ケアの倫理
88件の記録
- 雨垂@amadare__2026年9月24日読み終わった「ケア」とは何なのか、勉強のために読んだ。 まず衝撃だったのは、ケア(ケア労働)とは介護や子育てなど「他者の生存に直接関わる行為」を指すという点だ。てっきり最近よく耳にする「セルフケア」のイメージから、日常のちょっとした気遣い程度のことだと思っていた(もちろん気遣いもケアの一部ではあるんだろうけど)。 本書は数十年前のアメリカにおけるフェミニズム運動から現代までの流れを整理した内容であり、歴史の記述として淡々と受け止めた。実際のケア労働やフェミニストの主張に行き過ぎた面があるとしても、ケアの倫理そのものは「社会において他者を尊重する気持ちは大切だ」という理念であり、それは真理だと思う。対置される「正義の倫理」も「正しいことをするのは大切だ」という理念であり、どちらも当然のことだ。ただ、その当然のケアの倫理がわざわざ唱えられるのは、これまで正義の倫理ばかりが重視され、ケアの倫理が見過ごされ見下されてきた歴史があるからなのだろう。 介護や子育てのように、誰かが必ずやらなければ社会が回らない労働に従事する人が、なぜ見下されるのか。確かに不思議だ。学校で差別の歴史(えた・ひにん)を習った際にも、「生活に不可欠で誰もが嫌がる仕事を引き受けてくれているのだから、むしろ感謝すべきではないか」と感じた記憶がある。 だが、この差別構造は「誰もがやりたくない労働であり、当事者すらやりたくないと思っている」という点に起因するのかもしれない。自ら志願して従事するなら尊敬を集めるかもしれないが、「押し付け合いの末に断れず引き受けさせられた」という経緯があるならば、役割そのものが軽視され、差別へつながっていくプロセスにも納得がいく。 そう考えると、ケア労働も本音では「やりたくない仕事」の部類に入りそうだ。肉体労働としての効率を考えれば、基本的には体力や筋力のある男性が担った方が理にかなっている。それにもかかわらず女性にその役割が固定化されてきたのは、身体的な都合(妊娠や生理による体調の変化)から「人目を気にせず休める家の中で働く方が合理的だった」という背景があったからではないか。 「女性には母性がありケアに向いている」という言説は誇張に過ぎないが、そうした物語を受け入れなければ居場所を失ってしまうため、生存戦略として受け入れてきた側面がある……のかもしれない。 ここで難しいのは、現代の雇用や社会システムにおいても「効率」や「合理性」だけを追求すれば、生理や妊娠のリスクがない男性を優先する選択は理解できる。経営上のリスクを避けたい会社側の理屈も一概に全否定はできない。しかし、その効率性を突き詰めた結果、女性が社会進出できず誰かに依存せざるを得なくなる構造は、どう考えても健全ではない。 「効率やシステムのために誰かが我慢を強いられる構造」に対し、「人間にはそれぞれの権利があり、互いの弱さや違いを補い合うべきだ」と抗う姿勢こそが、ケアの倫理の本来の意図なのかもしれない。だが、そうした変革や気遣いができるのは、そもそも経済的・精神的に「余裕」がある組織や個人だけだ。競争に追われる社会にはその余裕がなく、結果として合理性の名のもとに誰かが弾き出され続けている。 本書でマルクスが言及されていた理由も、ここにつながるのだと気づいた。資本主義や競争社会が人々の余裕を奪い、効率ばかりを追い求めさせる構造そのものを批判しなければ、ケアの倫理を打ち立てることはできないからだ。読んでいる最中は「ここでマルクスが出てくるんだ」とやや唐突に感じていたが、要するに「余裕を奪う社会構造そのものへの抗い」としてケアの倫理と資本主義批判は地続きなのだと納得がいった。 このように「全員に余裕が足りていない」という現実に目を向けたとき、本書で紹介されるジョアン・トロントのケアの実践(①注意深く見る、②責任を担う、③やり通す、④敏感に応答する)には大きなハードルを感じざるを得ない(p.260)。 これらを読んだとき、単純に「難しすぎる」と感じた。これらの資質は成熟した成人に求められるものであり、現代社会にそこまでの精神的余裕を持った「大人」がどれほどいるだろうか。先進国で暮らす「私」たちは、物質的には恵まれていても、精神的には満たされない発展途上国の子供のような状態にあるのではないか。実際にはケアを実践する余裕などなく、一方的にケアを必要としている立場なのだ。このような弱さを露呈すれば「テイカーだ」「傲慢だ」と批判されるのがオチだ。ケア労働において、弱さを認め合うのをやっていくのは大事なんだろうし、ケアの倫理を元に活動する人は相談してくれと言うのかもしれないが……できない。なぜなら、道徳的な人たちだから。道徳的な人たちに、こんなこと言えないよ〜〜(言えないことがまた問題なんだろうけど)。 さらに違和感を覚えたのは、「ケアとは世界を維持し、継続させ、修復させるためのすべての活動である」というトロントの定義だ(p.256)。著者は読者がこの広大さに困惑すると予想しているが、個人的にはそれは序章の時点で承知できていた。それよりも、問題は、「私」たちは、この世界を維持し修復したいなどとは思っていない。むしろ、何もかもを壊してしまいたいとさえ感じている点だ。 本書には「子の発する普遍的な欲求──『生きさせろ』」(p.206)という記述があるが、それにも同意しきれない。