奇のくに風土記
35件の記録
うーえの🐧@tosarino2026年3月23日読み終わった⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️ 「声なき声に耳を澄ます、優しくも不思議な命の交歓」 人間関係に疲れ、ふと立ち止まりたくなった時。あるいは、世界の喧騒から少しだけ距離を置きたいと感じた時。木内昇が紡ぎ出す『奇のくに風土記』は、そんな私たちの心に静かに、そして確かに沁み込んでくる特別な一冊です。 物語の舞台は、江戸時代の紀州藩。緑深く、どこまでも山々が連なるこの地は、古くから神仏や得体の知れない「あやかし」が息づく場所でした。主人公の十兵衛(のちの実在の本草学者・畔田翠山)は、人との関わりや会話が極端に苦手な、不器用な少年です。しかし、彼には誰にも言えない秘密がありました。それは、「草木や花と自在に言葉を交わすことができる」という不思議な力です。 人間の言葉よりも、足元にひっそりと咲く名もなき花の声に耳を傾ける十兵衛。孤独なはずの彼の日常は、ある日、山で「天狗(てんぎゃん)」と遭遇したことを境に、少しずつ奇妙な熱を帯びていきます。精霊や化生(けしょう)たちが引き起こす面妖な出来事の数々。亡き父が植物の蔓を伝ってあの世からひょっこり現れるなど、思わずクスリと笑ってしまうようなユーモアと、背筋がすっと伸びるような自然への畏怖が、本作では見事なバランスで同居しています。 この物語の最大の魅力は、ただの時代ファンタジーにとどまらない「命への深い眼差し」にあります。草木も、あやかしも、そして人間も。 「みなそれぞれ与えられた姿を全うしたいと願っておる。それは人も草花も変わらぬ」 作中で語られるこの真理は、十兵衛の成長を促すだけでなく、現代を生きる私たちの心をも静かに揺さぶります。著者の木内昇は、端正で美しい日本語を駆使し、紀州の豊かな自然——作中で「美(う)っつい奇のくに」と呼ばれる世界——を鮮やかに描き出しました。ページをめくるごとに、湿った土の匂いや、頬を撫でる山風、木漏れ日の温もりが立ち上ってくるかのようです。 人との対話につまずき、草木に救いを見出していた少年が、恩師や不思議な存在たちとの交歓を経て、やがて他者と、そして自分自身とどう向き合っていくのか。その不器用でひたむきな歩みは、読む者に深い安らぎと、明日を生きるための小さな光を与えてくれます。 ファンタジーでありながら、確かな土の匂いと命の温もりを感じさせる傑作。心静かに、じっくりと活字の世界に浸りたい夜に、ぜひ手に取っていただきたい一冊です。読後、道端に咲く一輪の花や、公園の木々が、昨日までとは少し違って見えてくるはずです。
読書日和@miou-books2026年3月4日読み終わった江戸時代後期、紀州藩の本草学者 畔田翠山 をモデルにした時代幻想譚。 読み始めてから最後まで、 植物の瑞々しさや草や森の匂い、山の空気が 手に取るように感じられて、とても心地よい一冊だった。 物語は、主人公がまだ若い「十兵衛」の頃から始まる。 『天狗(てんぎゃん)』との出会い、 亡くなった父の幽霊のような存在、植物の妖精のようなものとの対話―。 ずっとファンタジーとして読んでいたのだけれど、 巻末の参考文献を見て、「あれ?実在の人物なの?」と気づき、思わず読み返してしまった。 草木の声がわかる翠山は、若いころ人との関わりが少し苦手。 けれど、師の孫である良直との関係や、与えられた仕事に没頭しながら年を重ねるうちに、少しずつ人にも心を開いていく。 天狗の姿も、童のようだったり若者だったり、 時には誰かの姿を借りたりする。 もしかすると、翠山の成長を映す存在なのかもしれない。 良直も翠山も、相手の言葉を素直に受け止めるところがあって、二人のやり取りを読んでいるだけで心地よい。 「美(う)っついなぁ」という表現もとても好きだった。 読んでいるあいだ、ただただ浄化されていくような感覚。 実はまだ和歌山県に行ったことがない。 物語に出てくる和歌山市の岩橋(いわせ)にも、 いつか訪れてみたいと思った。
りら@AnneLilas2026年1月16日読み終わった聴き終わった文庫化待ち@ 電車初めて読む木内昇。昨年の泉鏡花文学賞受賞作品。 この本のあらすじを目にした時から『家守綺譚』を彷彿させると思っていた。 『家守綺譚』が明治末期、琵琶湖疏水の流れる山科を舞台にした架空の文士の物語なら、『奇のくに風土記』は江戸時代後期、紀ノ川近くに生きた実在の本草・博物学者の物語。 前者には家主の息子である亡き友が掛け軸から主人公に会いにきては河童や小鬼までもが顔を出し、後者は庭のテイカカズラから亡父が現れ、天狗も主人公を見守っている。どちらにも植物の精が現れては消えていく。 植物に夢中なあまり、あやかしに出会っても頓着しない主人公=十兵衛=翠山だけど、関西弁が軽やかで、不思議と淡々としていて面白かった。 畔田翠山は小野蘭山(何となく聞いたことはある程度だが)の孫弟子に当たるらしい。ウィキではなぜか源伴存という名で立項されている(なぜ源姓?)。 白山でのエピソードに登場する佐々成政の黒百合伝説とか、もうちょっと深掘りしてみたい。 今回オーディブルで人名や植物名といった固有名詞もよくわからずに聴き流してしまったけど、いずれは紙の本でじっくり読み返したい。 オーディブル2.1倍速。
かなむに@kanamuni_10212025年10月26日買った杉江松恋さんの書評YouTubeで、「読んでる間幸せになる」文章と紹介されていたし、江戸時代の本草学というのが気になって、誕生日プレゼントに家族に買ってもらった。良さそう。早く読みたい。
じゃむこ@jampara2025年9月29日読み終わった借りてきたじわじわくる。若者が読むより、中年過ぎてからのが面白いのかな。劇的な描写があまりないから、するする読み進められるが、生き方についてなどの登場人物のセリフはグッときます。とりあえず山に登りたくなる。
群青@mikanyama2025年9月6日気になる「紀州藩士の息子、十兵衛(後の本草学者・畔田 翠山/くろだ すいざん/ 1792〜1859)は、幼い頃から草花とは自在に語らうことができるのに、人と接するとうまく言葉を交わすことができない。 ある日、草花の採取に出かけた山中で天狗(てんぎゃん)と出会ってから、面妖な出来事が身の回りで次々に起こりだす時代幻想譚。」 だそうです。 実業之日本社のサイトで作者のエッセイが読めます。

