
い。
@hon_i_read
読書の記録です
SF、詩集、人文が多め
でも何でも読みます
- 2026年4月12日
悪魔の涎・追い求める男 他八篇コルタサル,木村榮一読み終わった現実と幻想の入り交じる短編集でどの作品もとても面白かった 特に「南部高速道路」は、パリへ向かう高速道路の大渋滞で全く進まず何ヶ月も高速道路上にいる人たちの群像劇が、ヌーヴォーロマン的な淡々とした物語として描かれていて一番惹かれた 他にもミケランジェロ・アントニオーニの「欲望」の元になった「悪魔の涎」等 現実と幻想だけではなく、様々なボーダーラインが曖昧に美しく描かれている - 2026年4月7日
信頼ニクラス・ルーマン,大庭健,正村俊之読み終わった信頼とは、複雑性の縮小をしてリスクを取りながらそれでも無根拠に何かを信頼することで、それによって社会的な約束事が成り立っていて、 信頼と不信は二項対立ではなく、不信を信頼するという意味で同義であり、都度信頼と不信の選択をしている、という、ルーマンの定義する信頼の重要性の本 まだオートポイエーシスやサイバネティックスといった社会システム理論が確立されていないときの著書で、 そのシステム内部で起きていることはまだ曖昧な記述が多く、未完成な部分もあるように思えたけれど、それでも信頼というモチベーターの定義が明解で、ここから社会システム理論に発展していくことというプロセスが少しだけ分かった気がした - 2026年3月30日
吸血鬼遠野遥読み終わった今回も管理社会的なディストピアという設定で、女性は男性の所有物として14歳を越えると一方的に結婚を決められる社会が舞台 主人公たちは自分の思うことはあっても基本的には社会構造の中での自分の立場を遵守する立ち回りをしている 意志が無い、というのではなく、合理性を感情よりも重視している、という方が近いと思う 感情よりもシステムで回っている社会の中で、自分の納得と他者からの見え方のバランスを取り生きていく主人公たち 現実にはこのような社会は否定されなければいけないけれど、感情的ではない、淡々としたコミュニケーションがとても儀式的で美しかった。 - 2026年3月26日
鹽津城飛浩隆読み終わったどの短編もとても美しくて、複数の有り得る可能性のある世界が同時に進行していく中・短編集 平行世界、というよりは量子論の観測前の状態を観測しているような小説で、相矛盾する世界が広がっている 特に冒頭の「未の木」がとても良かった 芥川ではないが真実は藪の中 それがとても美しい - 2026年3月23日
日の名残りカズオ・イシグロ,土屋政雄読み終わった由緒ある屋敷に使える執事スティーブンスは旅をしながら、屋敷での過去の出来事を回顧している そして旅の先々な出来事にも想いを馳せる 執事の「品格」とは何かを問い、過去の自分の仕事や生き方を確認しながら肯定していくけれど、本当に彼は自分の生き方が正しかったと思っているのか疑わしい 過去の自負と選択しなかったことへの後悔、自分の為に生きなかった人生を問い直す 昔読んだかもしれないが、改めて読み直すととてもよい小説だった - 2026年3月21日
懐炉森本孝徳読み終わったいままでの詩集に較べて格段に言葉が分かりやすい それなのに意味は朧気に現れてすぐにどこかへ消えていってしまう 分かりそうなのに分からないし、届きそうなのに逃げていく情景と言葉が、懐かしさという感覚だけをはっきりと残していく 有り得べき過去の断片を懐に入れて体を暖める懐炉、のような詩集でこれなら何度も読むと思う そしてそのたびに、言葉ではなく直接感覚として熱情を感じるのだと思う 詩人本人も言うように「熱情を求める者は、行動しないために詩人になる。」 森本孝徳さんのnoteにこの新詩集のことが書かれていて、「懐炉」というタイトルの発想がブランショの文章を引用して説明されている - 2026年3月20日
コクトーの食卓ジャン・コクトー,レーモン・オリヴェ,辻邦生読み終わった名シェフがコクトーの為に作った料理のレシピ集 とはいえ、食材は海亀だったり山鳥だったり、調理器具も特殊なものが多く、手の込んだ料理が多い その為純粋なレシピ集として参考になるかと言われればほとんど参考にならないけれど、シェフから見たコクトーや隣人の作家コレットとのエピソードや、食材に関する目線がとても鮮やかで読んでいて楽しい本だった - 2026年3月19日
- 2026年3月19日
時の果てのフェブラリー山本弘読み終わった山本弘のオリジナル長編第1作「時の果てのフェブラリー」は、ハードSF×美少女、というとても山本弘らしい作品で、戦闘シーンの鮮やかさ等、のちの山本弘らしさが詰まっていてとても魅力的だった その続編「宇宙の中心のウェンズデイ」は残念ながら未完に終わってしまっているけれど、これはもう壮大なスペースオペラ的なエンターテインメントの序章なのは間違いないといった感じがした 未完に終わっているのが残念だけれど、フェブラリーとは全く違う面白さに溢れていた 山本弘は最初から面白かったのだと改めて思った - 2026年3月16日
