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藤間あわい
藤間あわい
藤間あわい
@awai_moji
Twitter:@awai_moji 短歌を詠み、小説を書いています。持病の影響でたくさんは読めませんが、ずっと読書が好きです。
  • 2026年8月13日
    月がきれいな夜に、誰かに思い出してほしかった
    タイトルと装丁の美しさに一目惚れして書店で手に取ったが、中身も素晴らしく良かった。恋愛が成就してさあやっと一人前という風潮から解放されたと思ったら、次は結婚、次は子育てとどんどん更新されていく世間の「当たり前」に苦しめられながらも、全力で悩んでもがいて泣いて笑って向き合う主人公の在り方に元気をもらった。自分にとっての唯一がなくても、絶対がなくても、必ずどこかで誰か見てくれている人がいて、私たちは誰かを生かし生かされている。そう思える物語だった。
    月がきれいな夜に、誰かに思い出してほしかった
  • 2026年8月8日
    湯気を食べる
    湯気を食べる
    使う語彙やオノマトペが似ているからだろうか、まるで「私が書いた!?」と思うほどしっくりと頭と心に馴染む文章で拝読していてとても楽しく、リラックスできた(技量は遠く及ばないが)。 そしてとびきりおいしい文章の中に時折混じるきりりとしたスパイスのような辛口の言葉が印象的だった。柔らかく優しいだけでない、くどうれいんさんの芯を感じた。 食べることも作ることも大好きな私にぴったりのおいしくて心強い味方のようなエッセイだった。何度も読み返したい。
  • 2026年8月4日
    暮らしの信じ方
    文学フリマ東京42で初めてエッセイを書いて短歌と共にZINEとして販売した。それを機にエッセイを読み始めた。順序が恐ろしく逆である。 小説と違って日々が淡々と綴られるエッセイは一気読みとはいかず、どうしても少しずつ読み進めることが私は多いのだが、このエッセイは珍しく半日かからず読み終えた。 ドラマチックではない、展開に序破急があるわけでもない、けれどもなぜだか一気読みしてしまうのは作者の素晴らしい筆力の賜物であり、私もこういうふうな文章を書けるようになりたいと心から思った。 そして、帯の「特別な経験がなくても、熱く語れるものがなくても、積み重ねてきた「日常」の中に自分はある。」という一文がとても心に響いた。つつがなく続く日々の中にこそ自分が宿るなら、もうちょっと日常を大切にしてみようかなと思える文章で好きだ。私は私の暮らしを、もう少し信じてみたい。 あと、付録のダイカットしおりがとても可愛いのでぜひ手にとってみてほしい。
    暮らしの信じ方
  • 2026年7月30日
    平熱のまま、この世界に熱狂したい 増補新版
    しかし、誰もが取り返しのつかない人生を背負った、のっぴきならない固有の存在である。(中略)でも、僕は思う。身近な他者の痛みに敏感でない人が、日常生活の機微に美しさを見出せない人が、かつての自分のような人が、本当に社会や世界のことなんか考えられるのだろうか、と。 4章が一番心に響いた。「弱くある贅沢」というタイトルから「弱さ」について語られた二篇のエッセイ丸ごとがどうしようもなく胸を打つ。自分自身が「弱い」存在であること(になってしまったこと)にずっと引け目を感じていたが、「弱い」からこそ考えられることがあり、見えてくるものもあるのだろうと読後心から思えたのが良かった。弱さを否定せず、弱いまま世界に存在し日々をつぶさに見つめ続ける著者のおかげで、「弱い」ことは悪いことではないと憑き物が落ちたようにそう思えたのは、とても大きな収穫だ。
  • 2026年7月15日
    多類婚姻譚
    多類婚姻譚
    連作短編の良さを存分に発揮しつつ、五篇それぞれの視点や切り口の多様さに五人の作家が書いたアンソロジーを読んでいるような気持ちになった。一人の人間がこんなにも素晴らしく素敵で豊かな物語を書くことができる。それを教えてくれる凪良先生は希望のひとだなと思う。 一話目でナイフを突き刺し、二話目で突き刺したナイフで肉を抉り、三話目でナイフを引き抜いて、四話目で今度は別のところにナイフを刺し、五話目でとどめを指すような、そんな物語たちだった。最高の読書体験だった。
