群像 2026年 6月号

14件の記録
Rica@rica_bibliotheca2026年6月25日読み終わった図書館本「小説を読む、文学を読む、詩を読むなら、なおさらのこと、一語一語、一行一行読むことだ、具体性にこだわる、具体性から常に離れないことだ....」(『鉄の胡蝶は...』より)
𓂋⟢˖⊹ ࣪@nmccormick2026年6月10日読み終わった冬島いのり「夏蚕の翅」 すばらしすぎるだろ!あしたも生きよう!となれる小説なので、つらいときにその都度ラストを読もうと思う ねえさんの口腔へ差し入れる僕の右手の、手首の傷が開き、血が伝いました。便器を流れる吐物には、血と胃液とが混ざり合い、桃の香りが残っていました。ねえさんが涙を流しながら言いました。 「壊れた精神はどうしたら直るの?金継ぎでもすれば見栄えするようになるのかしら。そもそも初めから金継ぎされるために砕かれていたのならば?そうだとして、修復がきかないくらい粉々になってしまっていたなら、どうしたらいいのかしら。ね、紫蘭」 うつくしいねえさん。苦しみを濾過する機構が壊れているねえさん。ねえさんがものを吐き出して繭をつくるとき、僕はそれを見ていることしかできませんでした。 この家にかみさまは居ませんでした。 ねえさんは頭をもたげて、僕を睨みました。 「大丈夫って言って頂戴」 窓枠の前で、晶さんからもらった花が凛と背を伸ばしていました。この家には似つかわしくない鮮やかさだ、と思いました。僕はつぶやきました。 「だいじょうぶだよ」 「大丈夫になりたい」 「大丈夫だよ、全部。どんなことも、大丈夫。晶さんが結婚しても、大丈夫」 僕にはこのような、燃え上がる火先に水滴をかけるような言葉が、ねえさんの気慰みになるとはとても思えませんでした。なにやら気の遠くなるように感じられました。ねえさんはもっと確かなものを支えにした方がいいのにと、そう思いました。 「僕ね、教会に通うようになってから、祈り方を学んでるよ。祈りは、叶えられるかではなく、聞かれていると信じることそのもの。神様は沈黙ではなく傾晒している。そして、僕たちは恩寵を求めてはいけないの。僕はいつも、あなたの最善を祈っている」 白い指が、僕の目元へ伸びてきました。指は、瞼にそってなめらかに滑りました。柔らかで冷たい接触でした。 「ねえさんは、死ぬために生きるんじゃなくて、生きるために生きようとしなければならないよ。気高いあなただから。死ぬことよりおつかしい方を死ぬまで選んで。制き出しの魂に傷がつくことを恐れていても、あなたに信じるものがいる。生を裏打ちする信仰がもうすでに与えられてる」 ねえさんの、ひかりを湛えるかんばせを見つめました。 冬島さん、受賞コメントもかっこいい わたしは、他者を祝福したくて小説を書いています。 祝福と呼んでいても、それはむつかしい話ではありません。 一緒に年をとりませんか、という願いです。 年をとるということは、生きていなければできない仕草です。 わたしは、あなたが自分自身を祝福し、また、自殺から遠ざかり、生きてゆくように、と思っています。 そして、ときどき、遠いところにいるあなたのことを思ったり、あなたはわたしを忘れたり、なんでもないことを愛おしく思いながら、互いに暮らしをやっていきましょう。 あなたには、自身がよりよい影響を与えられる者であり、祝福され、他者を愛しうる存在であることを自ずから知る力がある、ということを言いたいのだと思います。 もちろん、わたしがまなざしたいと願っている『他者』は、わたしが内面化してきたわたし自身に他ならず、想像上の『あなた』とは、想像の範疇を超えることをしません。 しかし、だからこそ、今回の受賞をありがたく思っています。 なぜなら、わたしの生きる仕草では、とても、とても及ばないほど遠くにいる、他でもないあなたに語りかけることができるからです。 もはやわたしのものではない小説が、あなたの生存によりよく用いられるよう願っています。
