

北本新聞縦覧所
@kitamoto_juran
ノンフィクション・新書・小説を好んで読みます。埼玉県北本市の小声書房さんの貸棚ブクブク荘の「北本新聞縦覧所」です。
- 2026年5月19日
ヒトラー、権力までの180日ティモシー・W・ライバック,山田美明読み終わった大変面白かった。 結末は分かってるのにヒリヒリしながら読んだ。ヒトラーが首相に近づく動きがある度に「ダメダメ!」と声を上げそうになる。ヒトラーが首相になる、すなわち独裁者になるまでの半年間を追体験したような感覚。 読了直後の今も少しドキドキが収まっていない。 ヒトラーが首相に就任するその瞬間までの半年間、ナチ党は退潮傾向にもあり、首相任命権を持つヒンデンブルク大統領からもギリギリまで支持を得られていなかった。むしろ嫌われていた。 ナチ党幹部の穏健派で、ヒンデンブルク大統領や他党からの信頼も比較的厚かったシュトラッサーも離反。選挙活動に大金を突っ込むので党財政も破綻寸前。国会の第一党と言えども、むしろ追い詰められた状況。 ではなぜ首相に?大統領やシュライヒャー首相・パーペン前首相などの主流派の中での権力闘争と相互不信がヒトラーに首相の座を与えたと読み取った。 それだけではない、様々な変数がカチッと噛み合い、歴史は最悪の選択をしたのだ。 何よりも印象的だったのが、ヒトラーは誰よりも民主主義と選挙を信じていた。信じていたという言葉が違うのならば、真っ直ぐに民主主義と選挙を徹底的に利用し、使い倒した。 議会の過半数、過半数の得票率を得るために選挙活動に大金を注ぎ込み、得意の弁舌を活かすためにも遊説を徹底的に行う(真っ当な選挙活動のみをしていた、という意味ではない。突撃隊による暴力など、民主的ではない手段も用いていた)。 ヒトラーの言葉である「民主的な手続きに則って民主主義を破壊する」。まさにその過程を詳細に見せられた。 絶品の読書体験です。かなり分厚い本ではありますが、「気になる」方には積読リストの上位に持ってくることを強くオススメします。 - 2026年5月17日
- 2026年5月13日
独裁者の倒し方マーセル・ディルサス,柴田裕之読み終わった非常に面白かった。 書名の通り、独裁者を倒すための案(例えばクーデター、暗殺、外国の介入等々)に対し、それがなぜ上手くいかないのか、ないしは上手くいった場合は何が要因であったのか、具体的な事例を豊富に挙げながら解説されてゆく。 具体的な事例が豊富というところがポイントで、自由な民主主義体制のもとで暮らす私から見ると、権威主義的な独裁国家のトンデモエピソードはまず純粋に面白い。 そしてそのトンデモには実は独裁国家を維持するための構造的な理由があることまでをも理解できることがこの本の最大の魅力。 新聞の片隅に載る遠い異国のクーデター未遂、北朝鮮の分析記事、ロシアの大統領の振る舞い、こうしたニュースの解像度が高まること間違いなしの一冊でした。 - 2026年5月13日
- 2026年5月12日
1秒って誰が決めるの?安田正美読み終わった「時間を測る」ことの歴史や意味、そして1秒をいかに正確に定義するのか、分かりやすく知ることができた。 研究の最先端である光格子時計を用いて正確性を高めることで、どのような未来像が想像できるのかまで示されていて、科学への純粋なワクワク感がよみがえる。 - 2026年5月10日
- 2026年5月10日
読み終わった人生を物語と捉えるか、はたまたゲームかパズルかギャンブルか。 本書はおもちゃ遊びと捉えて「今」を生きることを一つの解として示していると受け取った。 我が身を振り返ると、物語が溢れる世の中に居心地の悪さを感じながらも、複雑さを物語化し分かった気になることへの魅力に抗えていない。 仕事が忙しければ、これを乗り越えればレベルアップするのでは、とゲーム化して捉え、人生という物語の進展として自然に受け止める。それが楽だから。 「今」を受容するのはありのままの複雑さと向き合うことでもある。それができる自信はない。 しかしながら物語化への警句という思考回路ができたことで、「今」から逃げているのではないか立ち返るポイントが生まれたことに本書を読んだ意義を感じた。 追記 物語化そのものの功罪に関しては『人を動かすナラティブ』がオススメの一冊です。 - 2026年5月6日