  • 2026年7月8日
    ライオンのおやつ
    「逆転満塁ホームランじゃなくていいんだよと、私は先生に伝えたくなった。そんなに簡単に、自分の生き方を変えることはできないもの。でも、自分の人生を最後まであきらめずに変えようと努力すること、そのことに大きな意味があるのだと思った。」 生まれてきたこと、生きていることに感謝をする境地に私はまだまだ至れないけれど、いつか生きていてよかったと思える日が来るようにずいぶん諦め気味の人生をもう一度生き直すような気持ちでまずは明日を過ごしてみたいと思った。
  • 2026年6月30日
    わたしたちが光の速さで進めないなら
    わたしたちが光の速さで進めないなら
    久しぶりに読んだSFだった。揺るぎない知識と深い思索に支えられた、SF特有の未知に触れるわくわく感をたっぷり味わえる作品で好きだなと思った。色彩豊かな短編のなかでも、特に好きだったのは「館内紛失」だ。母と娘という複雑な関係をさらにがんじがらめにしたような主人公とその母の関係が、最後にほどけるシーンが心に沁みて好きだった。そして海外の文学でありながら今までにないほどさらさらと読み進められて翻訳者さんたちの努力に感嘆した一冊だった。
  • 2026年6月17日
    西洋菓子店プティ・フール
    千早茜さんの作品はまさに「細部に神は宿る」という言葉を体現したように隅々まで丁寧に描かれていて、いつも文章への知識の落とし込み方と取材力に心から感嘆する。巻末の対談を拝読して、いかに熱を入れて取材と調べ物をされているかを知って物語の内容と共にプロの仕事のなんたるかを教えていただいた。甘いだけでないそれぞれの拗れた片思いと、とびきり甘く美しいお菓子のコントラストも好きだった。
  • 2026年6月10日
    明け方の若者たち (幻冬舎文庫)
    「五年前、この道を歩きながら自分たちを「勝ち組」だと思っていた僕は、今ではすっかり負けに慣れてしまった気もする。でもそれは、もしかしたらこれまでの人生が、敗北するほど挑戦していなかっただけなのかもしれない。」 どうしようもなく、どうしようもできない恋の話だった。主人公のどこまでも不純なのに純粋に思える愛と、彼女のどこまでも不誠実なのにどこか誠実さが滲む愛が不思議と魅力を放っていた。致死量の人間臭さを閉じ込めた物語だった。
  • 2026年6月1日
    夢のうた
    夢のうた
    つるばらのつぼみに初夏の空気ふれほどけるようにゆめからさめぬ / 錦見映理子 ひらがなの柔らかさが夢の中のようで心惹かれた一首。この季節に絶妙にマッチした情景が浮かんで爽やかな気持ちになる、暑い日にぴったりの短歌だった。
  • 2026年5月19日
    白ゆき紅ばら
    白ゆき紅ばら
    良い子は天国へ行く。悪い子はどこへでも行ける。 帯のこの言葉とカバーの手触り(おそらくベルベットPP)、そして装丁に惹かれて購入した本だった。以前から寺地はるなさんの作品を読んでみたいと思っていて楽しみに読み始めたが、想像に反して終始じっとりと嫌なまなざしが胸に絡みついてくる生々しい物語だった。けれども、それだけでは終わらないところが好きだ。それぞれの場所で必死に戦い抜いた主人公二人の結末には希望も見えて闇の中にすっと一縷の光が差し込んだような読後感だった。『ババヤガの夜』の作者、王谷晶さんの解説も素晴らしいのでぜひ。
  • 2026年5月14日
    ゆびさきと恋々(14)特装版
    お互いのことをここまで大切に、優しく思い合える逸臣くんと雪ちゃんの関係が胸が締め付けられるほど愛おしくていつも泣きそうになる。ずっと一緒にいたいという二人の切実な思いがしんしんと心に沁み込んできて、ラストの展開には胸が震えた。最高純度の愛を描き出す『ゆびさきと恋々』が大好きだ。
  • 2026年5月10日
    あなたに犬がそばにいた夏
    あなたに犬がそばにいた夏
    夕焼けのボーナストラック。小焼けってそういうイメージ、って言ってみる 知らない景色やそれを詠んだ短歌なのに、全てが愛おしく懐かしく感じられる、不思議な心地がした。インクが乗ってざらりとした紙の質感やページを捲る時の手触りなど全てをひっくるめて「本」として好きな本だった。
