
tomo015123
@asayou
- 2025年11月24日
アミュレット・ワンダーランド方丈貴恵読み終わった犯罪者専用のホテルで御法度の殺人事件の始末をつけるホテル探偵の活躍を描く短編集第2弾。第2弾ともなればそりゃ当然犯罪者も増える、事件のスケールも大きくなる。ホテルの存亡に関わる危機も度々発生しており、どのようなサービスを受けられるとしても絶対に泊まりたくない。特に、ホテル舞台にターゲットを指定し役割を終えたものに殺人を正式発注するという「ようこそ殺しやコンペへ」はすごくて殺人の発生から解決のまでの間に殺人者が殺されるというサイクルが繰り返されるのでホテル探偵を中心としたオーナー各位の心労がこっちまで伝わってきた。その分報いを受けさせる結末はカタルシス。どんどん登場人物も増えてきてどっかの段階でドラマ化でもされるんじゃないか。 - 2025年11月15日
アミュレット・ホテル方丈貴恵読み終わった犯罪者御用達の高級ホテルで発生した殺人事件を解決しその報いを受けさせるべく奔走するホテル探偵の活躍を描いた短編集。奔走するといっても、被害者・容疑者・その他全員が犯罪者という中、探偵はかなり短時間での解決を迫れられており、その期待に答えかなりスマートにテンポよく謎解きが進む。また、短編集ではあるものの主観人物が異なるエピソードやホテル探偵自身を深掘りするエピソード0など内容はかなりバラエティに富んでおり読んでいてマンネリがない。 全体としてかなり読みやすい短編集だった。 最後の謎は不可能犯罪の体をなしている上、ホテル探偵が最後の情報を手にするタイミングが謎解きの途中というかなりぎりぎりの戦いを強いられており手に汗握った。 続編もあるらしいのでそちらも気になる。 - 2025年11月10日
堕天使拷問刑飛鳥部勝則読み終わった相変わらずジャンルごった煮で悪魔はびこる因習村かと思えば青春の一幕ありミステリあり不条理あり悪魔悪魔友情謎そして作品そのものがタイムカプセルでありラブレターでもある。 そしてやはりキャラクターが最高に良い。特に周囲から孤立する主人公に手を貸す不二男少年の言動には心打たれた。中盤彼が主人公に当てたモダンホラー推薦文が挿入(30ページ以上!)されるのだが、中学生である彼の自尊心というか本当にお勧めしたいものしたいしてかける熱量というか若さゆえの情熱みたいなものを正面から感じられてちょっと泣きそうだった。 物語はジェットコースターのように凄まじパワーで突き進む。分厚い物語ではあるがグイグイ読み進んでしまった。 - 2025年10月16日
五つの季節に探偵は逸木裕読み終わった人の薄暗い秘密を暴くことに快感を覚え、なおかつ謎を解き明かす才能を持っていることに気づいてしまった少女が探偵としての道を歩む物語。時間軸がより後ろの「彼女が探偵でなければ」では謎の解決を求める本能をなんとか制御しようともがいていた探偵が、若く未熟なまま周りを傷つけ謎を解き明かす姿はちょっと痛快。探偵でありながら決して善良ではないという塩梅が絶妙でもっと活躍を見ていたくなる。「わたしは、こういう人間なんだ。」 - 2025年10月9日
うたかたの娘綿原芹読み終わった人魚伝説を核にした短編集。人魚は美しく羨まれ永遠を生きる生命体。一見理想の生物だが自身の価値は見た目にしかないと認識し、人の世に生きながらも人との関わり合いを極端に恐れている。一方で人間は人間でルッキズムだなんだと言いながらも美しいものはやっぱり好んで、逆に美人は苦手だというのも見た目で人を判断している証左になり・・・。結局外見という一番外側にある情報で他人を判断してしまう、なんだか間抜けというか不思議な生き物だ。人魚に巻き込まれた人間はなかなか可哀想な目に遭うのだが物語全体が物悲しさというかどこか達観した雰囲気に包まれているので嫌悪感はない。 - 2025年9月30日
