

北本新聞縦覧所
@kitamoto_juran
ノンフィクション・新書・小説を好んで読みます。埼玉県北本市の小声書房さんの貸棚ブクブク荘の「北本新聞縦覧所」です。
- 2026年8月22日
IN桐野夏生読み終わった桐野夏生の描く人間は人の形をしている。 気に入った点 小説内小説である『無垢人』の描写。途中で読むのが嫌になる程、人間の浅ましさや狂おしさが表現される ラストで千代子が書いているという"恋愛小説"の中身 弓実に対する悪意溢れる追悼文の気持ち悪さ 最終章のタマキの状況が⚪︎子と緑川、千代子の状況と重なり合う構成 点で見ても面で見ても、最高に気持ちの悪い(とても褒めている)小説でした。 - 2026年8月16日
なぜ悪人が上に立つのかブライアン・クラース,柴田裕之読み終わった大変面白かった。 権力を握る者はなぜ悪人なのか。悪人が権力に引き寄せられるから?善人であっても権力を持つと悪人になってしまうから?我々が悪人を権力者に選んでしまうから? 様々な角度から丁寧に、豊富な事例を挙げて論証を行い、現代社会の権力構造が鮮やかに描き出される。 文章自体の面白さも特徴で、硬いテーマでありつつも「ふふっ」と笑えるレトリックが散りばめられている。 権力を腐敗させないための方策も示されており、組織を不正なく活性化させることも夢ではないと思えることができる。実現は難しいかもだけど。 明日も明後日も組織で生きていくサラリーマンにこそ読んでもらいたい本でした。 - 2026年8月12日
サカナとヤクザ鈴木智彦読み終わった体当たりも含めた粘り強い取材でサカナ(漁業)に絡むヤクザ(裏社会)を追ったノンフィクション。 闇夜からヤクザを引っ張り出してきて強烈なスポットライトを浴びせたような詳細さ。危険や苦労も多かったに違いないのは伝わるが、そこの筆致はくどくなく、あくまでも事実ベースの書き振り。だからこそ密漁や密輸の闇の濃さ・深さが浮き彫りになってくる。 小説にしろノンフィクションにしろ正直に言うと解説は印象に残らないタイプなのだが、大根監督の「それでも俺は魚を食う」という堂々宣言も含めて良かった。 俺も魚を食う。しかしこの本で知ったことを踏まえてなるべく正しく消費したい。正しく消費できなかったとしても後ろめたさは持っておきたい。 - 2026年7月28日
天使の囀り貴志祐介,酒井和男読み終わったとんでもなく面白い小説を読んでしまった。 アマゾン探検隊のメンバーたちが帰国後、謎の死を次々と遂げる。 その謎を追っていくと驚きの原因が…というのがざっくりあらすじ。 本筋そのものも面白くページをめくる手が止まらないのはもちろん、登場人物一人ひとりの弱さがなんとも人間らしく、その弱さが謎を解く一つの鍵でもある。 ネタバレに近いかもですが、 真梨幸子の小説に似たような本もあったなぁ。どちらも精密な描写が気持ち悪さを誘い、そこが魅力 まずは手に取って欲しい本です。初見で読める人が羨ましい! - 2026年7月26日
1兆円を盗んだ男マイケル・ルイス読み終わった最初から最後まで、サムは誤解され続けてきたのか。はたまたそれは他者からどう思われようが構わないという意思の表れなのか。 理屈で考えれば分からなくもない効果的利他主義という思想を面白く知った。 収益も出ていていよいよ効果的利他主義に基づいた投資が始まるフェーズならば、学生ノリのベンチャー気質な会社から、安定して収益の上がるがうるさい大人たちに支配されるコンプラがしっかりした会社に脱皮させる必要があったんじゃないだろうか。 - 2026年7月20日
- 2026年7月16日
天皇機関説タイフーン平山周吉読み終わった天皇機関説事件そのものというよりは、天皇機関説事件を軸に人や言論がタイフーンのように揺り動かされてゆく様を史料をもとに描かれる。 天皇制を絶対君主であると一般国民に教育する「顕教」と天皇を明治憲法によって機関として位置付けるエリート層の「密教」がある。陸軍は密教の中で顕教を頑なに維持しており、その体制内矛盾の発露が天皇機関説事件であった。 2.26事件の黒幕とされ、戦前陸軍の暗い影を代表する真崎甚三郎を三島由紀夫や秦郁彦、そして昭和帝の評価を通じて掘り下げる部分などは興味深く読まされた。 読了はしたものの、読みづらかったというのも本音。史料を掘り下げる途中で寄り道的に別の話も差し込まれる。そのため時間軸も読み取りづらく、頻繁に迷子になった。読みにくい司馬遼太郎といった印象。 はなから司馬遼太郎と違い大衆に読みやすい内容を提供しようといった姿勢ではないのだろうが、私のような浅学非才な者は苦戦してしまった。 昭和史への理解を深め、精読のようなことが多少なりともできるようになったらもう一度挑戦してみたい。 - 2026年7月14日
