

藤間あわい
@awai_moji
Twitter:@awai_moji
短歌を詠み、小説を書いています。持病の影響でたくさんは読めませんが、ずっと読書が好きです。
- 2026年4月5日
夜なのに夜みたい岡野大嗣読み終わった空調がきびしい席を移動してまぶしい席で続ける学び 空調の効いた自習室ではなく、寒々とした廊下で受験勉強をしていたあの頃がぱっと蘇った。今回はより情景が鮮やかに浮かぶ短歌が多くて、いつもの岡野さんの短歌とは少しテイストが違う気がして(いつもが昼下がりなら今回は真夜中のイメージ)新鮮だった。文章だと「温度」が一番好きだった。春が訪れる少し前の季節を思い出す、まさに光の麗らかな温度や空気の柔らかな手触りが伝わってくる素敵な文章だった。 そして題名に入っている「夜」の通り、夜の道をぽつんと一人、誰もいないことを確認して好きな曲を小さく口ずさんでいる帰り道を歩いているようなそんな気分になる歌集だった。またお気に入りの道のようにふらっと手に取りたい。 - 2026年4月5日
ミトンとふびん吉本ばなな読み終わった表題作の「ミトンとふびん」が一番好きだった。人の「死」という大きなテーマを扱いつつも、特別ドラマティックな展開はなく、淡々と残された人々の非日常のような日常が描かれているところが好きだった。そして作中のフィクションの山あり谷ありのドラマティックな人生でなく、トラブルがなくて春風が吹いているようなしみじみとした幸せにあふれた人生がいいと主人公が考える場面に深く頷いた。何か特別なことが起こらなくても人生は続くし、そのつつがなさがきっと一番幸せなんだと思う。 - 2026年4月1日
デッドエンドの思い出 (文春文庫)よしもとばなな読み終わった「いい環境にいることを、恥じることはないよ。武器にしたほうがいいんだよ。もう持っているものなんだから」 「世の中には、人それぞれの数だけどん底の限界があるもん。俺や君の不幸なんて、比べ物にならないものがこの世にはたくさんあるし、そんなの味わったら俺たちなんてぺしゃんこになって、すぐ死んでしまう。けっこう甘くて幸せなところにいるんだから。でもそれは恥ずかしいことじゃないから」 恵まれていることに引け目を感じている今の私にとって、とても響く言葉だった。表題作の「デッドエンドの思い出」が私も作者の吉本ばななさんと同様に一番好きだ。表紙のイラストがとっても素晴らしいので(読了後だとより一層沁みる)、ぜひ手に取ってみて欲しい。 - 2026年3月14日
光のとこにいてね (文春文庫)一穂ミチ読み終わった読後、感想が出てこない本は久しぶりだった。 何も感じなかったからではない。胸の裡に言葉や感情が数多渦巻いて言葉にならなかったからだ。 言葉にできない関係性、想い。何もかもを言葉にする小説であえて言葉にされないもの、されなかったもの。 しばらくただ余韻に浸っていたい。 - 2026年3月10日
シェニール織とか黄肉のメロンとか江國香織読み終わった初めて読む江國香織さんの物語だった。ころころと変わる視点に最初は戸惑いを覚えたものの、読み進めていくうちに登場人物がいきいきと動き出して楽しく読み終えた。文庫版の金原ひとみさんの解説が読後にちょうど良い素敵な文章だったのでぜひ。 - 2026年3月10日
ブレス(8)園山ゆきの読み終わった「恐ろしいのは才能がある奴じゃない 才能がないとわかったうえであがいてくる奴だ」 8巻を読んでいて、1巻のこの帯の言葉を思い出した。『ブレス』で一貫している、才能への考え方がすごく好きだ。僕には才能がないと歯噛みして、けれども今までたくさんのものをもらってきたと前を向くアイアくんのまなざしが一等かっこいいと思った。 - 2026年2月28日
- 2026年1月31日
- 2026年1月29日
イン・ザ・メガチャーチ朝井リョウ読み終わった私にとって、小説はいつだって違う世界に連れ出してくれる優しい案内人だった。 でも、この小説を読んだとき、初めて「恐怖」を覚えた。そして一度ページを閉じた。そしてしばらく読むことができずにいた。ああ、なんて生々しくて、おぞましいのだろうと。 私は武藤澄香の最初の章でまるで私がそこにいるような感覚を覚え、震えた。体重を気にする私、パーソナルカラーや骨格診断といった診断に基づいて服やコスメを判断する私、悲惨なニュースを眺めては落ち込みインターネットの署名くらいしかできない私。どうして作られた物語なのに等身大の私がそこにいるのだろうと驚きを超えて恐怖を抱いた。 けれども読み進めていくうちに、恐怖は少しずつ薄れていった。この物語はファンダム経済の構造や功罪を描きながらも、大切なメッセージを発信してくれているように感じたからだ。 自分の信じる物語を選び取ること、その物語は私たちの生活を破滅させるかもしれないと同時に、私たちを救うかもしれないこと。そして物語を信じるのに遅いということはないということ。 結末は決してハッピーエンドとは言えないかもしれないけれど、自分たちで物語を選び取った主人公たちの姿は眩しく見えた。自分を使い切って何かに熱中する人たちの姿は、確かに眩しかった。そう思った。 - 2026年1月24日