  • 2026年5月9日
    逆ソクラテス
    逆ソクラテス
    5篇の短編全てが好きだった。伊坂幸太郎さんの作品のちょっとずつ世界が繋がっているところが楽しくて、そしてどの繋がりに気づいた時も胸がじんとした。5篇の中でも特に「アンスポーツマンライク」がお気に入りで、いつもあと一歩を踏み出せなかった主人公が信じる仲間がいたからこそ一歩を踏み出せたところに感動したし、手に汗握る展開にどきどきとページを捲る手が止まらなかった。 子供の世界は狭くて、そんな世界をひっくり返すことは途轍もなく勇気がいる。それでも反逆の狼煙を上げる登場人物の子供たちに勇気をもらったし、私も先入観で決めつける大人にならないように気をつけたいと思った。
  • 2026年5月8日
    うれしい近況
    うれしい近況
    過ぎた日が遠ざかるほどその日したグータッチからまばゆい光 ほんとうに? 置いてけぼりに思うときそこは先頭かもしれないよ 全ての短歌が大好きな歌集に久しぶりに出会った。いつもは特に心に残った一首を書き留めるのだが、どれも好き過ぎて絞りきれず二首になってしまった。グータッチの歌はいつしか大好きなプロゲーマーとイベントの退場時に交わしたほんの一瞬の、けれども永遠の時間を思い出して目頭が熱くなった。日常にそっと寄り添い、同じ速度で歩いてくれる歌たちが素敵で何度でも読み返したくなるおいしい水のような歌集だった。
  • 2026年4月25日
    花は泡、そこにいたって会いたいよ
    くちびるをぬぐう指先の桃色 笑ったら笑っただけの花の嵐だ 初谷むいさんの短歌は音楽みたいだなと思っていたので解説でその答え合わせができたようで嬉しかった。リズムが心地よくて言葉は歌詞のようで。シンガーソングライターのような素敵な歌人の方だなと思う。
  • 2026年4月22日
    banana flavored chewing gum
    笑ったのわからなかった……背後からいきなり朝がきたと思った この歌が一番好きだった。きっと目を細めるほどまぶしく光る笑顔だったのだろうなと思って朗らかな気持ちになった。また、章タイトルの時点でわくわくする本は久しぶりで感動した。一つ一つのタイトルが個性的で興味深くてより短歌が楽しく読めた。
  • 2026年4月22日
    きみを嫌いな奴はクズだよ
    戦争が両目に届く両耳に届く時間を与えられずに 今の情勢を表すような歌で、胸がきゅっと引き絞られるような心地だった。戦争について詠んだ短歌の章「無色の虹」はぜひ今多くの人に読んでほしいと思った。
  • 2026年4月17日
    太陽帆船
    太陽帆船
    フルムーン 好かれないこと落ち度ではないはずでしょう誰にとっても 『太陽帆船』は私が初めて購入した歌集であり、短歌を詠み始めたころからずっとそばで静かに佇んでくれている。瑞々しい生花のように。 今日心に刺さったのはこの歌だった。SNSで知らぬ間にブロックされていると、攻撃の意図はなくただの棲み分けだと頭では分かっていても落ち込むことがある。そんな絶えず刻まれる傷跡を柔く撫でてくれたような気がした。
  • 2026年4月17日
    お守り短歌アンソロジー わかれる
    それはなかった春の思い出 さくら味のさくらを見てた 忘れたりないよ 初谷むいさんの連作が一番心に響いた。タイトル、短歌、あとがきを含めて一つの作品として好きだ。この短歌アンソロジーは短歌はもちろん、作家のあとがきが素晴らしいと思う。特に惹かれたのは志賀玲太さんの「ものを捨てることが苦手です。読みこなせなかった本もうまく使えなかった道具も、手放してしまえばそれを大事にできた『可能性』や『選択肢』ごと捨ててしまう気がして、つい部屋の隅に置いたままにしてしまいます」という文章だった。置かれたままの赤本、予備校の参考書、電池の切れた電子辞書。私もいつか、夢破れた先にある生活に期待できるようになれたらいいなと思った。
    お守り短歌アンソロジー わかれる
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