死者の奢り・飼育
79件の記録
- リリースデー@R-D2026年8月23日読み終わった人体の皮脂と汗のすえた強い悪臭が全編から漂ってくる。 目の前で人間の尊厳が踏みにじられている時、周りの者がそれを自分と同じ人間と見なしていなかったり、誰一人手を差し伸べず見てみぬふりをしたり嘲笑ったり踏みにじる側にまわったのを目撃してしまったような、そしておまえもそちら側だろうと冷ややかな怒りと嫌悪の眼差しを向けられている錯覚を催す後ろめたく嫌な気持ちになるすごく面白い短編集だった。 『飼育』が特に野外/地下倉、黒人兵/子供、前半後半のコントラストが強烈で残酷で好き。一人称の子供の無邪気と残酷さが本当に怖い。 あと『他人の足』も良い、紛れもなくリベラルで熱心な大学生に全員感化はされて、しかし結末は…の突き放した残酷さ。大好き。 直接の加害者よりも隣人あるいはリベラル人権派なはずの個人の卑小さへの冷たい眼差しが強く、これは戦中戦後の経験から来る実感なのか、書いた当時23歳(!)だった作者の青年らしい弱さや偽善的なものを嫌悪する若さなのか、括弧つきの日本人的なものなのか。その全てなのかもしれない。
Old Sport@scott_fitzgerald2026年8月17日読み終わった①⓪④死者の奢り ⭐︎⭐︎⭐︎ 水槽に浮かんでいる死者たちは、死後直ちに火葬された死者たちとは違って、「物」であるという記述が印象的だった。死者を物とみなしている点はいかがなものかとと思うが、水槽に浮かんでいる死者たちの扱いは物そのものだった。また、死者と対を成す存在として、女子大生のお腹に赤ん坊がいる設定にし、より死者を際立たせる工夫をしていた点も印象的だった。 ストーリーとしては、「僕」たちのやっていたことが全て徒労であったという物語だったので、がっかりしたが、この徒労感を作者は描きたかったのだろう。 『死者の奢り』というタイトルではあるが、死者が奢っていることを示唆する描写は全くない。このタイトルの意味には疑問が残る。 利沢行夫氏によると、新しい死体は不安定であり、生きている人間はいっそう不安定であるが、古い死体は不動のまま実在している。死者の奢りとは、このように生きているものに対して死者が、その存在の不動性を誇示していることに他ならない、と述べている。 ①⓪⑤他人の足 ⭐︎⭐︎⭐︎ 小説を読むことの意味の一つに、登場人物の人生を追体験できることが挙げられると思うが、この短編を読んで、それを実感した。サナトリウムに暮らしている少年たち。車椅子なしでは、看護なしでは生活できない少年たち。そんな彼らの生活を、垣間見る瞬間なんて、普通に生きていたら、残念なことにない。最後に、足を取り戻した学生が、少年たちに冷笑的な態度を取るのは、我々健常者が、如何に彼らの生活に無関心であるのかを、警告しているように感じられた。 ①⓪⑥飼育 ⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎ 芥川賞を取って然るべき作品。彼ほどの語彙力があり、想像力と、それを作品に昇華させる筆致力があれば、芥川賞はおろか、ノーベル文学賞を取ったこともなんら驚きではない。 黒人を監禁するという表現ではなくて、「飼育」するという表現を使っている。これは、黒人を人として見做していないことをタイトルから示している。「敵、あいつが敵だって?黒人だぜ、敵なもんか」という兎唇のセリフの真意が初めはわからなかった。だが、その後、「一匹の黒人にすぎないのだから。」「僕らは黒人兵をたぐいまれないすばらしい家畜、天才的な動物だと考えるのだった。」という記述から、彼らが黒人を当たり前のように、人として見做していないことがわかる。僕は本作品が、アメリカ人作家によって書かれたのではなく、日本人作家に書かれたことに驚きを覚える。 柴田元幸が、「大江健三郎による創造的ハック・フィン訳と評しても、マークトウェインにも大江健三郎にも失礼にはならないだろう。少なくとも黒人兵が白人兵だったらこの物語は成り立たない」と述べているように、本作品は黒人を登場させたことが決定的な意味を持つ。黒人は最も異質で、最も孤立した存在であった。アメリカ兵を白人として登場させていたら、これほどまでに作品に没入することはできなかっただろう。 疑問点が二つある。一つは、書記が死亡した理由。もう一つは、兎唇を登場させた理由。前者に関しては、ネットに詳しい記述があったので載っけておく。https://www.google.com/url?q=https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1450703059&sa=U&sqi=2&ved=2ahUKEwjc-Pr6zqaWAxV_gVYBHfIPHIAQFnoECCMQAQ&usg=AOvVaw3eFH52nHxSRMwsba63rh_N 後者に関しては、理由がわからない。
紫陽花@f_you_m2026年8月7日かつて読んだ前から著者名は知っていて、本屋で平積みにされてたから買った一冊。戦時中〜戦後辺りの、酷く澱んで、粘着く、そんな人間の精神状態を描いてる気がする。特に『飼育』は、上手く言葉に出来ないけど何度も読むのを止めようって思いながら読み進めた。僕はもう子供ではない、という考えが啓示のように僕をみたした。- レッチリ@oi090659108112026年6月15日読み終わった大江健三郎の初期作品6作が入っている。「飼育」は芥川賞を受賞した。 サルトルと実存主義に基づき、人間の存在のあり方について書いている。 「死者の奢り」「他人の足」では、人間を一つの物質的存在として捉え、その身体や生の意味について考察している。一方、「飼育」「人間の羊」「不意の唖」「戦いの今日」では、日本人と外国人という対立関係の中で、人間が他者とどのように向き合い、偏見や暴力、支配と被支配の関係をどのように生きるのかが描かれている。これらの作品を通して大江は、戦後社会における人間の孤独や不安、そして自由である、不自由であるとはどういうことかを追求している。
⛀⸒⸒@msd2026年4月15日読み終わった『死者の奢り』と『他人の足』と『人間の羊』が好みだった 沈殿されたコーヒーの原液並に苦い雰囲気が常にまとわりついてる作品たちでこの年齢でこんな文章を書けるのかと感嘆した 閉塞感ある世界における異質なものと剥き出しの人間の醜さが描かれていて重く常に気味の悪い感じを体験できた こんなに気味悪いのに読む手が止まらないのが作家の文章の上手さを改めて実感させられる…
米谷隆佑@yoneryu_2026年1月12日読み終わった脂、空気、性と死と少年の成長。 おぼつかない心理状態で従属関係にヒビが入る様が、なんだか見ていて不憫である。しかし、この青年、子どもたちの生活が閉塞されてあることに、変化を促す兆しでもあることに気づくべきだ。外から異分子が入るだけで動揺し、自身との関係を納得する。そのすべての論理に無理はないのだが、予測されない言動に「恐るべき子ども」らしいと成長譚を見る。
うみぶどう@umibudou2024年2月18日読み終わったかつて読んだ「死者の奢り」「他人の足」も良かったけど「飼育」が飛び抜けてる。とにかく文章が圧倒的で一行一行が光り輝いて見えた。あまりにも素晴らしいので読み終えてしばらく呆然としてしまった。





















































