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読了本の記録...✍️
  • 2025年11月22日
    優等生は探偵に向かない
    優等生は探偵に向かない
    前作(自由研究には向かない殺人)に引き続き、高校生のピップが魅せる推理に完敗。今回新たにポットキャストやSNSを使った調査にワクワクさせられた。 友人の兄の失踪の裏に隠された真実に『よく出来たミステリだなぁ』と感心。 次回作、早く読みたい!けど…。 ただならぬ不穏な予感にドキドキ。 みんなハッピーエンドであれと願うばかり。 (前日譚を先に読んでいるので、「あとがき」にて書かれていた内容から嫌な予感がしている。) 🕵️‍♀️前回の事件で友人の心のケアをしつつ、新たな事件に挑むピップ。少なからず自身も心の傷が癒えていないはずなのに…。その中でもやはりラヴィの存在はピップにとってかなり癒やしなんだろうなと感じる部分が作中に沢山あって良かった。 🕵️‍♀️狭い街だから、身近な人から意外な証言が得られたり。そこで繋がってくるんだ…と驚かされる展開ばかりが待っているので読む手が止まらまくなった。 🕵️‍♀️後半に行くにつれてピップの精神状態が心配に。読んでいて文字の配置からも不安定さが伝わってくる。 🕵️‍♀️「約束する。ピップもだよね?」「がんばってみる」P.531 …いや、もうフラグですやんー!!!!!!!!! 物語の締めもまた不穏。これは3作目はやく読まねば。
  • 2025年11月12日
    ある日、森の中で クマさんのウンコに出会ったら
    『もともとクマが好きで研究を始めたわけではない。 卒論で扱うにあたり調べるうちにクマの魅力にどっぷりハマり、気がついたら研究者になっていた』 そんな作者さんのクマ研究の道のりをまとめたエッセイ。 近年、クマの被害が深刻化してきて、他人事では済まされないなと感じ始めた私。 たまたまXで見かけたこちらの1冊に興味が湧き、即図書館で予約。 🐻「はじめに」がもう既に読んでいて面白い。目次をみて、また更に面白い。興味が湧くようなタイトルばっかり!ワクワクしながら読み始めると、読みやすい&面白い!で読む手が止まらずあっという間に1章読了。 最近読書時間がまともに確保できない私でも短時間でサクサク読み進められちゃうくらい面白い内容。 【1章 ウンコを集めて卒論を書く】 🐻『原則としてクマが食べるために生きた人間を襲うことはない。ただし、死体はたべるかも』P.21 ここ最近はクマの人身被害や目撃が後を立たず、遂に自衛隊まで派遣されるレベルになってきたから、生態系の変化が本当に加速しているんだなと恐ろしくなった。 🐻『11月〜12月頃に冬眠、翌年3月〜5月に冬眠を終える。…冬眠中に飲まず食わずで出産。繁殖期は5月〜8月。晩秋に着床。もし、秋に十分な栄養を蓄えられなければ、受精卵は着床できない。』P.21~22 今年は山での餌が不作の年。って事は、この冬には子グマの数が少ないのかどうなのか…。読んでいてそればかりが気になった。 💩『クマのウンコは食べた物の匂いがする。桜の花や実を食べたあとのウンコは桜餅、植物の葉を食べた後ならお茶の葉のような匂いがするのだ。』P.24 …いや、面白過ぎるでしょ。ってのが私の感想。その後の岩手のクマ研究者との会話はなかなか衝撃。(面白い) 🐻クマ棚・・・クマが木に登って枝先の方になっている果実を貪り食った跡。枝ごと強引に手繰り寄せるため、不自然な形に曲がったり折れたりして棚状に固まっている。P.38 これは知らなかったし、多分見たことがある。鳥の巣だと思っていた物がまさかのクマ棚…😨この冬、クマ出没多発地域で葉の落ちた木々をよーく観察しようと思う。もちろん、山には入らず遠くから。 💩ウンコの中のタネを取り出してプランターに植えて発芽させ、予想した植物と合っているのか確かめたり、鳥のくちばしだと思っていたものが実はクマの爪だったり。ウンコから得られる情報の多さに感動。研究万歳🙌P.47.48 【2章 俺はクマレンジャー】 🐻『別にクマは鈴の音を嫌っているわけではない。人間を避けているのだ』P.67 鈴の音が嫌なのかと思っていたけど、「鈴の音=人間」という認知があって避けられていたんだと知れたけど、最近のクマは鈴の効果なしらしい。クマにとって人間を恐れる対象じゃないと認識したってことなのか、鈴をつけていると逆に居場所を教えているようなものなんじゃないかと心配になった。 🐻『針葉樹の上も森のクマ達の間で人気がある。』P.92 あんなに大きな重たい体で軽々木に登って休むなんて信じられないし、知らずに木の下へ人間が入っちゃったら…と考えると恐ろし過ぎる。 ーキリがないのでここからは厳選ー ・どんぐり凶作の年には行動範囲が広くなる ・短期間(秋)でかなりの食べ物を食べる。そのため凶作年はクマたちにとってどれだけヤバいことか。(9〜11月に1年の80%のカロリー摂取をする。) ・クマハギ(木の皮を剥いで舐める)はどんぐり凶作翌年の夏や、暖冬の年の初夏に多い。 ・食べ物の好みが家系それぞれ。(肉を母グマが食べれば子も食べる。) ・石油、石炭ペンキ、シンナー、防腐剤の匂いが大好き。 『過疎化でクマとの遭遇が日常化』 この目次ページに書いてあることが今まさに起こっている問題そのもの。 「状況が変われば鈴の意味も変わる」 人間が居るから避けとこ〜から、ここに餌がありますよ〜の意味に変わるのは気付いていたけど恐怖。 クマの糞は「多様な動植物の糧であり、この森の明日」という最後の締めの言葉にグッときた。 出会えば怖い動物No. 1なのは変わらないにしても、森でひっそり暮らしているはずのクマがなぜ人里に出てきて、木の実や草花を食べるはずのクマが人間を食べるのか。それを小池さんの研究を通して深く考えさせられた。森にいる動植物は死んでも森の一部になって自然を豊かにしてくれる。一方で人間は?森を奪い、管理もろくにしない(藪や食糧や燃料等)、死んでも自然に還らない。クマ側からしたら一番害なのは人間なんだろうなぁなんて思ったり。もちろん人を襲うことは許される事ではないけれど。 この本をきっかけにクマの研究や植物の研究に興味が出る人も多そう。それくらい小池さんのユーモアと研究の成果が面白く書かれていた。 「クマに興味を持ってくれたら大成功」と書かれていたけど、まんまとハマったヤツがここに居るので、小池作戦は大成功。