幽霊たちポール・オースター読み終わった短いが味のある作品だった。 この作品はやはり色がポイントだと思う。ブルーの想像の世界に入ると、不思議と色味のある世界が展開される。 現実のブラックやブルーの世界は寒色やモノクロのように想像される。 読書体験として面白い。 退屈は自身との対話を促す。想像力を加速させる。 ラストの一文もフリが効いていておしゃれ。 自分だったら手に取らない本だったが、人に勧められた本を素直に手に取ってみるというのも新しい体験ができてよいものですね。 - 2026年7月13日
読み終わったそもそも、砂が貴重な資源である認識が薄かった。 砂を利用したモノがいかに日常に溢れ、砂をめぐって国家や「砂マフィア」までもが暗躍し、世界で奪い合っている資源であることが理解できる。 終盤は日本人と砂がいかに向き合ってきたか、実例とともに紹介される。新しい日本史の切り口で面白く読めた。 敢えて言うなら、最後が「果たして物質的に豊かになって我々は幸せになったのだろうか」という、手垢に塗れた定番?ポエムで締められたのことが残念。言いたいことは分かるが、陳腐な本という印象の読後感になってしまった。 つい先日も毎日新聞で砂資源を巡る大型の記事が出ていた。これからの世相を読み解く上で読んでおいて損はないように思う。 https://mainichi.jp/articles/20260709/ddm/003/040/108000c - 2026年7月10日
- 2026年7月7日
- 2026年7月7日
- 2026年7月5日
- 2026年7月1日
日本海軍400時間の証言NHKスペシャル取材班読み終わったずっと気になっていた本をようやく読めた。NHKスペシャルの内容をさらに掘り下げたノンフィクション 本書のテーマは『組織と個人』。 内心では無茶な作戦だと思っていても、そんなことをしては人道にもとると分かっていたとしても、このままでは国家が滅びると予想できたとしても、組織の空気に迎合し保身に走り、声を上げない。 海軍屈指のエリート集団である軍令部の元将校たちは現場の一兵卒を、無辜の民間人を、そして国家そのものを緩慢に死へと追いやった。 Nスペの放送タイトルがストレートに内容を表している 第1回 海軍あって国家なし 第2回 やましき沈黙 昔のことを高所から批評するような無責任さを許してくれない力がこの本にはある。組織で働く全ての人間に心当たりがあるような個々人のちょっとした無責任やその場その場での辻褄合わせが膨れ上がり悲劇的な敗戦へと繋がっていく。 全く自分とは関係ない、と言えない人はいないのではないだろうか。 --------- 以下、刺さった一節 「"反戦平和"というのは誰にも批判できない正論で、あまりに正論過ぎて思考が停止したり、反論や疑問の意見を抑え込んだりする恐れがある。(中略) 当時の背景や事実関係をしっかり踏まえた報道をしてほしい」 - 2026年6月30日
- 2026年6月24日
豊臣家の人々 新装版司馬遼太郎,横山明読み終わったあまりに良かった。 長編小説とはまた違う司馬遼太郎の良さを知った。 本書で描かれるのはタイトルの通り秀吉の周囲にいる豊臣家の人々。 短編でそれぞれの人生が司馬遼太郎節で書き綴られてゆく。 一代で貧農から時の権力者にまで上り詰めた秀吉にはなかなか自らの子が産まれなかった。淀殿のもとに秀頼が産まれるのは晩年。それ以前は縁者や公家などを養子に迎え後を継がせようとする。 秀吉一流の外交や秀頼の誕生が彼らの人生を流転させる。 秀吉の庇護を一身に受けた淀殿や秀頼も、秀吉の亡き後に家康の老獪さの前では赤子同然に大坂の陣で滅ぼされる。 天賦の才を与えられたのは秀吉であり、周りの者は普通の、いや、歴史の表舞台に出てくるにはあまりに場違いな一般人であった。彼と共に栄華を極め、彼の死去により没落した豊臣家。日本史上で類を見ない起伏に富んだ人生を強制的に歩まされた一族の物悲しい物語だった - 2026年6月23日