「死にたい」「消えたい」という思いを抱えながら、生まれてきてしまったがゆえに生理的欲求を他者に求めざるを得ないのが現実だ。もし育てる側がその訴えをすべて無視してくれるなら、これ以上他者に負担をかけることなく消えることができるのに、とすら思うことがある。 他者への気遣いの末に他者を死に至らしめることは、ケアには含まれないのだろうか。倫理や道徳というものは、どこまで行っても「社会を存続させるためのシステム」に過ぎないのだろうか。少なくとも、著者やトロントが語るケアの倫理の視界には、壊れてしまいたいと願う「私」のような存在は含まれていないように思えてならない。 いや、ケアの倫理やそれに伴う活動を否定したいわけではない! 道徳的に生きる・生きようとすることは素晴らしいことだと思う。他者にそのような生き方を提示するのは押し付けではないし、提示されることで「そういう生き方もあるのだ」と救われることもあるし。 でもなぁ……ここまで文章を割いて説明されているにも関わらず、ケアの輪郭が私には掴めないのだ。
- さば@simesabat2026年4月13日読み終わったケアが社会の根幹なのは誰でもわかる。なのに社会やら経済の理論に組み込もうとすると途端に難解になる。これは昔ながらの(男性による)社会理論がケアを無視してきたツケなのか。
れりじおす@kwancoffee2026年3月27日読み終わったとても良くまとまっていて勉強になった。キャロル・ギリガンの影響の大きさが分かりました。 引用されている文献の幅広さ。 興味の惹かれた論者は邦訳があまりなく、歯がゆい。。- むこうやま@65yama_kana2026年1月31日読み終わった正月に読んだ本。いまさらメモ。 「(…)ケアの倫理は、異なりを抱えた存在者たちの不平等な関係性のために、個々の被傷性の程度には大きな違いが存在していることに対応するために人間社会は存在しているし、存在すべきだと考える。すなわち、わたしたち人間には、最も傷つけられやすい者たちを含めた、傷つけられやすい者たちがじっさいに傷つかないように配慮する社会的責任がある。その認識こそが、社会を構成する原理の端緒にあるはずだと考えるのだ。」 「ホッブズのようにひとが自生するかのように想定するのをやめ、むしろ、一人ひとりの生の端緒に思いを至らせてみる。すると、傷つけられやすい、環境によって左右されやすい、放置されると死に至るような脆弱な身体がある。そして、そうした身体が発するニーズを感知した者たちが、あるケア関係へと包摂されていくと想像できないだろうか。(略)ひとの端緒に傷つけられやすい身体があることから、そのニーズを満たすために社会が構成されていくと発想を転換することで、包摂を呼びかけているのは、他者に晒される身体をもつ依存する者たちであり、依存する者たちがまず社会に存在すると考えることができる。そして、このような傷つけられやすさと依存を根絶することは不可能であり、かつ理想でもない。」
TA@ta_04022026年1月31日読み終わった最近、フェミニズムの思想に関心があり、手に取る。そもそも自分自身が社会について考える時に、「ケア」の視点がほとんどなかった、あったとしても断片的なものであったと気付かされた。いかに「ケア」が人間同士の関わり、社会の活動の中で重要な役割を果たしていたとしても、その価値は政治や社会の中で無視されるか抑圧されてきた。だからこそ歪みを生んできた。そうした点を本書は指摘する。内容自体はかなり専門的で難しいと感じるが、それを超えて読む価値は圧倒的に大きい。「ケア」を視点として、どう政治や社会をつくり変えていくか、そのヒントになる一冊。おすすめ。
- nishii_books@nishii_books2026年1月4日読み終わった読書会した本フェミニズム無知な自分 最初からゴリゴリなので、なかなか噛み砕けなかった が、フェミニズムへのいろんな誤解、誤読の発見というのは、これからの思索に役立つ 己が苦痛になってくるので、やわらかい気持ちにしてくれるアイテム(お茶とか)あるといいよって囁きたい笑 黄色い本で同タイトルのケアの倫理は、読みやすいので、人を見てこの本の良さを伝えたい
TA@ta_04022025年12月31日読んでる「ケア」という言葉、最近教育業界でも聞くようになったけど、いまいち分かっていなかった。哲学の中で「ケア」をどのように位置付けていくかのギルガンとそこから派生している議論が面白いし、そもそもそうした議論があること自体、自分の不勉強のせいもあるが、新鮮。
ペリー@periperiperry2025年12月31日読み終わった非常に良かった。 個人的に「ケア」のバズワード化に疑問がある。その違和感を探りたくて同じく岩波新書の『ケアの物語』『ケアと編集』を先に読んだ。が、フェミニズム等から出てきたケアの話と、医療の臨床等から出てきたケアの話がごっちゃになってるせいか、ケアに注目することで何を批判しどんな主張をしたいのかがピンとこなくて混乱していた。 そこに本書を読んで、先に読むべきはこっちだったと後悔した。それくらい素晴らしい本。 フェミニズムの系譜からのケアの主題化を順を追って解説し、主張の内容、意義、これまでの議論を丁寧に説明してくれる。 ケアを語るなら必読。