  • 2025年11月5日
    受験生は謎解きに向かない
    受験生は謎解きに向かない
    ピップシリーズ「自由研究には向かない殺人」の前日譚。 “高校生のピップに友人宅で架空の殺人の犯人当てゲームの招待状が届く。舞台は1924年、孤島に建つ大富豪の館という設定で、参加者は同級生とその兄の7人。当初は乗り気ではなかったピップだが、次第にゲームにのめり込んでいき…” 登場人物達が役になりきって、役名で話が進んでいくから人物把握に苦戦はしたものの、1作目しか読んでいない私でもしっかり楽しめる1冊だった。 ・登場人物達の名前と役名が全然頭に入らず。この友人達はのちの作品にも登場するらしいので覚えておきたいけど…自信がない。 ・ピップの謎解きに感心させられた。相変わらず鋭い目線。ゲームを考えた人も凄いけど、なにより作者さんが凄い。作中には1作目を読んだからこそ分かる意味深な場面があったりとワクワクが止まらないだけじゃなく、2・3作への期待値も爆上がりになる作品だった。また、物語の長さもちょうどいい。
  • 2025年10月28日
    羊と鋼の森
    羊と鋼の森
    調律師のお話🎹 どの世界も極めようと思うと奥の深さに挫けそうになったり迷う時もあると思う。それを『森』に例えるなんて、なんて素敵なんだろう。 この作者さんの描く物語は表現が凄く綺麗で読んでいて胸がときめく。 作中に登場する原民喜の一節、私も好きになった。 【「こつこつと守って、こつこつとヒット・エンド・ランです」 「ホームランを狙ってはだめなんです」】(P.16) ピアノに触れてこなかったから調律師という仕事もちゃんとは知らなかったし、こんなにピアノ自体が奥の深い物だとは思わなかった。 先輩の仕事を見て技術を盗んだり、お店のピアノで練習したり、ピアノに沢山触れることでこつこつ地道に極めていくしかない。ホームランを狙おうとすると調律が乱れてしまう。とても難しい世界なんだと知った。 【「祖母が作ってくれたミルク紅茶。小鍋で煮出した紅茶にミルクを足すと、大雨の後の濁った川みたいな色になる。鍋の底に魚を隠していそうな、あたたかいミルク紅茶。」】(P.19) 本当にこの作者さんは別のものを自然のものへ例えるのが上手すぎる!普通、大雨の後の濁った川なんか飲みたいと思わないのに、ここでその表現が登場しても嫌な感じがしないどころか温かみを感じるのがとても不思議。でもイメージが湧きやすくて、この作者さんの表現が本当に好き。 【「俺の見てる景色とは違うものが見えてるんだろうな」】(P.33) 山育ちの外村(とむら)は山に咲く花ならなんでも知っている。それが当たり前の外村に対して言った先輩の柳さんの言葉。同じ景色でも知識の違いで見えてるものが違うってやっぱり人それぞれの感性とかもあるだろうけど、育った環境が大きいと思う。外村の感性が結構すきだなぁと思ったのと同時に、ピュアな外村に不安にもなった。 【「明るく静かに澄んで懐かしい文体、少しは甘えているようでありながら、きびしく深いものを湛(たた)えている文体、夢のように美しいが現実のようにたしかな文体」 「原民喜(はらたみき)が、こんな文体に憧れている、と書いていたのですが、しびれました。私の理想とする音をそのまま表してくれていると感じました」】(P.57) 文体に限らず、他の物に置き換えて考えてみると確かに深い言葉だなぁと。 【朝早く、森を歩いた。〜エゾマツの鳴らす音を、僕は知っている。だから懐かしいのか。だから魅かれたのか。】(P.154) 本当に自然の表現が綺麗!!!季節感や自然を感じ取りやすい文が凄く好きな私にとってここの場面は胸がときめいた。 【こどもだなんて言われたのも、生まれて初めてだった。〜なんだか気持ちが軽くなった。そうか、こどもか。わがままか。】(P.171) ここから外村の自我の芽生えというか、ここから始まったって感じがして良かった。 【わがままを究めればいい。】(P.172) わがままになれるくらい、自分があって、主張したいことがあるって素敵なことだと思う。今までの外村はそれを見つけられずにぼんやりと生きていたんだなと思うと、ここで目指すべき道が見つかって良かったね😭と謎の親目線発動で感動。 【調律師になる。間違いなくそれもピアノの森のひとつの歩き方だろう。ピアニストと調律師は、きっと同じ森を歩いている。森の中の、別々の道を。】(P.183) 森🌳この表現が掴めそうで掴めない。なんとなくは分かるんだけど、明確に言葉で言い表せない悔しさ。私の語彙力、頑張れ。 表現が素敵なところがありすぎて書き出せないくらい本当に素敵な言葉の詰め合わせだったこちらの作品。 気持ちがわなわなする感じとか言葉で言い表せないような感情をすんなりと書いてあって、読みつつ気持ちの共感が止まらなかった。 宮下奈都さん、好きな作家さんの1人になりました。