シンデレラの罠セバスティアン・ジャプリゾ,平岡敦読み終わった火事により記憶喪失になり外見も変わり果てた主人公が自分は誰なのか、を辿るサスペンスの名作 昔読んだ覚えがあったけれど全く覚えていなかったので楽しく読めた 記憶と外見を失ったとき、アイデンティティはどこにあるのか、ということを考えさせられる - 2026年3月15日
聖-歌章稲川方人読み終わったいつかは読もうと思っていた稲川方人 詩で世界を変える、とか、詩で革命を起こす、というような、言葉の力を信じている時代の詩人だと思った 過去も現在も未来も愛しながら憎んでいて、或いは憎みながら愛していて、郷愁と絶望のような、背反する思いがとても強い意思をもって紡がれている 思想的なことを語る詩はあまり好みではないけれど、言葉の鮮やかさや強さは凄まじく、たまにはこういう強い詩も良いと思った - 2026年3月14日
氷見敦子全詩集氷見敦子読み終わった初期の詩はあまりにも自分から見える狭い世界の詩が多すぎて読むのに苦労した 段々と外の世界に視点が開かれていくと、この詩人のイメージに頻出する言葉が見えてくる 男 女 夢 蝶 宇宙 病院 変態していく身体 等 この詩人の幻視によって、日常の風景が悪夢に直結し、人を見つめれば宇宙に直結していく それは、自分が宇宙に開かれていくのでも悪夢を見るのでもなく、自分の内部に宇宙や悪夢を取り込んでいるとても閉じられた世界で、どこまでも個人の中に広がりが押し込められていく とても切実に、不確かな自己に触れる為に詩を書いていたのかもしれない 30歳で逝去しているけれど、特に死の直前の没後詩集が良かった - 2026年3月14日
詩集工都松本圭二読み終わった全編、人の気配がとても希薄で、誰かが目に見えたもの考えたことをただ独白しているような空虚さがある 浮かぶ映像はどこかディストピアのような近未来のように思える とてもドライで切実な詩ばかりだと思って読み進めていると、急に感傷的でうつくしい言葉にであったりもする よい詩集だった - 2026年3月13日
- 2026年3月13日
フロスト詩集川本皓嗣読み終わったフロストの詩の印象は自然賛歌といった雰囲気だったけれど、改めて的な読んでみると自然賛歌的な詩ではなく、自然と人間の対峙、恐れや暗さに満ちていた 原文がとてもシンプルで韻を踏んだリズムが心地よい 平易な英語なので、原詩を読み、対訳を補助的に読むとよりよいと思った - 2026年3月13日
暗い鏡の中にヘレン・マクロイ,駒月雅子読み終わった古き良き幻想ミステリ キーワードがそんなところにあったのかという意外性もあるけれど、ある超常現象的な出来事を物理的な出来事として解決させる謎解きが古典ミステリという雰囲気でよかった - 2026年3月12日
日常的実践のポイエティークミシェル・ド・セルトー,山田登世子読み終わった都市空間を歩行するなどの日常的な振る舞いを、メタ言語であり発話行為として捉え直し、受動的な消費者である庶民に言語空間における独自の生産性を付与する試み 単なる移動としての歩行や、記号としての言語といった既存の意味を解体・再定義することで、管理された都市という目に見える価値の背後に、名もなき実践の豊かさという目に見えにくい価値を記述して、難解な概念と日常を接続させる面白い本だった - 2026年3月8日
ブロッコリー・レボリューション岡田利規読み終わった一人称で書かれた短編集 実際には見えない他者の出来事も一人称視点から書かれている これが単純に自分と他者の境界線の曖昧さ等を表しているとは思わないし、実験小説のようでも無く、自然に流れていく 表題作「ブロッコリーレボリューション」は更に、語り手の「僕」が語る「あなた」の話で出来事が明瞭に立ち上がり、そしてその出来事の曖昧さがとても美しった - 2026年3月1日
彼の奥さんエマニュエル・ベルナイム,Emmanu`ele Bernheim,堀茂樹読み終わった全く感情移入をせずに、見えているものを描写していくような文章で語られるひとりの女性の恋 あまりにも客観的で、自分が創造した登場人物であるにも関わらず、外側から観察しているようなドライさ ひとつひとつの場面は、たくさんあるスナップショットの一部のようで、前後の時間から切り取られ、最小限の説明が添えられている それ故に、主人公の女性が、作者からも小説からも独立して歩いているような、強い小説だった - 2026年3月1日
ルーマン社会システム理論アルミン・ナセヒ,ゲオルク・クニール読み終わったルーマンの社会システム理論の大枠がかなり分かりやすく書かれている システムというものがどういうもので、社会システムと心的システムの明らかな差、そしてその間でおきる孤立系同士の構造的カップリング等、どの説明も分かりやすく、システムで起きるサイバネティックスやオートポイエーシスも理解しやすい ルーマン独特の、人間の感情的な部分を排除した、コミュニケートするのはコミュニケートそれ自体である、というやや冷徹にも見える考え方もとても論理的で美しいと思った 難解だと言われているルーマンの著作を読む準備としてとてもわかりやすい本だったので、今後ルーマンを少し読んでみようと思っています
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