

くらな
@3bus_0830
いまでもあなたはわたしの光
- 2026年10月8日
白骨花図鑑甘糟幸子読み終わった滑川ぞいの古い借家へ越してきた友人に、名前のわからない花が咲きだした、細長い葉をつけた身の丈ほどの茎の先に薄紫色の花がいくつも咲く、と聞いて安井が訪ねてみる気になったのは亡くなった父の診療所にあった花に違いない、と思ったからだった。 - 2026年10月6日
- 2026年10月4日
五月の雪クセニヤ・メルニク,小川高義借りてきた読み終わった目を細くすると、半ば閉じた目に映るのは、白いカリフォルニアの砂ではなく、白いマガダンの雪山だ。若かった春の日々にスキーをすれば、舞い上がって飛び出していけそうな、新しい恋の始まりにも似た気分がした。いまも思い出せば楽しくなる。だが、まったく一人になって考えるのでもなければ、記憶の編集は働かない。そんなとき記憶は、常に積み上がる乱雑な日々を遠慮もなく削ぎ落とし、どうにか耐えられる物語だけを切り出してくれる。 - 2026年9月29日
戦争と哲学岡本裕一朗読み終わった[第6章 革命のための戦争]のバブーフ、バクーニンとマルクスのつながりは誤りではないが飛躍が大きい。マルクス批判を成立させるために複雑な関係を一本のわかりやすい因果関係で結んでおり、たどり着きたい結論ありきで論証に至っていないと感じる。また、同一趣旨の言説が、表現上の差異をほとんど伴わないまま連続して提示されるため論旨の展開が判然とせず、読んでいて混乱した。著者というより編集マターだと思うが仕事をまっとうしてほしい。 - 2026年9月25日
原子力時代における哲学國分功一郎借りてきた読み終わった脱原発を可能にし、人びとを脱原発の方向に向けて説得するドクトリンを造るこおは、政治的には大切です。(中略)しかしそれさ広い意味での政治の仕事です。原子力時代における哲学に哲学としてやらねばならないことがあるとすれば、それはこの政治の仕事に留まるものであってはならないはずです。哲学として考え抜かねばならないことがあるはずです。(p.268) なぜ我々は原子力をこれほどまでに使いたいと願って来たのかという問題です。言い換えれば、なぜ我々はこれほどまでに原子力に惹かれるのか。この気持ちの理由にまで到達しなければ、真の脱原発にはならない。(p.268) - 2026年9月24日
新版 集中講義!日本の現代思想仲正昌樹読み終わった一時期流行った「現代思想」という言葉を、ある程度実体があるように定義すれば、自由に思考することを妨げる「外部」とは何なのか明らかにすることを目指す一連の試み、ということになるだろう。マルクス主義がブルジョワジーというわかりやすい「敵」との闘いに集中していたのに対し、いや、そんなに単純な話ではないだろう、あなたたちが「敵」と思っている人間を倒したらそれで終わりだと本当に思っているのか、彼らはどうしてそういう行動をするのかちゃんと考えたのか、単に金銭や権力のためにやっているのか、仮にそうだとして、人が金や権力に引き付けられるのはどうしてか……というように、問いを深め、あるいはひっかき回し、「外部」をめぐる哲学、文芸・美術批評、社会学、経済学、文化人類学、精神分析、場合によっては数学基礎論や論理学を動員した思考を展開するのが現代思想だった。 - 2026年9月22日
軍民両用化する技術大庭弘継読み終わった防衛装備庁の助成制度の開始を受けて、日本学術会議は、2016年から検討を始め、2017年に「軍事的安全保障研究に関する声明」を出しました。この声明は、「軍事的な手段による国家の安全保障にかかわる研究が、学問の自由及び学術の健全な発展と緊張関係にある」と指摘しています。そのうえで、「研究の入り口で研究資金の出所等に関する慎重な判断」が必要だとして、大学には「軍事的安全保障と見なされる可能性のある研究」を「審査する制度を設けるべき」とし、また学協会なども「ガイドライン等を設定することも求められる」と提言しました。 - 2026年9月21日
島とクジラと女をめぐる断片アントニオ・タブッキ,須賀敦子読み終わった再読それでも、指のあいだには、まだ、たばこの残り火がきらめいている。帆が風をはらんで不吉な音を立てる。眠りこけて、ただの黒いかたまりに成りはてた不動の肉体を乗せた船は、海面を幽霊船みたいに滑って行く。 - 2026年9月16日
