黒い雨

42件の記録
- 原沢香司 フクロコウジ旅と本と人@harasawa_koji2025年9月13日聴いた@ フクロコウジ 旅と本と人日記をなぞる形で、広島での被爆実態が立ちのぼってくる。生と死がないまぜになった世界が、確かにそこにあったのだろう。筆の力の強さは、安直に戦争の愚かさを描くのではない。市井の人たちの生活がどのように奪われたのか、変化したのかを淡々と書く。すごい力を持った作品だと思った。
- てぃ@titi__o42025年9月3日読み終わった「あそこに転がっている、あの弁当を敵が見てくれないかなあ。あの飯を見たら、敵はもう空襲に来なくてもいいと思うだろう。もうこれ以上の無駄ごと、止めにしてくれんかな。僕らの気持、わかってくれんかなあ」 (p.57) 僕は或る詩人の詩の句を思い出した。少年のころ雑誌か何かで見た詩ではないかと思う。 おお蛆虫よ、我が友よ…… もう一つ、こんなのを思い出した。 天よ、裂けよ。地は燃えよ。人は、死ね死ね。何という感激だ、何という壮観だ…… いまいましい言葉である。蛆虫が我が友だなんて、まるで人蝿が云うようなことを云ってる。馬鹿を云うにも程がある。八月六日の午前八時十五分、事実において、天は裂け、地は燃え、人は死んだ。 「許せないぞ。何が壮観だ、何が我が友だ」 僕は、はっきり口に出して云った。 荷物を川のなかへ放りこんでやろうかと思った。戦争はいやだ。勝敗はどちらでもいい。早く済みさえすればいい。いわゆる正義の戦争よりも不正義の平和の方がいい。 (p.204-205)
- m@kyri2025年8月10日読み終わった@ 自宅広島や長崎の被爆者たちがこの世からひとりもいなくなる時がきたとしても、この小説があとに残るならばきっと核廃絶の希望は消えないだろう この世の地獄を煮詰めたような記述の数々のなかに、井伏鱒二自身が持つユーモアも随所に垣間見れて、決して快い読書ではないけど、それでも人間の強さ逞しさ美しさもまた感じられる小説だった 戦後80年の課題図書に良い本だった
- amy@note_15812025年7月23日読み終わった感想戦争文学としてあまりにも有名な井伏鱒二の『黒い雨』 戦後80年だしと思ってようやっと手を出したのであった。小学校のころから知っていた作品だけど『黒い雨』というタイトルが禍々しすぎてずっと読まずにいた 『黒い雨』を読み、戦争の終わりが必ずしも平和の始まりではないことを痛感した。原爆投下の惨状は、日記を書き写すという形で再現され、過去の記録と現在の生活が交錯しながら物語が進む。その構成が出来事の記憶とその影響がなおも続いていることを強く印象づける。被爆による病や偏見、婚姻問題など、原爆が奪ったのは命だけでなく、人としての未来そのものである。これからも日本が唯一の被爆国であるべきだと強く思う。同じことを他の国の人たちは経験しないでほしいし、する必要は絶対にない 2024年ノーベル平和賞には日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)が受賞した。それほどまでに核兵器は脅威と恐怖の象徴であり、「核兵器のない世界の実現を目指して尽力し、核兵器が二度と使われてはならないことを目撃証言を通じて身をもって示してきた」活動が受賞に値する活動であることを認められた 核兵器は廃止されるべきだし、核兵器禁止条約に署名するべきだと思う。過去の悲劇として片づけず、今も問いかけ続ける一冊である