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@shushu_ka
ミステリ好きの雑食。年50冊以上を目標にゆるゆる読んでます。
  • 2026年10月9日
    百年の時効
    百年の時効
    とにかく重厚で、読むのに時間もかかったけど、濃厚で充実した読書時間となった。 50年前の未解決事件を、昭和、平成、令和と時代をかけて追う刑事たちの物語。 かつて都内で起きた凄惨な一家殺人事件が、北海道や満州など思いもよらない場所や背景に繋がっており、関係者も多いので、正直全体像をどこまで理解できたのか自信はないのだけど、思いを繋ぎながら真実を追い求めていく過程に胸が熱くなった。 刑事事件の時効が廃止された現代においても、未解決のまま埋もれていく事件はそれなりにあるのだろう。 たとえすぐに解決できなくても、現代の、そして未来の科学技術に望みを託して諦めない姿勢は忘れないでいたい。
  • 2026年10月8日
    失われた貌
    失われた貌
    初めて手に取った作者さん。このミスきっかけで読んでみたけど、たしかに最近読んだミステリの中ではダントツで読み応えがあった。 いわゆる「顔のない死体」の使い方がうまかったり、警察小説ならではの警察署間の主導権争い的な要素も面白く、先が気になる展開であっという間に読了してしまった。 そして、なんといっても主人公の日野の人柄が魅力的。 冒頭、夜勤明けの妻が作ったロールパン(?)を突っぱねた時点では「はぁ?なんだこの男」と反感を持ってしまった(このエピソードはのちのち微笑ましく収束するので許す。)が、泥臭く人との対話の中から、解決の糸口を見つけていく捜査手法や、粗野な言動とは裏腹に、人の懐にするりと入り込むような人の良さなど、読めば読むほどその人間味にハマっていく。 子どもが悲しい思いをするのは可哀想だが、変に手心を加えることなく、警察として芯の通った態度を貫く姿勢もかっこよかった。 こんな刑事のいる地域に住みたいものだ。
  • 2026年9月27日
    生殖記
    生殖記
    とある社外人男性の生殖器の視点から描かれた現代風刺的な小説。 いやいや、「生殖器の視点」ってなんだよそれ、ふざけてんの?と最初思ってしまったが、どこまでも真面目な話なんだな、これが。 宿主(?)がある恋愛に全く興味がないゆえに、生殖器の話なのに全然エロい方向に話がいかず、中高生にも安心して薦めることができそう。 性の話もあるが、どちらかというとコミュニティの話というか、突き詰めていくと、人は何のために生きるのかみたいな哲学的なテーマにも通じるので、実に深い。 ラストがあっさりしすぎている気もしたけど、人の生き方を肯定も否定もしないスタンスが心地よかった。 私も自分なりの「しっくり」の形を探したい。
  • 2026年9月27日
    ネタバレあり
    ネタバレあり
    最初にいくつかのネタバレを提示した上で物語が始まる、斬新なスタイルのミステリ。 ということで興味を惹かれたのだけど、個人的には「犯人は〇〇」とか「叙述トリックが使われてます」レベルのネタバレじゃないと、そこまでネタバレには感じられないなーとも思ったり…。(まぁ、そこまでネタバレしちゃうとさすがにミステリとして成り立たないだろうけど。) 奇を衒ったような構成の割にはガチガチな論理系で、自分の頭でしっかり推理したい人向けな作品だったと思う。 私は自分で考えるよりはストーリーをサクッと楽しみたいタイプなので、ちょっと読んでいて疲れてしまった…。
  • 2026年9月3日
    神の蝶、舞う果て
    神の蝶、舞う果て
    あとがきによると、著者が30代の時に連載して、納得がいかずお蔵入りになっていたものを改稿した作品とのこと。 たしかに言われてみれば、ファンタジーの世界観としての厚みは、これまでの作品と比べると控えめな気はしたけれど、その分、少年少女たちの強い関係性の強さがシンプルに心に響いた気もする。 数奇な運命に翻弄されながらも、信じられる絆があるのって素敵だな。 時に私たち人間は世界は自分たちのものだと錯覚しがちだけど、自然には自然の摂理があるのだという当たり前のことにも気づかされた。 これからもまだまだ上橋さんのファンタジーが読みたいと改めて感じた。
