あなたの名

11件の記録
- オレンジ色@orange2025年9月14日読み終わった遠回りせず、近道せず、目の前を通り過ぎていよう。目が会っのならアイコンタクトしていよう。自分のことも、お互いのことも、邪魔にならず、邪魔せずにいよう。飾らない、そっけないほがらかさでいるねって思う。何かで埋め合わせしなくても、次の時、満たされた気持ちで会うよって思う。
- もん@_mom_n2025年9月7日読み終わった心に残る一節@ 図書館私は小池水音さんのことを「静謐」という言葉が最も似合う作家だと思っている。透明で清らかで水のような文章に、何度読んでも心を洗われるような心地になる。 小池さんの作品は『息』も『あのころの僕は』も読んだが、内容はもちろんのこと文体や作品全体の空気感がたまらなく好きで、本作もやっぱり好きだった。性描写も絵画のような美しさだった。 * 名前は親から子どもへの最初のプレゼントだと言われたりするが、私はプレゼントというより呪いだと思っている。こういう風に育ってほしいという呪い。 私の名前は何の願いもなく画数も気にせず他の名前と迷うこともなくインスピレーションで即決したらしい。"自分の名前の由来を聞いてみよう"という宿題が出された小学生の頃に、親からそう告げられた。まだピュアだった当時の自分はその事実を悲しく思ったけれど、今ではむしろそれが気に入っている。 とても美しい作品を読みながらそんなひねくれたことを考えてしまう自分が虚しい。 p.13 恭しく骨を壺に収めてゆき、ちいさな箒をつかい欠片を集めていった。そのとき、銀色の台の端に細かな欠片が取り残されているのがみえた。あ、と声にならない息が漏れたときには、係員は骨壷の蓋を閉じていた。母は永遠にすこし欠けたまま、墓の下に残りつづけるのだとおもった。 p.26 生まれもった姿とはちがい、名前は常に誰かがあとから与えたものだった。そうして与えられた名前が生涯にわたり杭として立ち、そのひとの経験するすべての出来事が、そこに結びつけられてゆく。 p.36 瑞々しい甘みが舌に、頬に、喉の奥に、さらには首の裏側あたりまで沁みてゆき、そこここでちいさく破裂するみたいに感じた。安らかな重みが胃袋を満たした。 p.75 彼の肌のあまりの熱さに驚く。しかし、これほどの熱もまた、所詮は皮膚をとおしてあらわれているかりそめの温度なのだとあるとに気づく。本当の熱は皮膚の奥、最も深い場所に埋まっている。そうとわかると、こうして肌を触れ合わせているのでは間に合わないとわたしはおもう。夜の雪原で遠くに灯る篝火をみつけたみたいに、そのほかのことはもう意味を持たなくなる。
- 紙村@kamimura_2025年8月25日読み終わった余命わずかな継母が、娘に頼まれてAIを使って自分の姿を記録しようとする。話しているうちにある林の情景が浮かび上がってくるが、それは痛みの記憶でもあって……。文章が美しい。死が近づいている母と、その言葉を遺そうとする娘という関係に興味を持って、語ることの力みたいなものに共鳴しつつ読んだ。文章が美しい、って二回書いてしまうくらい透明感あって好きだ。二編目の短編も、過去を語ることの痛みの話、こちらもとてもいい。小池さん、もう何作か読んでみよう
- ryo@mybook122222025年8月18日読み終わった疼く傷が癒えてゆくのか、 抉られてゆくのか、 その感覚すらも曖味になりながら、 それでも喪失を描き続ける小池さん自身の、 祈りが、 願いが、 美しい色彩となり、 音となるようだった、 数多の喪失の先に佇むその音の響きが、 あまりにもうつくしかった