  • 2025年10月16日
    Nの逸脱
    Nの逸脱
    普通じゃない、“逸脱”した人達のお話全3話。 どんでん返し?イヤミス? とにかくどのお話もスッキリしない。複雑な読了感。 でも先の読めない展開に引き込まれていく。 各物語の序盤から『何があった?』と思わせる作りにまんまとハマり、読む手が止まらなくなった。 暴力的な表現が多いからほんわか系が好きな方には向かないだろうけど、個人的には結構好きなジャンルだった。 🦎場違いな客 爬虫類専門店で働く篤。ある噂話をオーナーから聞いた時のことを思い出していた。 『もし、場違いな客がそれを買って行ったら、そいつはー』 序盤の序盤から物語へグッと引き込ませる文に先の展開が凄く気になって、どんどん読めちゃう。ペットショップでの出来事やその後に待ち受ける出来事、そして衝撃のラストに呆然。 👠スタンドプレイ 高校教師の智子は人気のない住宅街でタクシーを捕まえて乗り込んだ。座席の下で、破れたストッキングの足裏とハイヒールのインソールの間に挟まった砂利をひそかに払い落とし、不安を抱えながら運転手と会話する。黒いロングコートを着て、ハイヒールを履いた、背の高い痩せたマスク姿の女…まるで怪人のような自分は警察へ通報されるのだろうか… こちらもやはり序盤から展開が面白い。どうしたらその場面へ繋がるのか全く分からなくてワクワクしながら読んだ。 小学生の智子が書いた作文に「アルジャーノンに花束を」の小説を読んだ話があって『小説の中で別の小説が出てくるのって面白いよなぁ』とか思いながら読んでたら、後々その場面が重要になってきて、印象の残し方が凄いなと感心。(私だけかも) 物語の中盤「それがすべての始まりだった」の一文を見て、『え!?ここからが!?もう既に色々始まってたけど!?』となり、更に物語に入り込んだ🥹 ー私はきっと、逸脱したかったのだと思います。 ここでタイトルを回収できた様な気がして、“逸脱”の意味を深く考えさせられる。(Nの意味は分からない。) 🔮占い師B 中年オバハン出張占い師、坂東イリス。そして客として現れた一見有能知的で真面目そうな見た目の秋津。坂東は会話をしてみて気付く彼女の印象を心の中で口にした。『こいつ、見た目に反してバカである。』 もう面白い。この時点で面白い。秋津がとにかく面白い。坂東と秋津の掛け合いがテンポ良く進んでいくのでどんどん読める。途中「人の未来と過去が見えるのです」とカミングアウトする秋津。こちらもその先どんな話になって行くのか全く想像がつかない中で読み進め、終盤になってとんでもない展開になった時には『ひぇ〜』と若干引くくらいの衝撃さ。3作中、このお話が1番印象深いのもきっとその場面のせい。 緩急のかなり強い作品だったけど最後の最後には伏線回収も少しあって、登場人物たちの繋がりを楽しめもした。 そして何より坂東が1番好きだというタロットの〈吊るされた男〉のカード。これがいい味出してる。
  • 2025年10月9日
    静かな雨
    静かな雨
    記憶が残らないこよみと、そんなこよみと共に居ようと決めた行助。 妙にリアルな関係性の日常を覗いた様な物語に時々胸をぎゅっとさせられる。 物語全体がタイトル通りのゆったりとした穏やかさ。 街並みや自然の表現が個人的にとても好きだった。 【浮かない。つまらない。腹も減らない。こよみさんのたい焼き屋が閉まって、四月の空は色をなくした。】(P.32) この方の自然×心情の合わせ技で表現する技術が凄い。 気持ちも風景も頭の中でイメージができて、2度美味しいと言うかなんと言うか(語彙力) 【「あなたはあなたにとっての世界を立ち上げるために、学校に行ってるのではないかな」】 【「もしもまったく興味を持てないんだったらしかたがない。〜だけど、面白いと思えるものがあったら、それが世界の戸口なんだよ。あなたにとっては突破口かもしれない。いつでも開ける。そこからあなたは外に出られる」】(P.58) 高校生から相談をされたときのこよみさんの返し。 素敵すぎない?って思って付箋を貼った。私ももし子供に同じようなこと言われたら、この言葉を授けたい。 【「毎日の生活の中での思いで人はできてるんじゃないかと思う」】(P.82) 「人間ってなんでできてると思う?」と聞いた行助。すかさず「おっぱい」と答える姉も『母親だなぁ』と思うけど、結局は「記憶」だと言った。でもこよみには記憶が残らないから、『生きていく甲斐がないみたいじゃないか。』と嘆く。姉から逆に聞かれた時に「思い」と答えたけど、本当は「思い出」って言いかけたよね?絶対そうだよね?思い出も記憶も同じだもんね… 言いかけて気付いた行助。思いに変換することで自分を納得させているような気がして切なかった。 【「あんた、若い人の可能性を摘むようなことを言っちゃいけないよ。若い人には無限の可能性があるんだからね」】(P.87) 【どうして若い人には可能性があると、そんな乱暴なことを平気で言えるのだろう。確かに、何者かになる可能性もあれば、ならない可能性もある。銀行強盗をする可能性もあるし、しない可能性もある。そういう意味では無限かもしれない。】(P.89) 高校生の進路相談で大学へ行くか行かないかの話の途中でおばさんが口を挟んできた場面。大学へ行くことが必ずしも未来の可能性の選択肢を広げる術ではないし、むしろ高卒で働きに出た方が広がる可能性だってあると思うのに…これだから老人は🤷‍♀️と老人に厳しめな私。昔の人はきっと学歴が全てで表面的なレッテルしか見ないんだろうね。