この村にとどまる

48件の記録
- マヤ@mayaya_20252025年5月3日読み終わった感想読み始める前に表紙の写真から何があったかを想像してしまって、読んだら泣いてしまうんじゃないかと思ったのだけど、起こる出来事がことごとく自分の想像できる範囲を超えていて涙すら出ずに呆然としてしまった。 人間には大きく分けて定住型と移動型の2タイプがいるのだと、以前誰かが言っていた。 わたしはきっと移動型だな。 この村のような状況で選択するならきっと出ていく。 でも、そこに「とどまる」人たちがいることもわかる。 どの道が正解ということではなくて、何を選ぶかということだけ。 きっと、どちらを選んでも後悔は残る。
- エマ子@emma-05082025年4月21日読み終わったイタリアとドイツ、強国の狭間で翻弄され続けるチロルの村。 そこに暮らす一人の女性の物語。言語、職、子供、暮らす場所、日常をかたち作るものが奪われる。その苦しみが娘への手紙という形を通して淡々と語られる。 言葉は無力で、村がダムの底に沈むのを止められなかった。だけど言葉が彼女の人生を支え続けた。 最後まで読むとこの表紙の残酷さがよくわかる。 「すべてが取っ組み合いの闘いであり、敗北が宿命づけられているときにでも身を投じられる者だけが勇者なのでした」 憤りを内包していくような主人公とは対照的な夫の姿も心に残ります。
- 芙柚@mint_2025年4月20日読み終わった「戦争によって引き起こされる災難も、つねに死と背中合わせの現状も、すべて神のご意志だと信じられるなんて、なんとおめでたいことだろうと思っていました。私には、神なんて存在しないほうがいいという証明にしか思えませんでした。」(p.150) 戦争が、権力者が、社会の発展が、何を犠牲にしてきたか。望むなにもかもが悉く否定されたとき、「神は乗り越えられる試練しか与えない」という言葉が、いかに残酷な言葉なのか。 いつか、クロン村に行ってみよう。そのときは、スマホを構えず、ただ、エーリヒとトリーナに、そこにあって、そして奪われたたくさんの意思に、思いを馳せることが出来たら良い。
- nekomurice@nekomurice1232025年4月16日読み終わった生き別れた娘に静かに語りかける口調とは裏腹に、戦争の残酷さがひしひしと綴られています。戦争を生き延びたのに更なる悲劇。この本を読んだら鐘楼の前で、私は写真なんて撮れないと思いました。
- りら@lilas_lilacs2025年3月28日また読みたい静謐な文章がとにかく美しくて素晴らしくて……。ファシズムに母語を奪われ、ナチズムに村人を分断され、ダム建設によって村は水底へと沈む。娘とも生き別れた女性が綴る過酷な人生。抑制された文章から、忘れられた歴史が静かに立ち上がる様に圧倒された