わたしを庇わないで (集英社文芸単行本)

9件の記録
さくら🌸@lily_sakura_2026年6月11日読み終わったリズム感のある文体で読みやすかったし、皮肉というか風刺が効いたユーモアで面白かった。 『世紀の善人』では、思いっきり社内の男たちからパワハラを受けている安井が、その人たちを「サンゾウ」(三國造船の略)と呼び、まるで地球外生命体であるかのように観察をする様や、様々なサンゾウの呼び方などが奇妙で面白い。オチもすごかった。 表題作『わたしを庇わないで』は、「人の容姿について言及してはいない」という、コンプラを意識した世間の風潮を皮肉たっぷりに描いた作品。自他ともに認めるデブである主人公・アヤノの、自らの体型やそれに対する周囲からの目線を表現する言葉の一つ一つが魅力的だった。 「はっきり言って、人を笑わせるのは死ぬほど簡単だ。裏で相手に優越感を抱かせればいいのだ。皆さん馬鹿だから「優越感による気持ちよさ」と「そのネタの秀逸さ」を区別できない。」(p.168) 一昔前、SNSがここまで普及するまで容姿いじりは普通だった。テレビなどでも普通に放送されていたし、誰も咎めなかった。というか、咎める声は聞こえなかった。容姿いじりで笑う人の正体がこの一文で暴かれた気がした。 かと言って、やたらと直接的な表現を避けながらも「絶対にデブだって思ってるだろ」みたいな庇い方をする方に、どちらかというと主人公は辟易している。 「私はもし拳銃を所持していたら自分を「デブ!」と罵るやつではなく「この人をデブって言わないでかわいそう!」と庇うやつのほうに発砲する。人に「デブ」と言わないのがそんなに偉いか? 皆さん「デブ」を舐めてかかりすぎだ。人を庇うなんて傲慢すぎだ。」(p.176) 行き過ぎたコンプラ意識は人を傷つけかねない。何が正義なのかわからなくなった。余計なことは言わないのが吉だ。 「私はこの世に無害な褒め言葉はないと思っている。何かの肯定は必ず何かの否定だ。」(p.140)


プキ@pooky2026年6月7日読み終わった石田夏穂は今回もとてもよかった。 基本的にコミカル、シニカル、ドライで最高な主人公なんだけど、ずっとヒリヒリと痛くて。 切実な問題意識から出てきたものがお題目になり、実際の問題はそのままに表面だけ整えられることって、ほんとにたくさんあるというか、たいていのものはそうなる。だから、表面の規制がうっとおしいという人に同調する部分もある。問題が理解できないならせめて、表面だけでも整えたほうがマシかもという思いもある。 ほめるときには、そうじゃない人をけなしている。ほめると、そうでなければ価値がないというメッセージを相手に送っている。自虐は自分以外の周囲もなぎ倒してしまう。 そもそも、なんで、自分ではなんとも思ってなかったものを、勝手に価値づけされ、意味付けされ、気持ちまでをも推測されないといけないのか。や、ほんとになんなんですかね???怒 アヤノだってよくよくわかっていたはずなのに、それでも渦は大きすぎて、飲み込まれて。最後に真に傷ついたアヤノが大好き。