  • 2026年8月27日
    アンチ・グッドモーニング
    著者の作品はデビュー作から追っていて、個人的には好きなんだけど、虚実入り混じる雰囲気とかは万人受けする作風じゃないよなぁ、なんて思ってたら、今回芥川賞ノミネートでびっくり! 今作は不眠に悩む女性が主人公。 優しい夫は不眠解消に協力的だし、仕事はリモート勤務で世間的には優良企業だし、不眠の原因になるようなことは思い当たらないのに、なぜ…?と苦しむ感覚がリアル。 そして、寝不足なのか、疲れなのか、途中から、謎の研修講師やら乳酸飲料販売員やら夜中の読書会やらレンタルひよこ(というか鶏)が登場し、主人公を翻弄し、もうどこまでが現実か分からない。そんな主人公の精神状態が怖いんだけど、怖いもの見たさで一気読みしてしまった。 「健康的」なものが溢れている世の中が生きづらくなってきたら、また読み返したいな。
  • 2026年8月23日
    成瀬は都を駆け抜ける
    大学生になった成瀬を描く、シリーズ3作目。 1作目を読んだ時は、この小説と中高生時代に出会えてたら良かったなぁ〜なんて思ったものだけど、本作を読んだら、成瀬の母親目線の話があることもあって、今この時に読めて良かったなとしみじみと思った。 成瀬あかりは真っすぐに自分の道を貫くがゆえに風変わりなところがあるけれど、彼女の魅力は周りの人を惹きつけるだけでなく、時に人生観を変え、周りの人の出会いを繋いでいく。 これまで登場した人たちやエピソードが、綺麗に繋がっていく展開がお見事だった。 そしてやっぱり最後はみゆきちゃんが締めてくれるのも大満足。 これからもずっと成瀬の活躍を見たかったな。次は何をするんだろう?
  • 2026年8月22日
    さよならジャバウォック
    冒頭、主婦が夫の暴力に抵抗しようとして殺してしまったシーンから始まるので、伊坂さんってサスペンスとかミステリーとか描くんだ!?と新鮮に思ったものの、なんだかんだでやっぱり安定の伊坂ワールドだった。 ジャンルでいうと、SF…になるのかな? 「ジャバウォック」という未知の存在と、それに対処しようとする謎の組織、そして巻き込まれた主婦の量子。 話がどこに行き着くのか?信用できるのは誰なのか?先が読めない展開にハラハラしながら読んだけど、結局、凍朗がやりたかったことがピンとこなくて、ちょっと個人的に消化不良な感じだった。 でも、量子の子どもや母親との揺るがない関係性はなんだかいいなって思う。
  • 2026年8月14日
    きみは赤ちゃん (文春文庫)
    川上さんの妊娠・出産・育児エッセイ。 日頃SNSやブログでも妊娠・子育てにまつわる色んな人の文章を読むことがあるが、川上さんの感性で描かれると、ほんと面白くて尊さに満ちているなーと思う。 私自身も妊娠・出産は少し遠い記憶になってしまって、嬉しかったことも辛かったこともそれなりにいっぱいあったはずなのに、渦中を過ぎると悲しいかな、その頃の感情を忘れてしまったり美化してしまったりしている。だから、改めてその真っ最中にあって真剣にもがいている人の叫びのような文章を読むと、あの頃の自分と重なる部分もたくさんあって、今更だけどなんだかとても救われた気分になった。 しかしまあ、この本ももう10年近く前の出来事が描かれているわけで。 無痛分娩にまつわる事情とかはそれなりにいい意味で変わってきたところはあるけど、男女の意識差とか、母親の役割とか、仕事との両立とか、そのへんの感覚って10年経ってもあまり変わらないものなんだな…と、川上さんの嘆きを見てしみじみと感じた。 これからの若い世代の人たちは、そういう部分で悲しい思いをしてほしくないなぁ。
  • 2026年8月5日
    イン・ザ・メガチャーチ