死体埋め部の悔恨と青春斜線堂有紀読み終わった死体処理を請負う死体埋め部に無理やり入部させられた主人公が死体を埋める先輩の車の中でその奇妙な死体について推理する短編集。この先輩が非常に魅力的でモラルは完全にイカれてるけど面倒見が良く人当たりも良い。ユーモアもあり機知に富む。対した主人公も常識人としてのスタンスから冷静な推理を披露し車内での会話は普通のサークルの様。ただやっていることがやっていることなのでどう足掻いても幸せな結末には至れないよな、という悲しい崩壊の気配が常に付き纏っており不思議な読み味。 - 2025年9月26日
デスチェアの殺人 下M・W・クレイヴン,東野さやか読み終わったシリーズの中で一番衝撃的だった。事件も当然おぞましく、差別や排外が行き着く先を憂いている様に見える。事件が収束に向かいだしたと思いきや異次元の加速的展開。ノックアウトされた気分。 - 2025年9月15日
真実の10メートル手前米澤穂信読み終わった「さよなら妖精」で頭はいいけど猪突猛進な主人公を尻目に全ての真実を把握しているかの様な超然とした態度を取りつつ、その実一番損な役割を引き受けていた大刀洗を主人公とした短編集。社会人となり記者となった彼女は取材を重ねながら同時に同時に自身の傷も重ねていくが、どこかそうとしか生きられないといった諦めに似た印象も受ける。基本的に根は善人なので痛々しいが、彼女の想像力というか洞察力は群を抜いており、そうとしか生きられないというかそう生きるのが一番自然にも見えてしまう。誰しもが気づいていない真実に1番に気づき、短編集では基本的に彼女の中で出ている結論の傍証を取材するという変わったスタイルになっている。お気に入りというか一番痛々しいのは高校生カップルの自殺を取材する短編。油断しているとガツンとやられる。 - 2025年9月7日
抹殺ゴスゴッズ飛鳥部勝則読み終わったなんだかすごいものを読んだぞ。 悪魔を生んだ神ゴスゴッズ。その一員として令和に生まれた怪神コドクオ。主人公詩郎は街角で暴力団にリンチを受ける少女をさらに圧倒的な暴力で救助するコドクオを眼にする。その日から詩郎は圧倒的暴力、町で起こった謎の殺人に巻き込まれていく。 一方で詩郎の父は少年時代、平成に怪人蠱毒王を名乗る怪文書に端を発する殺人事件に巻き込まれる。 2つの事件が並行、交差し2つの時代に生まれた怪神と怪人、そして全てを飲み込む強大な力が空想と現実を飲み込んで行く。 ホラーかと思えばかなり正統派のミステリであり、まさかの青春物語でもある。特に登場人物は全員強烈で、詩郎にイカれた好意を振り撒く桜や罵倒を繰り返し「懺悔しなさい」と言い放つ無免許運転同級生のカナヨ、そして詩郎の趣味に理解を示し2人でゴスゴッズを作り上げだ親友木槍。長い小説ではあるがだれることなく結末までつき進むエネルギーが込められていた。 - 2025年9月3日
know野崎まど読み終わった脳にコンピュータを埋め込み、また街を構成するほとんどの物質が情報を集め発信する機能を持つに至った未来で情報庁で働く主人公が門外不出最高クラスのコンピュータを積んだ少女と逃避行する話。あらゆる情報が公開されリアルタイムで取得できる世界で「知る」とはなんなのか、なぜ我々は知識を求め続けるのか、そして全てを知った時に何が起こるのか。哲学的な問いを常に全面に提示しながらも胸躍る情報戦や莫大な情報を背景にした「想像」などなどSFとしての面白さも犠牲にしていない傑作。 - 2025年8月22日
不等辺五角形貫井徳郎読み終わった全てが会話で構成されており読みやすい。インターナショナルスクールで出会い社会人になっても付き合いが続いていた日本人グループで殺人が発生し、それぞれが弁護士にグループの人間模様を説明するといった内容。人によってそれぞれの見方が変わる!みたいなドロドロとした人間模様関係といった内容ではなく、割と些細なすれ違いや相互不理解はでてくるもののグループの仲は良好。それゆえ何故殺人が発生したかは検討もつかない、といった状況で最後にきちんとオチをつけてくれた。価値観のすれ違いとアップデートについて繰り返し述べられており、身につまされる様な話も多かった。おっと思ったのは「合理的」という言葉は男性に使うと褒め言葉だけど女性に使うと計算高いといった悪印象を含む、といった話。まったく気にしてなかったけど言われてみれば確かに・・・。事件に関しては流石に警察力舐めすぎだろって気はするがそこは本筋ではないのでまぁ - 2025年8月21日