でも世の中蓋開けてみてみたら、無職や事件を起こす人って大卒だったりお堅い仕事してたりするよね… 行助がどうして…と思う気持ちがよく分かる場面だった。 【「ピアニストになるつもりはなかったから。ピアノの試験をされたり、順位をつけられたりするのは嫌だと思ったの。」】(P.90) 高みを目指そうとしてる訳でもなく、趣味で楽しくやりたいのに習うと必ず試験や順位で甲乙を付けたがる。勉強もそう。私もこれが嫌で中学からは学校へ行かなくなったし、こよみさんのこの言葉が当時の私の気持ちを明確にしてくれた気がした。 【明け方の雨に静かに泣いていたこよみさんを僕は忘れない。】(P.106) タイトルの静かな雨の意味がここにギュッと詰まっているような気がして、最後の最後に来た好きな場面。 物語全体が波のない穏やかな湖のような感じでゆったりと流れる日常。ちょっとした問題もあるけれど、お互いがいれば別に大したことないんじゃないかと気付く行助がとても頼もしくみえた。
  • 2025年9月26日
    ほたるいしマジカルランド
    遊園地で働く人々のあれこれ。 得意なこと、苦手なこと、良いとこ、だめなとこ、抱えてる事情も、考えてる事も、人生の目標も違う。全部違うから面白い。 欠点だと思っていた部分が光り出す時もある。そうやって気付いてくれる人もいる。 🎡月曜日 荻原紗英 “自分は「恥ずべき思考」で心をいっぱいにしてしまうあさましい人間なんだよな、とも思う” 容姿にコンプレックスを持ってたり、自信が持てなかったり、あの時〜だったら…とか考えて嫌になったり。 “そんな事ばかり考えている考えている人間には望みを実現することなど永遠に無理なのだ。” やりたいことがあるけれど『どうせ私なんか…』と足踏みしてしまうことがよくあるからこの紗英の考えに凄く共感できた。 「すごいまじめな子なんや。物覚えがよくて、細かいところによく気がつく。」 社長からみた紗英の評価は本人が思ってるよりもうんと良くて、本人に言ってあげてよ!って凄くもどかしく思った。 🎡火曜日 村瀬草 占いなんか信じていないと言う割に毎朝のチェックを欠かさない村瀬。ちょっと訳ありな過去を持っていて、地元には帰りたくないメリーゴーランド好き男子🎠なんだかちょっとツッコミどころの多い人。変なプライドが高いことを過去に付き合っていた人から指摘されたらしいけど、本当にその通りだなと。 “最悪だ、いや激悪で超悪だ” そう思わずには居られなくなるくらい恥ずかしい経験って誰にでも1回はあるよねと少し微笑ましくなった。 紗英との会話部分では村瀬の視野の狭さに驚き。自分の世界しか知らない感じがして、今まで周りとの接触を避けてきたんだろうなぁと感じさせる思考ばかりで少しイラッとも来る。 「なんでも難しく考えすぎ」だと言う社長。この社長、本当に社長なのか?と思うくらい従業員をよく見てる。 🎡水曜日 篠塚八重子 子供の頃からただそこに居るだけで不興を買うことがなぜかよくある八重子。自分と世間との間には、いつも少しだけズレがある様に感じていて、周りに上手く溶け込めず、何かあれば責められ、「母親失格」と元旦那から言われ、息子とも会えない八重子が凄く不憫でならなかった。不器用ながらに一生懸命生きている八重子のお話に涙。 「私の人生はとてもクソでした」 そう簡単に言ってしまえる野上さんの存在がまた何とも絶妙で、八重子の気持ちを一緒に分かち合える本当の相手にやっと出逢えたんじゃないかと安堵。 🎡木曜日 山田勝頼 ガーデナーで喋るのが苦手な山田。奥さんがハツラツな方過ぎて夫婦なのが不思議なくらい。娘に厳しく接するのが父親のつとめであり娘のためと思っていたのに、もっと違う接し方があったと気付いた時にはもう手遅れになってしまったお話は悲しくて堪らなかったし、こちらもまた不器用ながらに父親という役目に一生懸命だった事実に涙。このお話が1番好きだった。 🎡金曜日 国村佐門 自分じゃなくて「佑だったら」…と常に気を抜くと考えてしまう佐門。弟のように育ち、まるで家族同然の佑への嫉妬心を隠しながらプライベートも仕事もこなす佐門に尊敬。訳あり同級生の幹を「助けてやりたい」と思っているのにいつも手柄は佑。手が届きそうで届かないもどかしい感じが何ともリアルだなと。 彼女のあおいとの関係は唯一気を使わずに居られる心休まる場所なんだろうなと感じさせた。 🎡土曜日 三沢星哉 この人は初っ端からいけ好かない。親や祖父の臑齧りで考えが浅はか。環境がそうさせたのかもしれないけど、自分で学ぶべきことは沢山あったよね?と言いたくなった。けど、裕福な家庭ながら悲しい過去やメリットや見返りばかりを求めてしまう三沢に同情。マジカルランドの従業員たちが見捨てるような薄情者じゃなくて良かったね😭と最終的には安堵。 🎡日曜日 すべての働くひと 各ストーリーから徐々に伏線が回収されたその後のお話。何よりやっぱり山田さん!1番泣ける。 そして社長の「わたしは石が好きです」からの展開がもう最高すぎて…🥲こんな社長がいる会社は間違いなく働きやすいし、伸び伸び楽しんで働けるんだろうなと感じた。
  • 2025年9月20日
    神様の定食屋
    神様の定食屋
