
ペリー
@periperiperry
- 2026年4月11日
近代美学入門井奥陽子読み終わった「アート」は、ある「アーティスト個人」がその「内面から」溢れる「創造性」をもってつくり出した、「美」を内包する「作品」である。 ⋯てな感じの今では当然視されるアート観は、近代西洋だけでしか当てはまらない特異なものであり、上の文における「」内の概念達は全て近代に生成してきたものである。 という美学の知見をとてもやさしく教えてくれる本。 感性や美を扱う哲学としての「美学」に入門するのに最適だった。 人類学を勉強してると「美とかアートとかって近代西洋だけの考え方で〜」的な話はよく出てきて、なるほど近代西洋がむしろ例外なんだな、と納得して満足しちゃってた。 が、「じゃあその近代西洋の考え方はどういう成り立ちなのか?」を本書で学べたことで、単に近代西洋的な概念を「当たり前じゃねえからな!」と切り捨てるだけではない問い直しの視角を養えたのがよかった。 美術史の本も読んでいるところだが、美学を踏まえるとまた違った歴史の側面が学べそう。 (本書で「崇高」を扱う中で「表象不可能性」の件があり、『ショアー』の話が出てきたが、「これランシエール研究の本でやったところだ!」と進研ゼミ現象を味わえた) - 2026年3月30日
ガングロ族の最期久保友香読み終わった日本におけるガングロ・ルックはいつどのように広まって、どう変遷して、どう滅んだのか?という歴史を描く本。 90年代の渋谷ギャル文化に関する内容が大半なのだろう、と読み始める前は思っていたが、源流としてまさかの20世紀初頭フランスの話から始まる。そして半分くらい過ぎてようやく90年代に至るのだ。だがそれがいい! フランスやカリフォルニアを手本としていたところから、徐々に「見立て」の仕方が尖っていき、いつの間にか独自の文化として生成していく過程が丁寧に描かれ、夢中で読んだ。 歴史を追ってきて終盤で「ゴングロ」に至るところは、「ついにここまで来た…!」と謎の感動すら覚えた。 各時代でガングロ・ルックを実践していた当事者の証言が厚く収集されている。当時どんな様子だったか、何が「カッコいい/イケてる」とされ何が「ダサい/イケてない」とされていたか、どんな思いでその文化の中にいたのか。当事者の声が効果的に挿入されるので引き込まれる。 文化の成り立ちや変遷を読み解く実践として非常に参考になった。ギャル文化に無縁のおじさんでも面白かったので、文化の研究に興味がある方に広く勧めたい。 - 2026年3月22日
孤独社会吉川純子,小澤デシルバ慈子読み終わった原題を直訳すると『孤独の解剖学』。 日本での孤独と自殺について人類学した本。 孤独・自殺に関する言説の問題点、従来の研究で見過ごされていた点に取り組むべく、「共感」を方法論的に用いながら「主観性」にフォーカスした研究が成されている。 孤独への処方箋も提案されてはいるが、「一応手短に示すと…」程度なので、孤独の解決策を求めている方向けの本ではない。 それよりも、上記のような著者の方法論と分析の切り口によって、孤独を取り巻く状況や孤独に関連する概念が読み解かれていくプロセスの素晴らしさを味わう本だと思った。 また、アメリカの一般人向けに書かれているので、「なるほど、日本のこれをアメリカ人に説明するとこう言わなきゃいけないのか」ってのも面白ポイントだった。 主観性は「自己」と「他者・環境」の両側に向いており、主観的な経験が他者・環境を作ってもいるし、他者・環境が主観的経験を規定してもいる、ということが繰り返し強調される。 著者はその主観性の二面性を「内と外が浸透し合う膜」に喩えていたが、個人的には内と外が相互包摂するような捉え方もあり得ると思った。 終盤で明かされるように、収集された一人称の語りをこの本に記述する仕方も工夫されていて、読者が徐々に共感を醸成して入り込みやすくなっている。この工夫は真似したい。 それにしても、本書で示された「共感」の恐ろしい側面や、「生きがい」「生きる意味」を巡る結論は、皮肉だと言っていいかもしれない。「生きがい」とかについての言説になんとなーくもってた違和感を肯定されたようで、深く頷く思いだった。 - 2026年3月21日
孤独社会吉川純子,小澤デシルバ慈子読んでる日本での孤独と自殺がテーマの人類学本。 原題を直訳すると、孤独の解剖学。 従来の研究のスタンスと課題、その上で本書ではどういう方法論を使うか、なぜそうするのか、という前提部分を70ページ(しかもページあたり文字数多め)に渡って誠実に説明してくれててすごい。 ここだけでかなり人類学とか社会学の勉強になるし、主観性と共感の哲学として面白い。 がんばってそこを突破して少し進んだところだが、「めっちゃ自殺してます!」っていう具体的な本論に入ったので読み進めるスピード10倍になった。 - 2026年3月20日