    「推し活」を巡る闇深い人間ドラマだった。面白い!…んだけど、ワクワクというより始終ハラハラしながら読んだ。 私自身は色んなジャンルにちょこちょこ手を出すオタクではあるものの、のめり込むほどの「推し」に出会ったことはないので、どちらかというと親目線で読んだのだけど、もし自分の子どもが親の金を無断で「推し」に注ぎ込んでいたら…とか考えると、ほんと怖すぎる! 好きなものを誰かと共有するのは楽しいし、人生に必要なことだと思うだけに、一線を越えるかどうかの線引きは難しい。 どの登場人物も純粋な悪人ではないだけに、何が悪かったのか?どこで引き返せたのか?と答えの出ない思考回路にグルグルはまってしまった。
  • 2026年8月3日
    記銘師ディンの事件録 木に殺された男
    記銘師ディンの事件録 木に殺された男
    中世ヨーロッパ的な世界観で、独自の改変技術で巨獣の襲撃の脅威に抗う人類が生きる世界を描くSF風ファンタジー。 巨獣の脅威が迫る中で起きた殺人事件の謎を追うミステリでもあり、とても読み応えがあった。 やっぱりバディもののミステリは面白い!クセの強い女性上司が安楽椅子探偵で、真面目な部下の青年ディンが助手というコンビの相性が素敵。 ディンは全ての物事を記憶する改変を受けているという設定なのだけど、この能力は読者視点の探偵助手役としては最強だなと思ったり。 巨獣の襲撃でいつ滅んでもおかしくない世界の中でも、自暴自棄にならず自らの正義感をもって真相を解明しようとする登場人物たちがかっこよかった。
  • 2026年7月15日
    探偵小石は恋しない
    不本意ながら不倫調査が得意な探偵の小石さんと同僚の蓮杖君がちょっと変わった色恋絡みの謎に挑む連作短編集。 …かと思いきや、最大の謎は思わぬところにあり、最後まで話の行き着く先が読めなくて面白かった。 ものすごいトリックが出てくるとか、そういう類いのミステリではない。だけど、読者の思い込みというか、無意識の偏見の隙を突いてくる感じが、騙されたのに爽快感があって良かった。 個人的には最後までタイトルの方向性を貫いてほしかった気もするけど、大衆的にはやっぱラブたけのこが求められてるんだろうなぁ。 続編はどういう趣向になるのか楽しみ。
  • 2026年6月27日
    スコッパーの女
    「小説家」にまつわる短編奇譚集。 どことなくモキュメンタリーホラーっぽいというか、実際に著者が見聞きした実話っぽい淡々とした語り口なので、リアルに感じられて惹き込まれた。 だけど、改めて振り返ると、人の死期を読み取る能力を持つ人とか、文章から人の本質を見抜く人とか、キーボードの打鍵音で周囲の生態系に影響を及ぼす作家とか、すごい設定盛りだくさんで、よくこれだけの要素を上質な雰囲気の幻想譚にまとめられるなぁと脱帽する。 色々とヤバい人たちが登場する中で、実は一番ヤバいのは語り部の「私」なんじゃ…?と匂わせてるところが好みなんだけど、一つ残念なのは「私」がうだつの上がらない感じの中年男性だということ。 だって、山白朝子さんって、ミステリアスで妙齢な女性作家さんでしょ?(すっとぼけ)
  • 2026年6月24日
    オウマガの蠱惑
    最近、カクヨム出身の作家さんのホラーが面白いので、こちらも読んでみた。 過疎化の進んだ村を舞台にした、よくある因習村系ホラーではあるものの、村に住む少女の視点で前半はノスタルジーに溢れた田舎の伝統行事が不穏な感じで描かれ、後半になると少女の成長とともに田舎の嫌な部分がどんどん見えてくるのが、なんともリアル。 伝統の裏に隠された内情は、吐き気がするほどひどいものだったが、いかにも因習村らしくて、ある意味期待どおりで良かった。 ただ、怪異的な怖さは正直あんまりなくて、タイトルもピンとこないのが少々残念ではある。
  • 2026年6月7日
    プロジェクト・ヘイル・メアリー 上
    プロジェクト・ヘイル・メアリー 上
    久しぶりに海外のSFを読んだ。 科学にも宇宙にも疎くて、前半はかなり読み飛ばしてしまったが、ロッキーと出会ってからはとにかく面白い! 目覚めると一人で宇宙船の中にいて、記憶は失われているし、なんか地球の危機を背負っているっぽいし…からの、未知との遭遇!という流れはめちゃくちゃ王道でワクワクした。 特に、生きる環境も言語も異なる相手とコミュニケーションを積み上げていく様子が面白く、いつのまにかロッキーがかわいくてしょつがない。イマイチ彼の外観のイメージが湧かないので、映画の画像をチェックしてみようかな。(かわいくなかったらどうしよう…) 早く下巻読みたい。