    定食屋を営んでいた両親が突然亡くなり、未経験の兄としっかり者の妹と神様の力を借りてお店を守っていくお話。 ファンタジーでユーモアのある登場人物たちにクスりとさせられたりうるっと来たり。 各エピソードも料理も抜群にいい物ばかりでした。 ☆一皿目 チキン南蛮 お客様のこともお店のことも料理のことも何一つ真剣に考えていない主人公(兄)。とあることから、神様にお願いした通りの人物が自分に憑依するように。 こちらの1話目ではキャベツの千切りすら出来ない兄にお世話焼きおばちゃんが憑依。料理の作り方から相手を思う気持ちまで教えてもらい少しずつ成長していく様に心がじんわり温まる。息子を思い、チキン南蛮を作るおばちゃんのストーリーもまた良い🥲チキン南蛮、食べたい…大葉入りたっぷりの千切りキャベツを塩とレモンで。 ☆二皿目 天たまかけご飯 和食料理人の銀さんが憑依。和食料理人だけあって、天ぷらの場面はすっごく美味しそう。特別な相手への特別な料理。卵の天ぷらは作るの難しそうだし、シンプルながらこだわりの詰まった料理で真似は出来なさそう。作中の兄と一緒にヨダレが止まらなくなった。 不器用で口下手で無愛想だけど優しい銀さんと元弟子のイタリアンシェフのたまさんの関係がまた…🥲「裏メニュー」に込められた思いが良かった。 ☆三皿目 具だくさん豚汁 どことなくセレブ風な和服おば様が憑依。最初は嫁いびり姑と無礼ギャル嫁だと思ったけど…。体調の悪い相手への思い遣り料理って本当に相手の気持ちが分かってないと出せるもんじゃないし、食事の作法などの礼法も日本人たるもの少しは覚えておかないと恥ずかしいな…と改めて実感。家庭の味、私も意識して日々のご飯作りに励みたい。 ☆四皿目 フレンチ風オムライス 神にも「ちとうざい」と言われてしまうフランス人が憑依。テンション高めで素晴らしい回。バターと卵を沢山使ったオムライスは愛重め。贅沢なほどの卵を使いクリーム状になるまで混ぜる執念はきっと愛あってのポイント。スフレのようなオムレツが乗ったオムライスに読みながらヨダレが出る🤤亡くなっても亡くなる前と変わらぬ愛情をさらけ出すフランス人と愛する人を亡くした失望感に対応しきれない女性。謝るフランス人に涙。相手を思いやる気持ちに気付いてくれる人もいると自分が持っていなかった視点に気付けた兄。この回は凄く泣けた。 ☆五皿目 「てしをや」名物・唐揚げ 遂に両親が兄妹に憑依。意外とあっさりしてる両親に拍子抜け。感動の再会じゃないんだ…??とか思ってたけど、残された側にも残して逝った側にもそれぞれの思いがあって、あまりあれこれ口にしない両親の思いに涙。別件で事件もあったりと不穏な流れだったけど、そんな事にも動じずでーんと構えて居る様にさすが親だなと。後半はやっぱりそうだよね…な展開にまた涙。 ☆おかわり ほくほくおでん 妹目線でのお話。少し惜しいと思ったのが仕込みの場面。今まではレシピのようにしっかり書かれていた仕込みの部分がほぼない!!!真似したかったのに!!おでん食べたくなったから作るけど。でもこの回で伏線が回収されて、なるほどね〜な事が分かりスッキリ。 どうやらシリーズらしいので、いつかこの続きもまた読みたい。
  • 2025年9月19日
    ([ん]1-15)夜更けのおつまみ (ポプラ文庫 ん 1-15)
    初のデジタル図書館(デジ図書)利用✨️ 記念すべき1冊。 有名作家さん➕noteで開催したコンテスト大賞受賞作品(計32名)による酒とつまみに関するエッセイ・アンソロジー。 美味しそうなおつまみたちにお腹を空かせながら読み進め、作家さんたちの日常を覗けたような気にもなり、素朴な食材に親近感。各短編の最後に挿絵が入っていて、おつまみのレシピまで載っていたりいなかったり。 ☆俺の生ハム/東山彰良 生ハム大好きな私、一発目からこのお話でヨダレが止まらなかった。自宅で作る生ハムレシピまで載っていて作りたいと思ったけど、残念ながら『食中毒が怖い』の気持ちが勝った…。「わたしのおつまみはまさに食って良し、造って良し、語っても良しなのだ。」すっごく納得の一節。 ☆タジン鍋/西川美和 「デニーズのビールで十分だ。」とか「見栄え、絶望的。がうまいです。間違いなく。」は凄く親近感だし、名言でもある。作家さんたちの酒とおつまみって、さぞかしお金が掛かって居るんでしょうね。と勝手に僻んでいた私だけど、全然そんなことなかった。2500円のコースランチよりも、前の晩タジン鍋でごったごたに火を通した食材たちを温め直し、お弁当に詰めて持っていって隠れて食べる(見栄え絶望的だから)ランチの方がうまい。と言う彼女のエッセイがお酒もおつまみも人柄もとても魅力的でした。 ☆野菜でビールを/田中啓文 「寝静まっている嫁と子を起こさないで済む…という超簡単なアテはないものか。」これがすっごく共感。レンジを使うとうるさいし、ガサガサパリパリカリカリ音が鳴るお菓子系もちょっと…。いかに音が出ず、洗い物が出ず、楽に美味しくお酒も楽しめるかが重要なので読みながら、『わかるぅ〜』が連発だった。おまけにこの方、某フライドチキン店のコールスローが好きとか。これもまた『わかるぅ〜』 ☆おばあちゃんの洋風揚げ餃子/美村里江 お酒を飲めない人目線の酒とおつまみに関するエッセイ。これがまた面白かった。旦那さんも飲めないから夫婦で晩酌とかはしないけど、おつまみは大好き。帰宅した旦那さんに冷えたグラスとビールを運び、ものの数分で美味しいおつまみを2.3品提供するというシチュエーションに憧れているらしいけど、これもまた共感。そして何よりこの方、女優さんの元「ミムラ」なのが驚いた。 ☆私の育てた冷蔵庫/オカヤイヅミ 「飲み続けたい」≒「複数のつまみをちょっとずつ食べ続けたい」これがまたしても共感。ダラダラと飲んでダラダラと食べ続けたいから、ガッツリのご飯中の晩酌はちょっと違う派の私。お酒が良くなってまだお腹が空いていたら〆にガッツリご飯が欲しいけど、お酒を飲まない人しか周りにいないから理解されない。理解者がここに居た!と嬉しくなった。 ☆夜ふけ、大豆の活躍/久住昌之 長野の醤油豆が登場して大歓喜。私も大好き!!ご飯にも合うし、そのままでも美味しいし、キュウリにも合うし…最高の調味料&おかず!食べたくなってヨダレが止まらなかった。