ふくとみー@fukutommie_books2025年8月30日読み終わった江戸時代の本草学者・畔田翠山(十兵衛)の青年期を描いた時代小説。山で天狗と出会ってから、十兵衛の周りで不思議なことが起こりだす...。 草木に囲まれた森の奥へ入り込んだような、静かな生命力に溢れた読み心地。生き方への名言も多く、沁みた。







ふくとみー@fukutommie_books2025年8月30日読んでる心に残る一節人からどう見られようと、どう思われようと、気にすることはない。他人の心など些細なことで変ずるし、そもそも人と人との関わりに絶対ということはないのだと開き直ってしまえば、生きていくのは存外気楽なものだった。他人の目ばかり気にして、まわりと足並みをそろえたがために、どんどん自分本来の姿から遠ざかり、窮屈に日々を送るくらいなら、嗤われても嘲られても、己のままで生きていったほうが気楽だと、心から思えたことも大きかった。(p206)





kasa@tool2025年8月24日読み始めた読み終わった一章読んで、あ、この本好きなやつ…!ってなった。木内昇さんの小説は惣十郎浮世始末(こちらも最高だった)に続いて2作目。 おとぎ話と時代小説と草木についてのミックス感がいい感じです。

ゆいちゃん@yui__arm2025年6月21日読み終わった感想やっぱり木内昇の幻想小説、好きだ〜。 異世界との境目がぼやける世界観、草木が好きで、植物を愛する人たちの物語。静かで穏やかで、だけど人生をかけて生きていて、とても良かった。





