時間のかかる読書人@yoko452026年6月4日ちょっと開いた@ 板橋区立成増図書館書き手としてわたしが興味を持っているのは、人間の悪性によって起こる悪しきことよりもむしろ、善性によって起こる悪しきことのほうだ。というと因果関係が逆で、善性をおそろしく、うとましく思ってきたから、書くことに行き着いたというほうが近い。相手が向けてくるのがあきらかな悪意だけであったなら、抗議をしてもう付きあわないという選択をしてもたいした労力はいらないけれど、SNSじゃあるまいし、日常のなかにあきらかな悪意というものはあんまり出てこない。悪意はいつも見せかけの、あるいは本物の好意と分かちがたくからまっていて、わたしたちをがんじがらめにするのだ。だから、書くことや、詩を読むことが、あなたの言う「非日常」という形で、しかしむしろ日常の本当の姿に肉薄して、抗議ではない抗議として、わたしの助けになってきた。そして、それがただわたし個人が生き延びる手段というのではなく、現実じたいが現実を克服する手段になればいい、と思ってきた。
ツナサンド@mor_1024302026年5月25日読み終わった◯夏蚕の翅 / 冬島いのり 『僕らの一挙手一投足は社会の一部であり、僕らの肉体は土地に結びついています。』 言った 『その投げ出された四肢を花と勘違いした蝶が飛んできて、ひたり、と止まりました。』 見たい 『僕にはこのような、燃え上がる火先に水滴をかけるような言葉が、ねえさんの気慰みになるとはとても思えませんでした。』 焼け石に水 という感じでもないもんな 『「わたしが砕かれたら、おまえ、わたしのことを拾うのよ。ばらざらになった骨と血肉とを必死で寄せ集めて、肉塊になったわたしを笑いなさい」』 どこまでも甘えているなあ 信頼がすごい 『「ちゃう。ええか、とおく、とおーくに、石を投げるやろ。ひかりとしてもええ。その石ころやひかりにむかって長い長い、やわらかい信頼を置く。おれはそれって愛やんかと思う。信頼ちゅうのは信用とちゃうくて、なんの保証がなくても信じてやれること、自分の大切なものがなくなるかも知らんと、それでも分の悪い賭けを、自分以外のためにすること」』 『「輝かしく切り取る術が発達するほどに、わたしたちはむなしくまずしくなってゆくね」』 『わたしが見るかぎり、セツさんとウパシルさんはそのようにして信教に関する言い合いを繰り返していたが、特に解決するわけでも決着をつけるわけでもなく、最終的には、いつも互いの紅茶に砂糖を入れてやり、それで終わるのだった。』 すてき 言い方もね



ツナサンド@mor_1024302026年5月23日読み終わった◯骨と鎖 / 永田修矢 『目の奥に光のある老人にしか出せない、ひらがなの一音一音を噛み砕くようなにこやかな声だった。』 目の奥に光のある老人だ とか思う小学生いやすぎるか 『日差しで顔を赤くした二人の小学生が体を揺らしながらお揃いの自転車を漕ぐ姿を見て、その健気さで穏やかな気持ちになる人間がいるということが、陸には理解できない。』 陸、才能アリ 『インターホンのカメラレンズを保護する透明のプラスチックに車の青が歪曲して映っている。』 たしかに! あそこいろんなもの映る 『汰月は知らない人間を、例えるなら知らない植物の種子のように可能性の起点として捉えているが、陸はその種子の名を知らないことを罪だと思っているし、知ろうとすることに資格が要ると思っている。』 『自転車が焦燥を牽引する音がキイキイ鳴る。』 焦燥が自転車を牽引する場合のほうが多いだろうから、おもしろい 『体を動かしていないのに猛スピードで移動しているような感覚があった。静的で、無から湧いた加速だ。』 『高い波がでこぼこの海面を低速で移動している。』 波が海面を移動している と思ったことない 『僕は服を着るみたいに何かをしてしまうんだよ、でも着る服を選ぶってすごく気持ち悪くない?』 マジでそんなことねえからよ