メダリスト(14)つるまいかだ読み終わったいのりさんの身長が146cmに伸びたというところで、いのりさんが「子供」であることを実感して、「ああ、こんなにも厳しい世界で戦ってきた彼女はまだ子供なんだ」とこれまでの道程を思って涙がこぼれそうになった。そして、その後の滑走の力強さと懸ける思いの強さに心を打たれた。いのりさんの煌めきはいっとうまばゆくて、その唯一無二の光にいつも目を細めている。氷の上という冷たさを忘れるほど輝くいのりさんの温かい笑顔が、大好きだ。 - 2026年1月18日
- 2026年1月15日
常設展示室原田マハ読み終わった私にしては珍しく、数ヶ月にわたって読んでいた本だった。それが世界の常設展をゆっくり回っているような、そんな心地にさせてくれた。特に心を揺さぶられた話は最初の「群青」と最後の「道」。鮮やかな青で始まり、しみじみとした翠で終わる素敵な短編集だった。 - 2026年1月4日
恋のすべてくどうれいん,染野太朗読み終わったえごの花白くからだに降り積もる平らなところから順番に 私の読みではきっとこれはキスマークのことだと思うのだが、こんなにも鮮やかにそれでいて慎ましくキスマークのことを表現できるなんて……!といたく感動した。この歌が含まれるKISSの章が一番好きだ。染野さんとくどうさん、同じテーマを詠みながらそれぞれのアプローチが異なりつつも、歌から感じ取れる温度は似通っていて拝読していてとても心地よかった。 - 2025年12月15日
音楽岡野大嗣読み終わったなにやつ、とあなたがふるう一太刀の葱にやられる秋の夜長に 心に残った歌がありすぎてお気に入りの一首を引くのにこれほどまでに悩んだ歌集は初めてだった。帯の「わずかにでも感情を動かした時間と光景」がこの歌集の全てを表しているように思う。岡野大嗣さんの日常のささやかなことまで具に見て掬い上げたものを一つ一つ慈しみ、その柔い優しさのまま紡がれた歌たちがすこぶる心地よく、体と心に馴染んだ。あと、これまで私が読んできた歌集の中で犬が好きな人におすすめしたいNO.1の歌集は間違いなくこれだ。
- 2025年11月22日
ゆびさきと恋々(13)森下suu読み終わったゆびさきと恋々に登場する人たちは、いつもまっすぐ誠実に相手に向かい合おうとしていて、それがすごく眩しい。なあなあにすることも誤魔化すことも容易いのに、相手が心底大切で好きだからこそ彼ら彼女らは痛いほどまっすぐに相手に向き合おうとする。その心と心のきらめきを星のように眺めていたくなる、そんな素敵な物語だと思う。 - 2025年10月25日
西の魔女が死んだ(新潮文庫)梨木香歩読み終わった「その時々で決めたらどうですか。自分が楽に生きられる場所を求めたからといって、後ろめたく思う必要はありませんよ。サボテンは水の中に生える必要はないし、蓮の花は空中で咲かない。シロクマがハワイより北極で生きる方を選んだからといって、だれがシロクマを責めますか」 ずっと読んでみたいと思っていた作品だった。日々惑い、苦しむことへの解決策やはっきりと答えを示してくれたわけではないけれど、確実に光の方へと手を取って導いてくれるような、そんな作品だった。自分のことは自分で決めることの大切さを忘れずに、私も日々魔女修行に取り組んでみようと思えた。 - 2025年10月24日
ギンガムチェックと塩漬けライム鴻巣友季子読み終わったこんなにも心踊る読書体験は久しぶりだった。 海外文学の世界へと私の手をとって誘い、隣で物語を笑顔で読み聞かせてくれているような、そんなわくわくした心地を味わった。 海外文学の名作のストーリーを追いつつ、翻訳家としての新たな視点で紡がれる解説たちはあっと驚くものが多くて読んでいて非常に楽しかったし、一つ一つの作品に大きな興味が湧いた。 私を素晴らしい世界へ誘ってくれたこの本に、心からの感謝を伝えたい。 - 2025年10月19日
すべて真夜中の恋人たち (講談社文庫)川上未映子読み終わった私にしては珍しく、少しずつ読み進めた物語だった。 読み終わるのが惜しく、ずっとこの世界に浸っていたいと思うのは久しぶりで、じんわりと沁み渡るような言葉たちが心地よく、そして愛おしかった。 曖昧で、不確かで、でも確かにあった愛が泣きたくなるほど不器用で美しかった。恋愛という言葉だけでくくるのはおしい、愛の物語だった。 ふと目が覚めて、導かれるように真夜中にこの物語を読み終えることができたことをとても嬉しく思う。 - 2025年10月9日
落雷と祝福岡本真帆読み終わったワンルーム・デイズ だめでもすさんでも見ていなくてもしゃんといる花 「好き」という感情を、真っ直ぐ、そして飾らず伝えられる岡本真帆さんの素晴らしい技量、一本芯の通った勇気に感嘆したし、大好きだなあと思った。特に「THE FIRST SLAM DUNK」の章に心惹かれた。岡本真帆さんの感じたあふれんばかりの眩さが、文字を通してこちらまで伝わってきて、章を読み終えた後はじんわりとした心地になった。 嫌いなことを発信したほうが注目を浴びられるこの社会で、好きなことをひたむきに発信する岡本真帆さんの眩しさを、私は心から尊敬している。 - 2025年9月17日
スモールワールズ (講談社文庫)一穂ミチ読み終わった一筋縄ではいかない物語たちが詰まった本だった。人生を単なる物語として消費させない、ただ「良い話」「可哀想な話」で終わらせない、そんな意志を感じた。不思議で、初めての読後感だった。
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