街とその不確かな壁
56件の記録
- 綾鷹@ayataka2025年11月3日・淋しいひとりぼっちの夏だった。ぼくは暗い階段を降り続ける。階段は限りなく続いている。 そろそろ地球の中心まで達したんじゃないか、という気がするくらい。でもぼくはかまわずどんどん下降していく。まわりで空気の密度や重力が徐々に変化していくのがわかる。しかしそれがどうしたというのだ?たかが空気じゃないか。たかが重力じゃないか。 そのようにして、ぼくは更に孤独になる。 ・からっぽの部分を何かで充たしておく必要があるから、周りにある目についたものでとりあえず埋めていっただけだ。空気を吸い込む必要があるから、人は眠りながらも無意識のうちに呼吸を続ける。それと同じことだ。 ・子易さんは自分という存在の意味がうまく把握できなくなっていたが、そんなことはもうどうでもいいように思えた。自分は親からひとまとまりの情報を受けぎ、そこに自分なりに若干の変更加筆を施したものを、また自分の子供に伝達していくー結局のところ単なる一介の通過点に過ぎないのだ。延々と継続していく長い鎖の輪っかのひとつに過ぎないのだ。でもそれでいいではないか。たとえ自分がこの人生で意味あること、語るに足ることをなし得なかったとしても、それがどうしたというのだ? 自分はこうして何かしらの可能性ーそれがただの可能性に過ぎないとしてもーを子供に申し送ることができるのだ。それだけでも自分が今まで生きたことの意味があるのではないか。 ・孤独とはまことに厳しくつらいものです。生きておっても死んでしまっても、その身を削る厳しさ、つらさにはなんら変わりありません。しかしそれでもなおわたくしには、かつて誰かを心から愛したという、強く鮮やかな記憶が残っております。その感触は両の手のひらにしっかり染みついて残っております。そしてその温かみがあるとないとでは、死後の魂のありかたにも大きな違いが出てくるのです ・閲覧室のいつもと同じ窓際の席に陣取り、そこで脇目も振らず本を読んでいた。その姿は、満開の花の蜜を一滴残らず飲み干そうとしている蝶の姿を私に思い起こさせた。 それは花にとっても蝶にとっても、互いに有益な行為なのだ。蝶は栄養を得て、花は交配を助けてもらう。共存共栄、誰も傷つかない。それは読書という行為の優れた点のひとつだ。 ・「孤独が好きな人なんていないよ。たぶんどこにも」と私は言った。「みんな何かを、誰かを求めているんだ。求め方が少しずつ違うだけで」 ・「あなたのものになりたい」とその少女は言った。「何もかもぜんぶ、あなたのものになりたいと思う。隅から隅まであなたのものになりたい。あなたとひとつになりたい。ほんとうよ」 ・真実というのはひとつの定まった静止の中にではなく、不断の移行=移動する相の中にある。それが物語というものの神髄ではあるまいか。僕はそのように考えているのだが。
もち@noro_302025年9月10日読み終わった"でもそれは起こったのです。 風のない朝、晴れた空から なにかきれいなものが ひらひらと舞い降りてくるみたいに。" ひと夏かけて読んだ。 静かな空気、綺麗な風景が 心にじんわり広がってくる。 全体に漂う不安定な感じも 不思議と落ち着く。


みなと@minato_nozomu2025年8月20日読み終わった"本体と影とは、状況に応じて役割を入れ替えたりもします。そうすることによって人は苦境を乗り越え、生き延びていけるのです。何かをなぞることも、何かのふりをすることもときには大事なことかもしれません。気になさることはありません。なんといっても、今ここにいるあなたが、あなた自身なのですから" めっちゃ良かった……長い傷の回復の物語。


Hideyuki Kato@orangejuce_16182025年7月31日読み終わったやっと読み終わった ものすごく時間かかった(読みにくさを感じた) あのくらいのスケールでやるなら同じぐらいのボリュームの下巻があってもいいと思う 第三章があっさり- 本読みたい@tpfish2025年7月7日読み終わった『街とその不確かな壁』は、久しぶりに手にした村上春樹作品。その文体は相変わらず好みが分かれるかもしれませんが、気がつけばどんどんページをめくっていました。 作品全体を通して流れているのは、どこか静かで澄んだ空気感。不思議で、曖昧で、でもなぜか心地よい。その世界に浸っている時間があまりにも気持ちよくて、読み終えるのが少し寂しくなるような読書体験でした。 そして村上作品ではおなじみの、「ちょっとした料理とお酒」の描写も健在。今回は冷えたシャブリが登場し、まんまと飲みたくなって買ってしまいました。何気ない食事のシーンが、登場人物の静かな感情や空気をふわっと引き立ててくれるのも、春樹ワールドの魅力のひとつです。 現実と幻想のあいだをゆったりと漂いながら、「心の深い場所で何かが動く」そんな読書体験を味わえる一冊。春樹作品を久々に読みたい人にも、初めて手に取る人にもおすすめです。

Maple@Maple2025年5月11日読み終わった何回も読み返してる@ 自宅家族が読んでくれたので、好きな部分を再読。子易さんのでてくるところを。大変なことが起こっても、子易さんみたいに生きればいいんだねとか話した。- 月蟹@mooomnnm132025年4月23日読み始めた文庫化されたと聞いて、そういえば買ったまま読んでなかったなと思い出して自宅の積読コーナーから引っ張ってきた 世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランドの世界観が好きで、この作品も似たような世界の話みたいだから読み進めていくのが楽しみ

ヨル@yoru_no_hon2024年3月15日2024年ベスト本生きていくことは辛くて長い旅時でもある。知らぬ間に生を受け、自分として生きていくことを余儀なくされる。生きているのか、死んでいるのか、よくわからないような世界で、何を信じ何を希望とし生きていくのか...。迷い、彷徨い、地中深くまで潜った時、そこから見えてくるものがきっとある、そこからしか見えてこないものもきっとあるのだと、わたしはそう信じたい。と前に感想でこう書いたが、今読んだらどうこ思うのか......読んたのがだいぶ前だったから、あんまり内容を覚えていないのだけど、今思うとわたしも、現実と本の話しを行き来して、その境がわからなくなったような感覚になっていた。村上春樹に初挑戦した年だった。『世界のおわりとハードボイルドワンダーランド』とセットで読めたことば、わたしの読書生活でとても大きなことだったと思う。これからも村上春樹を読んでいくだろう。そのきっかけをくれた読書仲間のみんなに感謝!!











