  • 2025年9月13日
    義経じゃないほうの源平合戦 (文芸社文庫)
    かの有名な源頼朝(兄)と義経(弟)の間に挟まれ、『自分には何の才もない』とクヨクヨする範頼。でもそんなこと言っていられない鎌倉時代。 史実を元に創作も加え、源範頼目線で語られる物語ー。 Kindleにて目を奪われたこの作品。何故だかわからないけどとても読みたくなって手を出してみたら、オツムの足りない私には案の定難しい…。 ChatGPTに頼りながら読み進めていくと、何となく理解できて面白い。戦の場面はなかなか緊張感があって、戦なんてなんのこっちゃ分からないなりに風景が頭に浮かぶ。範頼の情景も乗り移ってくるかのように一緒に喜怒哀楽を楽しめる。 そして物語が進むにつれて範頼の魅力に引き寄せされる。 鎌倉時代の資料が本当に少ないらしく、詳細が分からないことが多いそう。それならば、あとがきに書かれていた『マイ範頼』を私の中にも見つけたい。これは暫く調べちゃいそう…。 「自分の性格が武将に向いていないことはすぐに痛いほどに自覚させられた。」 最初は他の兄弟に比べ、自分にはなんの才能もないと落ち込む範頼。そこに古株御家人の天野遠景(とおかげ)。範頼の良き理解者過ぎて、この人居なかったらどうなっちゃってたの!?ってレベル。物語が進むにつれて範頼が立派になっていくのは遠影あっての事。 二人三脚で幾つもの修羅場を生き抜いた先に、やっぱり頼朝。超難関頼朝。 基本的に頼朝(兄)は人間じゃない。血の繋がった兄弟に〇〇と戦ってこいと命じ高みの見物したり、戦を仕掛けたり。機嫌を損ねると殺されるかもしれない。なんて奴だと作中の範頼と一緒にウンザリ。 この物語を読了後、ChatGPTに聞いたりGoogle検索して調べたら、範頼の最後が…。 「お前だけは許さん😭😡❕」ってなったよ😭
  • 2025年8月29日
    満天のゴール
    満天のゴール
    舞台は星空が美しい医療過疎地。 人生のどん底のシングルマザー、人生に責められ続ける医師、人生を諦めている老女。 3人の出会いが、人生を変えてゆく。 希望をもたらす、人間味溢れる医療小説📕 〜 生とはこんなにも切なく、死とはこんなにも温かい〜 身勝手な理由で実家へ帰っておいて、実の父が怪我で入院して面倒見なきゃいけないとなったら東京へ帰ろうとする奈緒。おまけに兄か兄嫁に迎えに来てもらって、父の面倒を丸投げしようとする。この時点でこの人に対してあまりいい印象ではない🙅‍♀️ (P40.P43) 子供の駄々こねみたいな事を兄と夫にしていて、段々とイライラしてくる。そりゃ不倫相手から「もっと大人な対応しましょうよ。」と言われるわけだと呆れる。(P45.P47.P63.) 妻であることに安心しきって、若さや女としての価値が目減りしていることに鈍感で自分を磨かず、危機感もなかった。(P89.P88.) これに関しては私も自分磨きを怠っているから同感。夫婦とはいえ、やっぱり女であることを忘れてはいけないなと感じる時があるから、これは忘れちゃいけないよなぁと反省。 「もう帰れよ!」(P90) ここで涙腺緩み第一波🌊泣けた。十歳の子がしっかり自分の行く道を決めて、守るべきものを理解してる。奈緒にとって心強い存在だろうなと感じた。 「親ってね、自分が持てなかったものを子供に持たせたがるものなのよ、厄介なもんでね。」(P181) これは本当にそう。厄介。けど理想を押し付けてくるのは子の負担だから、程々にして欲しい。と、ここは激しく嫌悪。 インフルエンザって本当に舐めてちゃいけないなと改めて思わせる場面。(P182) 「そうか。じゃあ今日のこと、憶えていてくれないか。」(P214) 涙腺緩み第二波🌊号泣😭十歳の少年には酷じゃないかとも思うけど、これも大切な事実。こんな体験をした子は絶対心の優しい人になるよ…と涙が止まらなくなった。 衝撃の伏線回収💥(P225) 多分、涼介と奈緒と同じ気持ちだったと思う… 子供が感じる幸せは貧富の差とは比例しない〜…自分を大切に想う大人が両手を広げ、全力で守ってくれているのであれば〜…その子供は不幸ではない。(P234) 子供がいる身からすれば、お金があったほうが幸せにしてあげれられると思いがちだけど、愛や接し方の方が大切だよねって。プライスレスな物の方が子供の気持ちを満たしてあげられる。これは肝に銘じます…。 「誰にも救ってもらえないのなら、あなたが救う人になればいい。救われないなら救いなさい。」(P236) 涙腺緩み第三波🌊号泣😭 帯にも書いてあったこの台詞。凄く名言だなと思った。救ってもらえないと被害者ぶって不幸な人間だと思いがちだけど、代わりに誰かを救えば希望になる。こんな名言もっと早く人生で出会いたかったよ… 早川と三上の対話(P261) 涙腺大崩壊😭😭😭😭😭😭 ここから先のお話はもう涙無しじゃ絶対に読めないくらいに大号泣。読了後も余韻が凄いので涙が止まらず。この本は絶対に外では読まないでくださいってお知らせが必要だと思います。そのレベルで感動しました。
  • 2025年8月26日
    スワイプ厳禁 変死した大学生のスマホ
    左ページに文章、右ページにスマホ画面と新しい手法。 新鮮な仕掛けにドキドキしつつ読み進めていくと違和感に気付いたり、スマホ画面に写る影に「おぉ…よく出来てる…」と謎に感動したり。 読み始めて違和感にすぐ気付けたけど、謎が残るところもあり…次回作でそこが分かるのかなーと今からワクワク。早く次回作が読みたい!