空の時代の『中論』について清水高志読み終わった長らくちまちま読んでてやっと読み終わった!! まあ正直人に勧めるような本ではない。 ただ個人的な興味(仏教の理屈をちゃんと論理的に学びたい)にはドンピシャでめっちゃ面白かった。 「無自性にして空」は仏教の根本概念ながら、入門書レベルだとなんかどの説明の仕方でもうまく説明しきれてるように思えない。 この本は『中論』を通読しながらそこをものすごくちゃんとやっている。変な喩えに逃げたり、「ここは論理を超えてる」とか言ったりせず、一貫した論理構造として読み解いてくれる。 いやー勉強になったー! 抽象論の中の抽象論なので、仏教に限らず、これから更に哲学や人類学を学ぶ上でも大きな土台になったと思う。 - 2026年2月27日
小説野崎まど読み終わった小説よりも学術・ノンフィクション本が好きなせいか、あまりハマれなかった。 小説をめぐるある問いに対して答えが導かれるところが感動ポイントになるのだろう。が、その答えがファンタジーギミックを持ち出して導かれてるわりに、中途半端に哲学的ロジックで提示されるから、ロジックの粗がいちいち気になって入り込めなかった。 途中からファンタジーに舵を切るのであれば、そっからは説明不可能な何かでゴリ押してくれたほうが浸れそうだと思った。 - 2026年2月1日
深い河 新装版遠藤周作読み終わったいいものを読ませていただいた⋯ 何か自分を生かしたものへの「後ろめたさ」に悩まされ、それぞれの儀式的行いを経てそれを解消し、人生に秩序を取り戻していく。でもその秩序にも綻びがあるってことを、きっとそれぞれが感じてもいる⋯そんな雰囲気があって、その割り切れなさがすごく良い。 そこから逸脱した、(おそらく主題の)美津子と大津の話は一層良かった。 美津子は、自らの世界を規定する幻想の向こう側に行きたいのだろう。それ故、そういう枠組みを持たず、形式としての義務に従う(ように見える)大津に執着するのだと思う。大津は自身の行いを「イエスの真似事」と言うものの、その行いは限りなく純粋な形式に近いように思える。だから崇高なのだ。 ラストは解釈の分かれるところだろうが、大津にとって救いであり肯定であった、というのが個人的な感想。 - 2026年1月1日
揺さぶる経営学柳淳也読み終わったクリティカル・マネジメント研究(CMS)の本。CMSは、1.(非)パフォーマンス志向、2.再帰性、3.非自然化 の三つを特徴としており、主流派の経営学の「当たり前」を問い直している。 ゲイ当事者である筆者が、企業のLGBTQ言説を題材に「クリティカル」に論じていくが、その再帰的に考える実践の過程にまさに「揺さぶられ」る。 正直そこまでLGBTQ問題や経営学に興味がない私でさえ、本書を通してもっと根本的な部分で何かを返されたと感じた。第V章はもう全部暗記しておきたい。それくらい素晴らしい。 - 2025年12月31日
現代思想の教科書石田英敬読み終わった「フランス現代思想」だけでなく、ソシュールやフロイト以降の話をトピックごとに分けて解説してくれている。 この類の現代思想入門本を何冊か読んだ中では、これが一番説明が整理されていて簡潔で、カバー範囲もしっかりしていると感じた。 - 2025年12月31日
技術哲学講義M.クーケルバーク,久木田水生,直江清隆読み終わった色々な技術に対しての応用倫理みたいな話が中心かと思って読み始めたら、それよりも「技術とは何か?」みたいな壮大な問いが常にベースにある内容で、そこから必然的に「人間」概念が問い直されたりするため、骨太かつ広範な学びを得られた。 技術や道具を改めて捉え直したい方にはもちろんおすすめだし、哲学全般の学びとしても良い本だった。 - 2025年12月31日
傷つきやすいアメリカの大学生たちジョナサン・ハイト,グレッグ・ルキアノフ,西川由紀子読み終わっためっちゃ雑にいうと「過保護のせいでエリート若者がヤバい」的な話。子をもつ親として身につまされた。この本で取り上げられた現象は、既に日本でも起きていると思う。ずっと忘れず教訓にしておきたい本だ。 問題への処方箋として本書で提示される案はいささか単純で、より詳しい検討が待たれるが、それでも素晴らしい問題提起をしている。「ケア」を考える上でも本書の問題は念頭に置くべきだと思う。 - 2025年12月31日