  • 2026年6月6日
    グレタ・ニンプ
    妊娠が判明した途端に謎のヤンキー(?)キャラへと激変した妻に戸惑う夫の悲喜こもごもを描いたコメディ。 自分もそれなりに妊娠出産では色々あったので、豹変した妻の気持ちもわかるなぁ………って、いや、ぜんぜんわからんわ!むしろオロオロする夫の気持ちに全力で共感するわ! ってくらい、変貌ぶりがヤバくて笑える。(あと、ところどころページをぶち破りそうなフォントが登場するのも笑える。) 基本的には妻も夫も性格はいい人だし、悩みも闇が深くないから安心して読めるけど、妊娠出産育児を巡って世間から感じるモヤモヤっぷりはよく描かれているなあと思う。 この夫婦にはそんな空気感に負けないで自分たちらしく育児をエンジョイしてほしいな。
  • 2026年5月23日
    神の光
    神の光
    館や街など、スケールの大きい消失の謎をテーマにした短編集。 どの話も見間違いや勘違いとかではなく、物理的に解明していくスタイルなのがある意味斬新で面白い。 まぁ、スケールでかすぎて説明されても「え、そんなことある…!?」って思っちゃうのが正直なところだけど。 でも、どの話も消失の謎の背景に歴史やロマンがあって、全体として作品に漂う雰囲気がニヒルでかっこいい感じだった。 お気に入りは「シンクロニシティ・セレナーデ」。
  • 2026年5月11日
    I
    I
    視点の異なる2章の物語からなる小説で、読む順番によって、多くの人が殺されるか、それとも救われるか、全く異なる結末になることが序盤で明示されている。 自分は幸い、救われるルートで読むことができたが、本当にこの構造はすごいと思う。 というか、構造を分かった上で違う順番で読み返してみても、本当に逆の結末になるのかどうか、分かるようで分からない。 自分の記憶を消して、逆の順番で読めたらなぁ…!(と言いつつも悲しい結末は嫌なんだけど…) 物語自体は、過去に家族を失い、悲しみと抱えながら危ういバランスで生きている登場人物が多く、道尾さんの描く、この仄暗い雰囲気の世界観が好きだなぁと改めて感じた。
  • 2026年5月6日
    学校の怪談じゃ、ものたりない? 君に綴る5つの恐怖
    学校の怪談じゃ、ものたりない? 君に綴る5つの恐怖
    ヤングアダルト向けのホラーアンソロジー。 目当ては伴名練作品だったけど、収録されている5作品の作風がかなり違うので、このアンソロジーをきっかけにホラーの世界の広さを今の中高生が知ってくれるといいなーと謎の上から目線な思いを抱いてみたり。 宇宙を巡るボーイミーツガールちっくな伴名作品と、学級新聞づくりの班員を襲う悲劇を描いた澤村作品は、闇深い中にも青春っぽさがあって雰囲気が好きだっただけに、もう少し救いがあってほしかったなーと思ってしまった。でも、今の中高生は安易なハッピーエンドは求めてないのかも?とか余計なことを色々考えちゃって、我ながら面倒臭いことこの上ない。 結局のところ、梨作品がシンプルに一番印象深かったかも。 昨今、飽和状態のように感じられる、とあるジャンルを皮肉ったようなオチが痛快だった。
  • 2026年4月28日
    ハヤディール戀記(下)
    上巻からのスピード感に乗って、あっという間に読了。 張り巡らされた伏線が次々と回収されていくのでミステリーとしてはスッキリする一方、甘々ラブストーリーに期待してた身からすると、レルフもエスタもなんだか色々大人過ぎて、もっと自由に生きろ〜!と叫びたくなる。 黒幕がビックリするほどの小物でちょっと笑えたが、攫われた巫女の謎が、王宮の暗い歴史にまで繋がっていく壮大さは魅力的。 このタイトルなのも納得がいく美しい物語の幕切れだった。
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