日常に侵入する自己啓発牧野智和読み終わった大変面白かった。2026年に入ってからで一番の読書体験をしました。 自己啓発本に対し、男性向け・女性向け・手帳術・片付けに分け、それぞれの語りから「世界」がどう投影されているのかを読み解く。 自己が管理する対象には日常的な働きかけを説くのに対し、個人では如何ともし難い社会に対してはあっさりと思考停止の対象となっているという点が印象的。近ごろ、社会全体が自己啓発的になっているという仮説を持って読んでいたので腑に落ちた。 片付け本の章でも風水と関連付けられていたように、自己啓発はスピリチュアルとの距離が近い。自己を高めようとする意識とスピリチュアルの絡みも気になり始めた。 2015年刊行の10年以上前の本。手帳術といえばの『日経ビジネスアソシエ』が休刊して10年近くが経とうとともしている。そんな今の自己啓発的な語りはひと昔前ならばオンラインサロン、最近でも有料noteなどに移行しつつあるように思う。書籍と違い経年で追いづらく、研究対象にしづらいとは思うのだが、今の語りがどう進化しているのか(本書風に言うのなら「闘争」)、全体像を見てみたいと思った。 - 2026年4月26日
起死回生 東スポ餃子の奇跡岡田五知信読み終わった読み味軽くサラッと読めた。仕事で疲れてたのでちょうどいい。 "ネタ"のような東スポ餃子の一番のこだわりは美味しさ。本質を磨き上げることがビジネスを成功させる一番の近道。 餃子の広報担当者がエロ面の記者としてSM女王様を取材しまくっていた経験が餃子の宣伝広報者としてのマインドに生きたエピソードが東スポらしくて良かった。というか笑った。 - 2026年4月23日
読み終わった『坂の上の雲』を読んだ程度の知識しかなかったため、日本海海戦の戦史の矛盾を読み解いてゆくパートは「ほーん」と読み飛ばす感じにはなった。ただ、「つまり、第二戦隊の活躍を戦史ではなかったことにしたのね」程度は理解できる。 その結果としての東郷・秋山神話であり、その起点は小笠原が戦後間も無く新聞社にばら撒いたPR文を東京朝日がしっかり拾って「丁字戦法」を劇的に描いたため。 人間臭く失敗もすれば優柔不断にもなる、という本書が述べる実情に近い形で東郷・秋山の評価が定まっていれば、色々な点で個人崇拝的な様相が強くなる昭和前期の空気とは変わっていたのかもしれない、という歴史のifさえ頭をよぎる。 これほどまでの無傷の大勝を収めている時点で、東郷は名将で秋山が名参謀であったことの証左であり、無理に神格化をしなくても歴史に名を残したはずだ。 本当面白いと思ったのは第二章から三章 軍神広瀬→上村艦隊批判へと世論が注目するように海軍は巧みなメディアコントロールを行った。これは戦艦八島の沈没を隠蔽し、公表後も目立たなくする意図があると指摘。 それが旧軍、特に昭和期の旧軍の隠蔽体質に繋がる。 日露戦争期の海軍におけるメディアコントロール、というニッチなジャンルに触れた本。陸軍についても同様の本があれば読んでみたい。 - 2026年4月13日
空白の天気図柳田邦男読み終わった力のあるノンフィクションはとんでもなく面白い。 登場人物たちを貫くのは職業倫理。倫理というよりその職を選んだ覚悟・責任と言い換えた方が適切か。 気象台に勤めるのであれば「観測精神」を持たねばならぬ、という教えが原爆が投下されようとも終戦を迎えようとも欠測ナシの観測記録に残り続ける。 そして原爆で壊滅状態の広島を蹂躙する枕崎台風。数千の犠牲の背景には戦時下に荒廃した山と荒廃した気象予報制度があった。 日々続く観測、そして困難を乗り越えて作られる原爆・台風の報告書の作成過程。そこからは眼前の事実に対する誠実さが真っ直ぐに伝わる。 人それぞれの「観測精神」を持っているのか?問われたような読書体験だった。 - 2026年4月10日
- 2026年4月10日
野村證券第2事業法人部横尾宣政読み終わった読み返した久しぶりに読み返した。 前半の野村證券破天荒物語が面白い。パンチのあるエピソードが盛りだくさん。 日経の私の履歴書で「昔は万事おおらかであった」と偉いおじさんが語る武勇伝エピソードを原液で飲ませてくれる。 後半のオリンパス粉飾決算事件に関しては、金融スキームが複雑すぎて頭に入らなかった。 - 2026年4月1日