嫉妬論山本圭読み終わった2025年読んだうちのベスト5に入れたい。 「嫉妬」は悪として排除されてきたが、真正面から扱ってみることで大事な視点が見えてくるのでは?というような提案だと読み取った。 いつの間にか前提になりがちな「理性」「合理性」やら、「倫理」「正義」の理論やらを考えるとき、本書のように「嫉妬」のことを考慮できているか?と問うことが、外在的な上から目線の予防策になると思った。 また、自分自身の嫉妬から目を逸らさず正面から向き合って苦しんでこそ、何か見えてくるものがあるんじゃなかろうかという、より踏み込んだ提案もあった。その点ラカンの欲望論にも通ずるなーと。 ロールズ正義論の批判的検討が特に痛快。 - 2025年12月31日
余白の芸術李禹煥ちょっと開いた買った次読む候補 - 2025年12月31日
休み時間の過ごし方團康晃ちょっと開いた買った次読む候補 - 2025年12月31日
- 2025年12月31日
読み終わったまた読みたい「自分の頭で考えよう」 「心の声に従い、やりたいことに邁進しよう」 「他者とどんどん繋がろう」 といった、自己啓発書でありがちな文言が、この本では全否定される。 日本では珍しい"プロ哲学者"による、哲学への道案内と、私たち現代人のマズい状態の分析と、そこそこ具体的な提言がセットになった本。個人的には、もともと自己啓発の文脈が肌に合わなかったのもあり、著者の主張が好みに合って、とても好きな本になった。 しかしまあ何というか、感想を迂闊に書けない。表現・文体は易しく読みやすいので、意味不明ということではないんだが。 というのも、本書の超ざっくり結論は、 「謎や疑問に対して、安易に『自分の分かる範囲』に回収せず、不確実性や疑念の状態に耐えること(=ネガティブ・ケイパビリティ)が重要。そのために自分自身と対話しましょう」 という感じだからだ。 「◯◯という学びがありました!」とか言うと、「いやそういうことじゃねーから!」となる。 また、ここでの「自分自身と対話しましょう」というのは、「心の声に従う」「本当の自分を求める」といった内省とは違う。むしろそういった内省は、「自分の声だと今の自分が思っているもの」を増幅させ、自分の中にある葛藤や対立を早々に手放すことを助長しかねない、と批判されている。 本書のメッセージを真摯に受け取って、本書が提案する狭義の〈趣味〉をゆっくり実践して味わった上で、時間をあけてまた読んでみたいと思った。 哲学者の引用以外にも、燃えよドラゴンとかエヴァンゲリオンとかの引用も結構重要な文脈で登場する。が、ノータッチの私でも楽しく読めたんで、エヴァアレルギーの方以外は大丈夫だと思う。 - 2025年12月31日
自由の命運 上ダロン・アセモグル,ジェイムズAロビンソン,Daron Acemoglu,James A.Robinson,櫻井祐子,稲葉振一郎読み終わった原題は、The Narrow Corridor(狭い回廊)。 個人の自由を大切にする社会は、非常に限られた条件すなわち「狭い回廊」の中にしか実現せず、回廊に入るのもそこに留まるのも容易ではない。 という主張を、国家と市民社会の2軸で見て、古今東西の社会について2軸それぞれの強さをプロットし、両者の強さの組み合わせを色々と分析するという方法論によって述べている。基本的にこの方法論と上記の主張はずっと一貫していて、その実証分析として色んな国を見ていきましょう、という本。 とにかく事例が豊富で分析も丁寧なのでボリュームは重いが、ベースが貫かれているから迷子にはならない。この方法論の妙を味わい、新たな分析の枠組みをゲットするのが王道の楽しみ方だと思うが、単純に歴史と現代社会の勉強としても読んでいて楽しかった。 - 2025年12月31日
世界史の考え方小川幸司,成田龍一読み終わった新書だが、密度が凄まじい。さすがに凝縮しすぎなので、これを更に数巻に分けてほしいくらい。歴史認識を更新する知的営為としての"歴史学"をたっぷりと味わえる本。しかもこの1冊で近代初期~現代をしっかりカバーしてる!いわゆる一般的な歴史認識、そこから形成される今の社会の捉え方が、様々な角度から議論され、問い直される。まさに歴史は「今を知るための学問」だなーと。歴史に触れるときの心構えが変わった。 - 2025年12月31日
- 2025年12月31日
ケアの倫理岡野八代読み終わった非常に良かった。 個人的に「ケア」のバズワード化に疑問がある。その違和感を探りたくて同じく岩波新書の『ケアの物語』『ケアと編集』を先に読んだ。が、フェミニズム等から出てきたケアの話と、医療の臨床等から出てきたケアの話がごっちゃになってるせいか、ケアに注目することで何を批判しどんな主張をしたいのかがピンとこなくて混乱していた。 そこに本書を読んで、先に読むべきはこっちだったと後悔した。それくらい素晴らしい本。 フェミニズムの系譜からのケアの主題化を順を追って解説し、主張の内容、意義、これまでの議論を丁寧に説明してくれる。 ケアを語るなら必読。
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