
- 2025年9月24日
- 2025年9月22日
- 2025年9月21日流星シネマ吉田篤弘たとえば、本を読んでいる途中で本から顔を上げたとき、物語の世界が、すぐそこの自分が生活している世界と同化するのを感じることがあった。ときには、区別がつかなくなるときもあり、そうしたとき、どこか遠くにあるかもしれない物語の世界と、自分がいまいるこの町は、じつのところよく似ているのだと気がついた。
- 2025年9月19日
- 2025年9月14日
- 2025年9月8日きらきらひかる江國香織わかってもらえるかどうかわからないけれど、僕には、その絵が苦しいラブレターだってことがよくわかった。あまりにもながいこと、僕たちは近くにいすぎたからね。僕も苦しかったし、二人とももうどうしていいかわからなくなっていたんだ。絵の中の空は、ほんとに深く澄んでしずかだった。そして、その夜がはじまりだった。
- 2025年9月6日アーモンドソン・ウォンピョン,矢島暁子朝になると、熱は下がっていた。その代わり、今まで経験したことのない症状が現れた。学校に行くと、誰かの後ろ姿が光っていた。ドラだった。顔を背けた。一日中、棘が刺さったみたいに胸がちくちく痛かった。
- 2025年9月4日紅茶とマドレーヌ野村美月金色のシェル形のマドレーヌの端が紅茶にゆっくり沈んで、バターとレモンと紅茶の香りが鼻を、ふわ〜っとくすぐってーー口の中に入れると、舌の上で香りと一緒にとろけるように崩れていくの。そうすると頭の中がすーっとひらけていって、見通しがよくなる気がするのよ。
- 2025年9月1日憧れの貴婦人レシピ斎藤千輪京太郎が言っていたメンタル安定の三要素を、いつの間にか手にしていることに気づいた。 繋がり。承認。挑戦ーーーー。 確かにその三つは、華帆の中に新たな力を芽生えさせてくれるものだった。
- 2025年8月31日おいしそうな文学。群像編集部登場人物が想像をかきたてられるような描写を耳にして「その場にない料理を空想している」場合は、読者だけでなく登場人物もまた食べられずにいるわけで、そういう意味では読者と登場人物の気持ち(と、ついでにおなかが鳴る音も)がぴったりとシンクロし共鳴するまたとないチャンスである。
- 2025年8月27日
- 2025年8月23日
- 2025年8月9日満願米澤穂信約束は果たされた。わたしは車に乗せられ、木々が紅葉に色づく山の奥へと連れて行かれた。 柘榴はまだ熟し切るには早かったけれど、早過ぎはしなかった。わたしと父は一日中、それを存分に貪った。わたしの汚れたくちびるは、父のつややかなくちびるで清められた。 ペルセポネとは違う。わたしは二度と戻って来られなくなったのだ。
- 2025年8月4日銀河ホテルの居候 また虹がかかる日にほしおさなえ瓶の形自体がうつくしく、これを集めるだけで楽しいだろうなあ、と思った。 「世界じゅうの色が集まっているみたいですね」 わたしがそう言うと、苅部さんはにこっと微笑んだ。
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