犬のかたちをしているもの

32件の記録
- なし@nashi2025年5月8日読み終わった身体と・性、地元、仕事、老いと生。 いろんな切り口がある作品でした。 「子どもがほしいのと、子どもがいる人生がほしいのは、同じことだって思う?」(pp.71) わたしは、子どもを作って育てて産むことは、全部女だけのもので、どこにも男が明け渡す部分はないように感じていたけど、産み落として外に出してしまうと、男が関わってくるのだった。郁也はフィクションみたいだった。俺たちの子どもになる子だよ。名前、一緒に考えよう。そこにはなんのリアルもない。血を出したことがない人間の発想だと思った。(pp.135) 自分の我慢したもの、自分の血肉からできたもの自分の払った犠牲や時間やいろいろなものを考えた時に、私に子どもをあげるのは、割に合わないと思った?···産んだ人にだけ分かることが、多分あるんだろう。でもそうだとしたら、わたしや郁也には一生かかったって分からない。(pp.137-138) 育った田舎のすこし嫌な部分(噂がすぐ広まること)は、わかると頭がもげそうになるぐらい頷いていた。
- 蛸足配線@nekoai302025年3月24日読み終わった郁也を引き留めたい気持ちからか、彼に内緒で薬をやめ性交に挑む主人公は、決してロクジロウを愛するようには彼を愛していないように思える。だからこそ、犬を慈しむように愛したいと願うのか。「おれがいないと生きていけない」薫を手元に置こうとする郁也の執着もまた、「犬のかたち」のものに向けられる感情ではないだろう。不首尾に終わった行為のあと背中に残る熱は、「北見さんのお父さん」に一方的に触れられたときと同じく他人から発せられたものだ。男の体しか持たない郁也は、紛れもなく当事者であるにもかかわらず、妊娠や出産に対してはどこか他人事のようで、意思のない人形のようにミナシロと結婚しながらも薫との同棲をずるずると続けている。
- 猫@mao10122025年3月8日かつて読んだ淡白で、リアリズムな文章。赤ちゃんより犬の方が可愛いくて、性行為はあまりしたくない。 『赤ちゃんより犬の方が可愛い』と綴れてしまう、著者の他者に言えないグロテスクな部分を的確に突ける言語化能力には恐慄く。赤ちゃんのかたちをしているよりも、犬のかたちをしている方がかわいいという皮肉。ラストの展開には驚いて声が漏れた笑!人間の身勝手さとグロさが存分に詰まっている。
- nessie@nessieayako2025年3月1日かつて読んだ主人公の女性の犬と人間の赤ちゃんに対する気持ちと比較的似た思いを持っている者として、スっと拾い上げてもらったような読後感。文の構造はとても読みやすくするっと喉をつたってくるのに、どう消化しようかとても迷う話でもある。でもそれがすき。
- 白川みどり@midorishi_2025年2月9日読み終わった愛するとは。その問いに対しての、私の結論と主人公 薫の結論はとても近い。セックスに対して、抱いてしまうものも。だから薫に対して感情移入したし、頁をめくりながら一緒に傷付いて、葛藤して悩んで、放り出された。「子供がほしいのと、子供がいる人生がほしいのは、同じことだって思う?」という問いを残して。薫に共感しながら、同時に郁也やミナシロさんの言っていることも分かるな、と思った。分かるなというか、彼らの選択は彼らのものだと受け入れている自分がいたし、彼らの選択に対して納得していた。この小説の容赦のなさに、傷つく人と救われる人がきっと同じだけいるんだろうなと思う。ひりひりとした、本当のこと。