- むこうやま@65yama_kana2025年12月14日3章まで読んだ。テキストが読者に向けて全く開かれておらず、かなり不親切。先行研究の検討がメインだが、既読なことを前提にエッセンスが凝縮されすぎているのでほとんどついていけない。岡野さんがどうこうというより、文章に介入するゆとりのない編集者による仕事なのでは……と邪推してしまう(横着せずちゃんといえばこのレベルの問題は解決できるのに)。 先に読了している家の人から「後半から面白くなるから、、」と何度も説得されて我慢して読んでる。ストレスが溜まる。


- チャモピーピーチャマ@chu_berry2025年10月5日読み始めたんで一旦こっちから読んでみますよ 市川沙央『対話でさぐる 共生の未来』において、障害者が訴えていたはずの「共生」が、健常者(マジョリティ)に奪われていることが痛烈に批判されていた。このテキストをきっかけに、言葉の横取りについて考えるようになっている。 自分はケアを提供しているのではないか、ともやもやする機会が増えた。しかしケアとは何か、自分が人に提供していると思っているものが実際何なのかはよくわかっていない。ケアの用法について現状の定義とずれがあるなら語を改める必要があるのかもしれない。




くりこ@kurikomone2025年10月3日読んでるp.94 「男性を対象にした道徳性の発達モデルにおいては、個人が置かれた文脈より、自分の考えを合理性や普遍性の入った原理に照らし合わせて明確に語ることが高く評価される」というくだりでは、一般的に男性は論理的だが女性は感情的であると言われていることと関連してるように思う。 男性が論理的に話せるというのは、この社会の文化が男性向けに作られたものであるから、その文化に付属する言語で容易に話すことができるのだ。「感情的である」と言うことはその社会の文化に属することができない豊かな言葉を持っていると言うことを示す。(ここは田中美津が『取り乱しウーマンリブ』の「取り乱す」と言うことを重要視してたこととも関連してるような。晩年田中美津が鍼灸師になったことも、男性向けに作られた社会で奪われた体を取り戻す過程なのかな)

くりこ@kurikomone2025年9月30日読み始めたずっと後手後手にしてた本。やっと図書館で借りてきた! 第一章を読む。 ラディカルフェミニストと、リベラルフェミニストの違いがいまいち分かってなかったのでそこから解説してくれるのが良い。なかなか面白い本!





いくぽぽ@ikureadsbooks2025年9月8日読み始めたようやく試験が終了し、まずは次の読書会の題材のこれ…!冒頭を少し読み始めたが、ケアの倫理って何なのか、フェミニズムとの関係性についてどんな問いや議論がなされてきたのか全然知らないな…と思いわくわくしている。試験勉強じゃない「知る」って嬉しくて楽しい〜!


Blueone@bluestuck42025年8月27日読み始めた読み始めた。自分には「ケアする」ことへの負い目(?)みたいなのがあることに気づく。独り身がいいと思っているのは、「ケアする」ことからできるだけ逃れようとしている面もある気がする。




ヒ@HikariKomiyama2025年8月20日読み終わった読書会少し前に読んだんだけど、先日8人で集まってこの本を頼りにフェミニズム読書会をした 発想を大転換させられる 具体的にどのようにケアしていくのか、どのようにケアを社会の中心に据えるのかというのはとても難しい話で 今のところはっきりと答えがでないけれど、希望の持てる話で読んでよかったなと思う(ほんとーーーーーにわたしには難しくて、特に一回めは苦しみながら読みました) それより、結局ケアとはなんなのか? ある差別を解決しようとすることは、自動的に他の差別をなくすことの助けにもなると思う 細くとも長くやるぞ〜




冷やしトマト@tomato_hiehie2025年6月5日読み終わった子育て, 介護, 不可避の依存関係のケアを担うことの意義とは。家庭内の女性に押し付けられてきた歴史背景から《ケアの倫理》を紐解いていく。個人ではなく, 関係性の中に生きるということ。社会を別軸から見るための手引きになる一冊。


さおり@prn9909082025年5月23日読み終わったバイアスは誰にでもあり無意識のバイアスにはかなり気付きにくいということ.(それはきっとわたしにもある)それを顕在化されることがとても大事なことなんだなと思った.ケアと政治が深く関係していることもこの本を読んで初めて知った.多岐にわたる内容で理解が足りてないところもあるからこれからまた色んな本を読んでまたこの本にもどってきたときに「そういうことか〜!」と思えるようになりたい.





























