ヤクザの子石井光太読み終わった大変面白かった。 虐待や家庭問題、教育問題に精通する石井光太だからこそ、「ヤクザの子」に肉薄したノンフィクションが書けたのだろう。 子という弱い存在をテーマにしたからこそ、弱者を徹底的に揺すりたかるヤクザの行動原理と、社会の積極的無関心がより鮮烈に浮かび上がる。 淡々とした筆致がむしろ読後の印象を強くする、そんな一冊だった。 - 2026年6月21日
ポジティブ病の国、アメリカバーバラ・エーレンライク読み終わった大変面白かった。 米国では科学的な根拠の薄い、そして病的なまでの「ポジティブ・シンキング」が蔓延しているのではないかという指摘の書。15年以上前の本だが、全く古びない。 感想を一言にすると「ポジティブ・シンキングとは究極の自己責任論である」 仕事の失敗や成功、人生の不平不満、貧富、それは全て自らがポジティブであるか否かで決まる。 前向きに日々の暮らしに感謝し、目標を書き出し本気で願うことが夢を引き寄せる。 反対に自らの感情をポジティブにコントロールできなければ、幸せは逃げる。 この思考は乳がんの闘病にすら当てはまる。第1章から「乳がんになったことがいかに幸福か」を快活に語り合うピンクリボン運動のグロテスクですらあった。 本来の由来を探っていくと、カルヴァン主義の悲観的運命論へのアンチテーゼとしてポジティブ・シンキングは誕生した。 1980年代に米国企業がレイオフに乗り出すにあたり、去る社員を納得させ(「チーズはどこへ消えた?」)、残った社員の士気を維持するための方便として、ポジティブ・シンキングは大ブームとなる。 さらに人口へ膾炙するようになったのは、ポジティブ・シンキングを商売にする者、研修講師であるとかメンタルコーチ(いずれも少々怪しげな)者たちが、大した元手も大した根拠も不要な“心の持ちよう“に目を付けたことも大きい。 その帰結がリーマンショックであったのではないかというのも本書の独自性のある指摘だ。 サブプライムローンの危険性や市場全体への警鐘を鳴らすような金融アナリストは、「思考がネガティブである」という理由で金融機関内での評価が下げられていた。 ポジティブ・シンキングを利用した企業経営者という属性が数十年の時を経て、自らがポジティブ・シンキングにどっぷり浸かり、誤った判断を下す。寓話的ですらあるエピソードだった。 今日の日本においても「ポジティブ」であることは無条件に良いことと捉えられがちだと感じていた。 直近の衆議院選挙において自民党が圧勝したのも高市首相の「ポジティブ」な振る舞いや「前向き」な言葉が有権者に受け入れられたからだと感じている(この文言は社会的事象への感想を意図したものであり、高市政権への支持不支持、特定政党への支持不支持ないしは肯定や批判を意図していない)。 こうした日本におけるうっすらとしたポジティブ肯定は、今後ひょっとするとネガティブな影響を社会に及ぼすのではないか、そんなことに思いを馳せた。 - 2026年6月13日
ユダヤ人の歴史鶴見太郎読み終わったユダヤ人、と聞いて思い浮かぶのはホロコーストやイスラエル、商人や金融の世界で活躍する人、というふわっとしたイメージしかなかったので、少しでも解像度を上げるために読んでみた。 ・移住先では先住民に比べて土地が持てないため農業に従事しづらく、律法を守ることがユダヤ教の大切な教義であるが故に、文字の読み書きができる人が多く商業や手工業のような分野に多く従事することになった ・読み書きが得意であるが故に、ポーランドや東欧では貴族のもとで官吏として徴税などを担うことがあり、そうした反感が土壌となりホロコーストやポグロムの被害を被る遠因となった ・アメリカがイスラエルに次ぐユダヤ人の拠点となったのは、文化多元主義のアメリカの環境や見た目が近かったことによる他地域に比べた時の差別の薄さが影響 などなど、へぇ〜と思うことが様々あった。 シオニズムに対してはあまり理解が及ばなかったので、気が向けば岩波新書の『シオニズム』も読んでみたい 世界史の知識がないため、中世・近世に関しては大筋を掴むのがやっとになってしまった。 それが全体的な理解の浅さに繋がったのでそのうち山川の世界史教科書を読まなきゃなぁと思わされた - 2026年6月13日
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