  • 2025年8月15日
    舟を編む
    舟を編む
    辞書『大渡海』の完成を目指し、長い年月をかけて地道に奮闘する姿を描く物語。 辞書作りに没頭するあまり、うっかり鉛筆で蕎麦を食べようとする様な変わり者ばかりが出てくるけど、どの登場人物も好きになる。特に馬締のキャラがどんどんとクセになってくる。 そして何より作品を通して辞書の魅力に気付かされ、今では我が家のリビングには辞書3冊常備📚 「私も辞書作りたい」とまで思わせてきた素晴らしい作品だった。 「なぜ、新しい辞書の名を『大渡海』にしようとしているか、わかるか」(P26.P28) 読み進めていくうちにどんどん名前の意味が分かるようになる。深い。ここの説明してるページの付箋は一生外しません。 馬締節が炸裂(P21.P25.P64.P116.P173.) 変な人だけど、放っておけない愛嬌がある人。この人が居なかったらこんな愉快な仲間たちにはならなかったと思う。馬締ファンになった。 馬締×香具矢の組み合わせがまた良い…!(P91.P94.) 不思議ちゃんな馬締と芯のあるしっかり者の香具矢。正反対すぎて相性が良いのかな…すごく好き。 西岡×馬締も良い。(P116.P126.P132.P133.) 一見おちゃらけな西岡も、実は芯のある熱い人でまるで馬締の保護者。2人の掛け合いがホッコリもさせる。 ドラマでは岸辺が主人公になっているので、この人の登場が中盤〜なのに驚き。そしてたまに毒づくのがまた面白かった(P169.) 「たくさんの言葉を、可能なかぎり正確に集めることは〜…相手に差しだしたとき、気持ちや考えが深くはっきりと伝わる。」(P186.) この一節にすごく納得。言葉って普段から使うから意識して使うのは失礼のないようにしなきゃいけない相手くらい。でも日常の中で言葉の引き出しが多くなれば伝わる気持ちも多くなる。改めて、言葉って大事なんだなと気付かされた場面。 『大渡海』の装幀最終案。(P240.) これを読んで驚いた。まさか表紙が伏線になってたなんて…!!!!!これに気が付いた時には感無量。 終盤、泣けて泣けて涙が止まらなかった場面(P246.) 私も最近同じような経験をしたので、馬締たちの気持ちがよく分かる…「大丈夫」「がんばって」は応援するには使い易い言葉かもしれないけど、それが適切なのか、分からなくなる場面あるよね…と感情移入し過ぎた。
  • 2025年8月13日
    星のように離れて雨のように散った
    読書友達から、銀河鉄道の夜を読んだなら…と教えて頂いた1冊。 こちらの作者さんはもっとドロドロした大人の恋愛ってイメージがあったのに、この作品は大学生と社会人の普通の恋愛。だけどお互いに抱えるものがあって…。ありえなく無いストーリーだけに共感できるところが沢山あったお話だった。 『行方不明の父、未完の『銀河鉄道の夜』、書きかけの小説。三つの未完の物語の中に「私」は何を見い出すのか?人生の岐路に立つ女子大学院生を通して描く、魂の彷徨の物語。』 銀河鉄道の夜が宗教的なテーマが強い作品なのは気付けなかったけど、妙に懐かしい感じや不思議な近しさがあるのは感じられたから作中で同じことを述べてくれたのが嬉しかった。(P.10) 主人公の春が友達を家に招いた時の話で、楽しかったのに1人になるとほっとしている自分に気付く場面。 他人と一緒に居ることで知らずのうちに疲労感が溜まっていたこと、表向きの対応をしていたことを1人になってから気付くのは私も良くあるので共感できた。 こっちから提案したのに相手が乗って即行動に移されると内心怯んでしまう春の気持ちも手に取るようによく分かる。(P.51) 「他人と自分の問題を混同して責任とか感じないほうがいいよ」(P.94) 相手の気持ちになり過ぎたり共通してる所があるとどうしても入り込みすぎてしまう。これもまた共感。それに気付いてちゃんと言葉で伝えてくれる友達って大事だなぁと感じた場面。 普段の亜紀君は春の様子を伺いながら話してる子犬感があるのに急に春を試すような口調で、こっちまでカチンときてしまった…。その後の春の態度には怒り以上に驚かされたけど、ややスカッとした。この辺から亜紀君に対して不信感。(P.108) 「言葉にしなさい」(P.111) 吉沢さんとの出会いで、こんなにもしっかり導いてくれる存在の大人が春の周りには居なかったんだなぁと悲しくなった。 「それ、自立って言わなくて、頑張ってないことになるの?」(P.158) 春はちゃんと自立してるよ〜😭と言ってあげたくなった。精神的には不安定かもしれないけど、しっかり自分のことは出来てるし、生い立ちを考えたらよくグレなかったね…と褒めてあげたくなる。 吉沢さんに核心を突かれた場面。(P.183) それに対する春の答えが吉沢さんの聞きたかった内容じゃない気がして…。でも春が実はそう思っていたんだなとよく分かる場面でもあった。 「気持ちが分かったからって、自分の感情をコントロールできるわけじゃないからね。」(P.189) 子育てや恋愛において第三者の目線からなら他人にいくらでも寄り添って話を聞いてあげられるのに、自分の立場になると何も見えなくなる現象あるあるだなぁと。痛いほどに吉沢さんの言葉が分かる。 終盤、亜紀君の暗い部分に気付いた場面。(P.222) 今世間を賑わせている話題と同じすぎるし、その対象が亜紀君だったんだ…って思ったらとてつもなく悲しくなった。言いたくない過去を日々の中でふとした瞬間に思い出して嫌悪を抱いたり、不安になったり。 この場面で亜紀君の行動全てが繋がって不信感が一気に吹き飛んだ。
  • 2025年7月31日
    おいしいごはんが食べられますように