御社のチャラ男絲山秋子読み終わった面白かった。 チャラ男こと三芳部長に対する周囲の独白で構成されている。 そこで描写されているのはチャラ男そのものではなく、チャラ男を軸に周囲が組織・人に影響を受け、影響を与えている様子だ。 最後にはチャラ男のひと突きによって組織が壊れる。しかしその破壊も良し悪しではなく影響に過ぎない。登場人物たちはそれに応じた人生に歩みを進める。 組織の中にいる時も「仕方ない」で多くのことは進むし、組織がなくなっても「仕方ない」で歩むしかない。そんなことを考えた。 - 2026年3月29日
- 2026年3月23日
[真珠湾]の日半藤一利読み終わったTwitterで見かけた「この本を読むと、これがあと3年8ヶ月続くのか、と絶望的な気持ちになれる」という感想が気になりすぎて読んだ。 その視点で読んだからこそだと思うが、陸海軍を含む大日本帝国という超巨大組織が、真珠湾攻撃という目標に向かって、個々人の必死の動きが部品の一つとなり、機械的に遂行されてゆく様を観察するような気持ちになった。 『日本のいちばん長い日』の対となる作品として、読んでみてはいかがでしょうか - 2026年3月8日
「恥」に操られる私たちキャシー・オニール,西田美緒子読み終わった概ね面白く読めた。 「恥」を感じさせられ、「恥」から逃げ出したい解消したいという気持ちを起こさせる仕組みに社会的経済的行動を操られる。様々な事例をもとに、ごく私的である「恥」の感情が社会構造から読み解かれてゆく第5章まで知的興奮を感じながら読んだ。 人種差別主義者やインセルの「恥」の感情を軸に論が進む第6〜7章に違和感があった。 それまでは「恥」をかくことや、「恥」をかかされることを社会構造から解き明かされていたのだが、この2章は「恥」に操られ、差別主義に傾倒し、「恥」を再生産する愚か者たちを突き放した目線で見るような筆致に思えた。 そうした思想に傾倒する人の起点にも「恥」があることが示されている以上、それまでの章と同様に社会構造の方を冷徹に捉える内容で読みたかった。 (章のタイトルからも、別の視座から「恥」を捉える意図があったのも明確ではあるし、それを分かった上でも気になってしまった。また念のため、そうした思想への共感を示す意図はない) 8章以降で、社会運動で「恥」を逆手に取り、弱者の武器として使う事例など、その後も面白かっただけに、どうしても気になった。 - 2026年3月2日
訴訟王エジソンの標的グレアム・ムーア,唐木田みゆき読み終わった大変面白かった。堀元見が「ガチおもろ本」と紹介する本にはハズレがない。 エジソン、ウェスティングハウス、テスラの3人の天才たちの開発競争と容赦のない法廷戦術そして頭脳戦に続きが気になって仕方なかった。 一見すると小難しい面白みのない話と思われかねないが、主人公の若手弁護士ポールの目を通すことで、電気や法律の専門的な内容もすんなり入ってくる。 こんなガチおもろ本があまり知られず埋もれてるなんてもったいない! - 2026年2月25日
となりの陰謀論烏谷昌幸読み終わった陰謀論の入門書。「おわりに」が解説付きの参考文献集になっていて、徹底的に入門書を志向している。 陰謀論を唱える者が権力を持ち、唱える陰謀論を放っておくと陰謀論を認めるか否かが権力に従うかどうかの踏絵になる。常識外れであればあるほど踏絵としての力を持つ。 紙幅を割かれていたトランプ大統領の陰謀論政治については、陰謀論者には通じる犬笛を吹くことで絶大な支持を得たとのこと。『福音派』で言及のあったように、何かの信仰や思想のある人に分かる言葉で語りかけ、熱狂的な支持を得ることがトランプ流の選挙戦術であることも見えてくる。 「奪われ感」つまりは被害者意識というのも陰謀論が生まれる大きな要因。『ネットはなぜいつも揉めているのか』においても被害者意識がネット炎上の要因の一つと触れられていた。 被害者意識が現代を読み解くキーワードのように思えてきた。 - 2026年2月24日
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