密室は御手の中犬飼ねこそぎ読み終わったミステリとしてもよくできているし主人公の心構えというか性格も好み。名探偵たらんとし異常な状況にも論理的に対処しようとしつつも徐々にキャパオーバーしそれでもまだ立ち上がる様に気骨を感じた。密室もタイトルにするだけあってよくできておりやられた!という感じだった。 - 2025年8月7日
孤島の来訪者方丈貴恵読み終わった面白い!孤島に集まるテレビクルー。いきなり発生する不可能犯罪から未知との遭遇、そして復讐心を燃やしながらも冴えた推理で真相を追求する探偵とロジカルな展開とどんでん返し。特殊設定の面白さと本格推理の面白さが両立されていた。 - 2025年8月3日
地図と拳 下小川哲読み終わった下巻からは一転時の歩みが遅くなり満州を中心とした第二次世界大戦が描かれる。その中で様々な諦念や野望そして信念が交錯し数々の人生が描かれる。特にラストシーンの美しさは圧巻。 - 2025年7月22日
脳は世界をどう見ているのかジェフ・ホーキンス,大田直子読み終わったあーおもしろい!1章では脳の枠組みを座標系という概念から新たに捉え直す「1000の脳理論」について解説される。てっきりこの本のメインはこれだけかと思っていたが、2章ではAIの進化とこれからについて、3章では我々の未来と果たすべき役割について述べられる。特に遺伝子と知識を対比する3章は刺激的で、本能を司る爬虫類脳とそれを理性的な枠組みから観察する新皮質を遺伝子と知識の戦いという枠組みで説明し人類の至るべき未来を示す。 真実に近づくための唯一の方法は自分の信念と矛盾する証拠を積極的に探すこと、という考え方は常に胸に留めたい。 - 2025年7月6日
本と鍵の季節米澤穂信読み終わった相変わらずビターな・・・。他の作品と同じく主人公達は大人びていて知識深く洞察力にも優れる。ただ人の悪意に対して敏感な一人と逆に人の善意を信じる一人が一緒にいるのだから、微妙なスタンスの違いや高校生ならではの行動や言葉の限界に縛られてでも時々は飛び越えて、相互にあいつはすごいやつだと思いながら、その期待通りの人物であってほしいと呪いながらでも生きていく以上は他人からの影響は受けるし互いに影響を与えるし誰かに影響を与えるしそれは自分の認識を超えたものなのかもしれないけどだからこそ守れるルールは守れるうちは守っておくという指針はかけがえのないものの様に思える。 - 2025年6月29日
そして誰もいなくなるのか小松立人読み終わった死までのタイムリミットが設定された主人公たちの間で何故か殺人事件が発生する特殊設定ミステリ。主要人物は数人しかいないのに何故殺人が発生しているのかが最後の最後までわからないし犯人も全くわからなかった。シンプルな設定に動線もかなり丁寧で本当にすごい。メタミステリの一面もある中主人公の自虐がすごくてそこはちょっと笑ってしまった。 - 2025年6月25日
名探偵に薔薇を城平京読み終わった赤子の脳髄から作られる完全無欠の毒薬、小人地獄を中心に発生する不可解な事件に名探偵が挑む。事件は理屈がなかなか通らない事象に探偵の連想と発想で道筋を示して解決に繋げるという流れで、虚構推理でも感じていたがストーリーを紡ぐのが本当にうまい。事件そのものと合わせて、名探偵が背負う苦しみ、宿業に焦点が当てられ息ができない様な緊迫感で走り切る。 - 2025年6月19日
新しい法律ができた日野瑛太郎,朱野帰子,真下みこと,講談社,金子玲介,阿部智里読み終わった「新しい法律ができた」から始まる短編を寄せたアンソロジー。お気に入りは人工知能搭載のぬいぐるみを禁止する法律ができる「ルパちゃん」と「殺人罪」が新たに制定されることで逆説的に他者に悪意をぶつける世界が招かれる「もうディストピア」。「つるべを取られて」のNeo Twitter (旧X)という単語は笑った。新たな法がもうすぐ公布される「革命夜話」も面白かったけどこれは長編で読みたかったな。 - 2025年6月18日
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