    心をざわつかせる、仕事+食べ物+恋愛小説とのことで気になって即図書館で借りてきた。 職場でそこそこ上手くやっている二谷 みんなが守りたくなる存在で料理上手な芦川 仕事が出来て頑張り屋の押尾 そんな3人と職場とプライベートのお話。 初っ端上司の藤さんがキモすぎる。普通にセクハラ。それをどうとも思っていないのか、セクハラ上司にも媚びるような芦川に8ページ目でイラッ☆(P.6、P.8) 昔の人の『家を継ぐのは長男』って考えはもう古いのに、アップデート出来ない老人からのありがた迷惑な教え。 長男だから大事にしなくちゃいけない、妹よりもお菓子や食事を多く与えられる、誰かが喜んでくれるから結婚する… 自分の気持ちより相手の気持ちを考えて行動してしまう二谷だから、弱い子ぶりっ子な芦川に声を掛けたんだろうな(P.22) P.54〜二谷にイラッ☆ だんだんこの物語にはマトモな人間が出てこないのか??とすら思えてくる。 この辺りから二谷に対しての不満が多くなってくる(P.54、P.69) 芦川弟登場で「おや?」となる。 犬ってちゃんと人間を見てるんだね…わんちゃんは賢いわぁと関心。(P.80) みんな残業してるのに一人早く帰してもらう優遇。それを良しとしてる職場。なんでもっと批判の声が上がらないの??と不満になる。 おまけに頭痛がしたから帰る、家帰ったら治ったからお菓子作りましたはちょっといかがなものか… お詫びとはいえ、毎回その手口で早く帰る→お菓子作る→職場で振る舞うをするくらいなら皆と残業せぇ…と思ってしまう…(P.98) 急に不穏になる二谷。けどスカッともする。(P.112) 自炊をするって本当に労力と時間を使うからなるべく時短したい気持ちがよく分かる。(P.123) 飲食店に手作りのホールケーキとか持ち込んでいいの?非常識じゃない?と思ってしまった。きっと弱くて守られて当然の存在に周りの人たちも感覚が狂ってるんだろうな…子供を大目に見るのと似たような感じかもしれないけど、相手は立派な大人だぞと。心地よくさせてる周りも罪。 結局、まともなのは押尾さんだけ…? 展開が面白くて一気読み。読みやすくて妙にリアルな人間模様を楽しめた1冊でした。
  • 2025年7月24日
    新編 銀河鉄道の夜
    半年以上かけてようやく読了。 昔の難しい文体に苦戦しつつも、温かみのある物語に癒される。 よだかの星、黄いろのトマト、オツベルと象、猫の事務所、銀河鉄道の夜、セロ弾きのゴーシュ辺りが好みなお話だった📖 本のタイトルでもある銀河鉄道の夜はやっぱり物語としての存在感が大きい。
  • 2025年7月12日
    ネメシスの使者
    死刑判決を免れた殺人犯たちの家族が殺される事件が起きた――。 殺害現場に残された“ネメシス”のメッセージの謎。 ネメシスとはギリシャ神話に登場する「義憤」の女神。 事件は遺族による加害者への復讐か、はたまた司法制度へのテロか?ネメシスの真の狙いとはいったい……? 前回読んだ「テミスの剣」がおもしろかったので、主人公が同じの今作も読んでみた。 今作は色々な人の視点から語られる物語もあって、怪しい人が沢山出てくるから本当に誰が犯人なのか検討がつかない。 終盤、3連続くらいでびっくり展開があって仕掛けがすごい… 検察と裁判官の会話は難しかったけど、諦めずに読んでよかったと思えるくらい面白い話でした。 この作者さんの書くお話、面白いなぁと他の作品もチェックしたくなった。
  • 2025年6月29日
    テミスの剣
    テミスの剣
    一件の強盗殺人から始まる負の連鎖… 新米刑事の渡瀬と教育係兼パートナーの鳴海、二人で犯人逮捕の為に奮闘するも死刑判決を下された犯人は獄中で自死。そして後に浮上する冤罪疑惑。それに気付いて真実を求めようとする渡瀬に対して、隠蔽しようとする警察組織。 きっと暴力的な話が苦手な方は序盤で心折れてしまうんではないかってくらい鳴海のやり方が卑劣。 この男に対しては最初から最後まで好きになれず。でもこれがまたストーリーとしてはいいスパイス。 鳴海あって渡瀬あり。刑事として有能すぎるよ… そして隠蔽体質な警察組織。現実の世界でもこんな事が本当にあるんじゃないかと思ってしまう。 タイトルの「テミスの剣」はギリシャ神話に出てくる女神テミスから取られ、右手に力を表す剣、左手には平等を意味する秤を持ち、正義を司る。 『力』『平等』『正義』この3つの言葉が凄く重くのしかかる作品だった。 黒幕、分かっては居たけれどそう繋がってくるとは…としてやられた。結果、どんでん返しでした。 作品の締めくくりも綺麗で読了後にはため息が出るほど。とても楽しめた1冊でした。
  • 2025年6月17日
    いけない
    いけない
    久々の読了。 こちらの作品、本当に凄すぎる。 体験型ミステリー小説。 新しい読書体験をありがとう。 第1章 弓投げの崖を見てはいけない 〜自殺の名所付近のトンネルで起きた交通事故が、殺人の連鎖を招く〜 悲しくもあり、虚しくもあり、複雑。 ラストの写真を見た時、全然意味がわからず⋯ 難しすぎたので解説を調べて、納得。 こういう事だったのね⋯と驚愕。 第2章 その話を聞かせてはいけない 〜友達のいない少年が目撃した殺人現場は本物か?偽物か?〜 前章との繋がりもみせつつ、心苦しいお話でもあった。 山内、ホントに実在してる友達?と疑いたくなるけど、4章でも出てくるからきっと実在してるよね⋯? ラストの写真を見た時はクスリと笑えてしまった。 第3章 絵の謎に気づいてはいけない 〜宗教団体の幹部女性が死体で発見された。先輩刑事は後輩を導き捜査を進めるが〜 自殺?他殺?分からないまま話が進んで、怪しい人がずっと出てくる。それなのに核心が分からない。 終盤、怒涛ラッシュの様に気付くこともあるけどイマイチ腑に落ちない。⋯と思ったらラストの写真。 「おいー!」と声を上げたくなるくらいの驚きが用意されてた。 終章 街の平和を信じてはいけない 〜これまでの物語全てが絡み合い、更なる“真実”に辿り着く〜 全ての章の答え合わせのような終章。読み終えた時にこの章のタイトルの意味が重くのしかかる。
  • 2025年6月5日
    チュートリアル
    ⋯ー地面から数十センチのところに浮かぶ、透き通った青い結晶ー⋯ RPGに出てくる「セーブポイント」 街中に急に現れて、人々は不意に手を添えて「セーブ」をする。 そして「ロード」して自由な自分をいくつも持っている。 本当に街にセーブポイントがあったら…? 今の自分の人生だけを生きるのか、それともいくつもデータを作って色んな人生を生きるのか… 出会う人も自分の性別や見た目すらもそれぞれのデータでバラバラ。 ちょっと楽しいのかもしれないなと私は思った。 この作品を読んでいてセーブポイントを表す表現にとにかく心躍る。FF7好きなのでつい『私も触りたい!』と思ってしまう。
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