- 2026年9月15日
見えない都市イタロ・カルヴィーノ,米川良夫読み終わった再読生ある者の地獄とは未来における何ごとかではございません、もしも地獄が一つでも存在するものでございますなら、それはすでに今ここに存在しているもの、われわれが毎日そこに住んでおり、またわれわれがともにいることによって形づくっているこの地獄でございます。 - 2026年9月9日
タンノイのエジンバラ長嶋有読み終わった自分でも信じられないほどの大きな声で叫んだ。声が出尽くすと、また息を吸って、金切り声をだした。声を振り絞ると体がびりびりと震えるのが分かった。手をにぎられて、目と耳が熱くなった瞬間に似ていると思った。はずみで目から涙がぽろぽろと出てきたが、気にせずに叫んだ。悲しいのだから、涙は出てもいいのだ、と秋子は思った。 - 2026年9月8日
三の隣は五号室長嶋有読み終わった四元志郎はそのことを、どうしてか家族の誰にも言わなかった。後日、引っ越しを手伝いにきた妻に、ツナの空き缶なんかをなぜ取っておくのかと問われたが、謂れを語りはしなかった。 言葉にすると、ただのいい話になってしまうじゃないか。単身赴任に含まれる「単身」という語を志郎は思い描いた。望んだ暮らしではなかったが、この九ヶ月、まさに単身で、俺だけで俺を生きた。その証拠のようにハナコが俺だけにしてくれた、俺だけの話だ。 - 2026年9月5日
- 2026年9月3日
スティル・ライフ池澤夏樹読み終わった再読雪が降るのではない。雪片に満たされた宇宙を、ぼくを乗せたこの世界の方が上へ上へと昇っているのだ。静かに、滑らかに、着実に、世界は上昇を続けていた。ぼくはその世界の真中に置かれた岩に坐っていた。岩が昇り、海の全部が、厖大な量の水のすべてが、波一つ立てずに昇り、それを見るぼくが昇っている。雪はその限りない上昇の指標でしかなかった。 - 2026年9月2日
渡り鳥たちが語る科学夜話全卓樹読み終わった再読ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)は技術者や科学者の自由闊達な雑談室として始まったが、時を経ずその新しい社会のインフラとしての可能性に注目が集まった。個人間のつながりが空間の制約から解放され言論の自由が広まるだろう。古い常識を壊す多様な議論がより公正な社会的合意をもたらすだろう。爾来20年、世界を覆う生活インフラとなったSNS上で実現したのは、視野の狭いイデオロギー集団が跋扈する、刺々しさで気の休まることのない言論世界である。 - 2026年8月31日
- 2026年8月27日
日本風景論 (講談社文芸文庫)加藤典洋読み終わった日本人の景観意識において、明治四年の〝廃藩置県〟が行なったと同様の改変を行なったと見ることができる。藩が廃され、一瞬日本に権力の真空状態が生まれたかと思うと、県が置かれ、別種の権力秩序が敷かれる。名所的な古来の「探勝的風景」が廃され、新しい均質的な風景秩序が敷かれる。『万葉集』以来日本の古歌に現れ、しかも京畿中心の風景秩序の中で奇異な、〝収まりきれなさ〟を残していたかに見える「富士山」は、ここで、廃藩置県における「天皇」に類似した位置を占めるのである。 - 2026年8月24日
わたしのペンは鳥の翼古屋美登里,アフガニスタンの女性作家たち読み終わった再読知事や大臣の多くも文字が読めないわ。彼らができるのは戦うことだけ。読み書きすらできない。国民は無教養の者たちが叩く太鼓に合わせて踊っている。みんなは、タリバンは変わったと言っている。でも、本も読めないのにどうやって変われるわけ? 本を読まずにどうやって変われるというの? わたしたちの親がみんな文字が読めたら、あなたみたいな女の子がひどい目に遭わずにすむのに。 - 2026年8月21日
原稿零枚日記小川洋子読み終わった再読読書会あの時母はもう準備を進めていたのだ。少しずつ声だけをまずあちらの世界へ送り届ける準備を。なのに私はそんな重大な事態に気づきもせず、ただ沈黙をどうやってやり過ごそうかとそればかりに囚われていた。その上更に、母との最後の会話も忘れてしまった。きっと、最後の時があったはずだ。その時母は、さあいよいよこれを手放したら後にはもう何も残らない、おいう最後の一声を私に発し、それが娘の掌に落ちて消えてゆくのを見送ったに違いない。 - 2026年8月19日
読み込み中...


