行きつけの図書館分館で旅の本コーナーに面出しされていて手に取った。淡々とした滑らかな文体に慣れてくると、肌ざわりのよい布にくるまっているような心地よさ。前半までの印象を後半よい意味で裏切られ、予想外のところまで連れて行かれた感。ふしぎな小説でした。そしてブックデザインが秀逸でしみじみうっとり。

『死んでいない者』がとても良かったので、続けてこちらを読んでみたが、途中でギブアップしかけた。 日常の断片、料理のレシピがつらつらと続く連作のspicyさが、いつspikyに転じるのか期待しながら読み進めるも、忍耐と感受性を試されるような読書体験。 だが、最後の「レイニーブルー」で空港の場面に差し掛かり、「昂っているぜ」という感情の翻訳が“I’m crazy”と表示され、それを隣にいた白人男性が目にして驚く――この瞬間が一番面白かった。 言葉のズレが、文化のズレ、感情のズレ、そして語り手自身の「ズレた存在感」を浮かび上がらせる。 窓目照り焼き、グッドラック。

窓目くんの手記が全部いいのだけど、特にアッパがスリランカ料理を作る際の手際の描写が目に浮かぶようで好きだった。そして好きな人が一番よく見える距離について。

カレーラーメンじゃなくてラーメンカレー

滝口さんの迸る文章に浸る、贅沢な時間だった。 切なくておかしくて愛おしい☺️