アンチ・アンチエイジングの思想

31件の記録
- talia@talia0v02025年9月27日読み終わったどちらかというと副題の「ボーヴォワール『老い』を読む」がメインの本。 もともとみすず書房の連載をまとめたものらしいです。第1〜10章でボーヴォワール『老い』をさまざまな視点(文化、歴史、性、女性etc...)から焦点を当てて読み、第10〜15章でシームレスに現代の現代の超高齢化社会、高齢者福祉、アンチエイジングについての考察を行う。 30代という私の年齢は「“老い”を意識する」と言えば「まだ若いのに」と言われる年齢だと思う。 とはいえ私を含め同年代を占める私の友人たちは10代20代からの身体の変化を気にする人や、それこそ「認知機能が働いてるうちに死にたい」と口にする人もいる。 私はそこまで断言できないものの、でも自分がその時になったらどうしたいかわからない、問いに答えを出せずに優柔不断な態度でいるのが正直な所。この本はその答えを得るために読んだわけでも、この本を読んでその答えが見つかったわけでもないのだけれど、高齢者福祉、介護、認知症について章を割いて書かれていたことは少しだけでも私の解像度を上げてくれた気がしました。 第5章、上野さんの別著書からの引用だそうですが、以下の文章が好きです。 「フェミニズムが要求してきたのは、女も男なみに強い、女も男なみに能力があるから、男と同じように待遇してほしいということではなかった。女は弱い、喧嘩したら勝てないかもしれない。子どもを産んだら、ハンディができるかもしれない。だが、それだからといってなぜ強い者の言うことに従わなければならないのか。弱者が弱者のまま、尊重される方法はないのか。そう、主張してきたはずである」 もしフェミニズムが「女も男なみに」という思想だったとしたら、向老学もまた「年寄りになっても若者と変わらない価値があると言いつづけなければならないことになる。高齢者は弱者ではない、と言いつづけなければならない。齢をとっても若々しく生きよう、というアクティブ・エイジングの考え方を採る人もいる。だがそういう人は、自分がアクティブじゃなくなったらどうするのだろうか?」 「向老学学会というのは、老いに立ち向かう学会ではなく、老いを迎えいれる学会だ、そうわたしは信じている」
- 白玉庵@shfttg2025年9月25日読み終わった途中、あまりにも老化の諸々が辛く、脱落しそうになった。しかし14章から圧巻というコメントに励まされて最終章まで辿りついた。尾根を転がり落ち、暗い谷を抜けて、小川のそばの広場に出たような気持ち。最後まで読んでよかった。 家族の老化、自身の老化について不安や現在進行形で問題を抱えている人に、小さな灯りになるような本。上野千鶴子、ちゃんと読んだのは久しぶりだったけれど素晴らしかった。 新自由主義と家父長制的価値観を内面化するのはやめましょう…不幸になるだけなので…
- とうふち@tofuchikuwan2025年8月27日読み始めたボーヴォワールの『老い』をいつか読まねば…と長らく思っていたところ、本書を見つけた。 ひとまず第二章まで読んだ。ボーヴォワールの時代と今との違いにも触れつつ説明されており、非常に読みやすい。
- 森乃栗@readskm2025年7月16日読み終わったボーヴォワールが1970年に出した「老い」をコロナ禍に読んだ上野さんによる論評。生きることと老いることについて、上野さんの考えがはっきりとわかる。 第14章から終章までが素晴らしかった。老いることをありのままに受け入れること、人間が依存し依存される形でしか生きられない存在であることが認められない社会、依存が許されない社会こそが悪だと書かれている。 自分のなかにある自立志向が、自立が難しくなってきた親をケアするときに心理的な抵抗の源になっていると常々感じてはいたけれど、それは自分の性向というよりも、時代や社会の要請を身体化した結果かもしれないとふと思った。 ひとの尊厳が守られる社会は自分の尊厳も守られる社会だと感じる。安心して老いたいと願わずにはいられない。