朝日新聞2025年1月29日夕刊エンタメ季評。

千夜一夜物語とかサラゴサ手稿の感じだなと思って読んでいると、そのサラゴサ手稿が出てきて少しびっくりした。 空間も時間も異なるいくつもの夢物語が入れかわり立ちかわり現れ、融合していく。 位相偏差なるSF的設定に興味津々で、迂闊な自分は葉巻シェルターでの話に収束するものと思っていたら、まさかの結末！ 本作の読書体験は、すなわち位相偏差体験であることに、最後で気づく。

第2回配本が手元に来る前に読み出そうと⋯

============ ▶️【2025年1月】購入本紹介・5冊あるよ https://youtu.be/IEICrvC25iU

素晴らしい。頗る好みで隅々まで堪能した 不思議な物語が幾つも詰まったこの“物語”は、列車のコンパートメントでのひょんな出会いから始まる（チェスタトン好きに嬉しい導入部）。のだが、あれよあれよと場面も状況も変わり、浅い夢の連なりを潜ってより深い夢へと墜ちてゆく眩暈感に包まれっぱなしだった（悪夢の如き展開にも魅入られていた） 終始音楽に溢れているのも楽しくて、オーストリアらしさと“バロックの軽さ”を味わえて大変満足。 廃墟建築顧問官、巨大葉巻シェルター、引退したカストラートと七人の姪、消えない夢の記憶…