ブラック・カルチャー
79件の記録
勝村巌@katsumura2025年12月20日読み終わった奴隷貿易や奴隷制を起点に環大西洋的な視座から、黒人の文化を音楽、文学、アートなどを横断的に捉えて読み解く内容。大変素晴らしい内容でした。 今年の初めに読んだ後藤護さんの『黒人音楽史』にも深く接続する内容でこれまで自分が見知ってきたさまざまな黒人に関連する点在する物事がシュパシュパとつながる感覚があり面白かった。 高校時代にジミヘンドリックスにハマり、大学時代はJB、スティービーワンダー、マイルスなどを聴き、それに関する評論なども読んできた。公民権運動やヒップホップの歴史などの良書もあるのでそういうものにも触れてきたわけだが、そういう知識に背骨が通ったような感覚を持った。 菊地成孔と大谷能生がどこかのラジオかドミューンかで後藤さんの『黒人音楽史』について語っていたので、それを読み、そこから中村さんのことを知り本屋で見かけて読んだわけだが、本の持つ引力やセレンディピティを感じる体験となった。 内容としては前半の6章は奴隷貿易に端を発するブラックディアスポラについて丁寧に歴史を読み解いていく。 文字を知ることが「奴隷には向かなくなる」ものとして禁止されていたため、黒人にとって口伝や口承が文化そのものとなり、そこから歌や踊りが文化としてかけがえのないものとして立ち上がっていった、というのはなるほど、と思った。 音楽について、黒人霊歌、ブルース、ジャズの成立と発展はニューオリンズからミシシッピ川遡ってシカゴへ至る流れとして大体の経緯は知っていたが、黒人奴隷からの聞き書きによる奴隷体験記をトーキングブックと呼ぶ、ということは初耳だった。それこスティービーワンダーのアルバムに『トーキングブック』というものがある。 黒人文学についてはサミュエルディレイニーを数冊読んだくらいなので、例えば黒人奴隷の年代期としてテレビドラマにもなっているアレックスヘイリーの『ルーツ』などはやがて読まねばならない作品と感じた。 またアフロフューチャリズムやアフロセントリシティなどの言及にも興味深いものが多かった。 黒人ファンクのジャケなどに時たまエジプト的な衣装が施されていることがある。アースウィンドアンドファイヤーの『太陽神』とか、アフリカバンバータの諸作品とかですが、僕はこれは単なる賑やかしというか、エジプトって面白いよね〜みたいなノリでやってたんだと感じてましたが、実は1970年代にセネガルの研究者がエジプトは黒人国家だったとする論文を発表していたのです。 公民権運動などの中でブラックアズナンバーワン的な黒人意識高揚の観点から急進的な活動家などに指示されたこの学説はアフロフューチャリズム(こっちは未来志向)などと共に過去においてもブラックはすごいんだ、という主張の拠り所となっていったらしい。このアフリカ黒人起源説はDNA鑑定的には否定されているようですが、黒人の心を掴んで離さないコンセプトとなっているらしいのです。 だからファンクの人たちって時たまエジプトっぽい衣装を着てるんだ。日本だとスペクトラムとか米米クラブとかってなんかそういう感じだけど、そこら辺の思想のなさが能天気で良いな、と思います。 そのほか黒人文化を模倣する形で取り入れる白人貧困層をホワイトニグロと呼び、非当事者として差別する流れや映画ブラックパンサーについての解釈なども大変面白かった。 また、日本の研究者は黒人奴隷問題については完全な非当事者なため、文章に大変気を遣っているところが感じ取られて気品もあり、素晴らしいなと思う反面、デリケートな問題をしっかりと正面から扱う勇気にも感動した。 広く読まれてほしい一冊です。



Yamada Keisuke@afro1082025年9月29日読み終わった電子書籍このタイトルで岩波新書となれば、読まざるを得ないと思って手に取った。ヒップホップをはじめ、アメリカ、イギリスのブラック・ミュージックが好きな人間であればあるほど、「ブラック」という呼称について考えをめぐらせることになる。本著では、大西洋を軸に据えることで、宗主国の視点だけでなく、オリジンであるアフリカに焦点を当てている点が新鮮だった。 タイトルどおり、ブラック、つまりアフリカの人々が奴隷として北米や南米(著者はアメリカスと呼んでいる)へ連行された結果、誕生したカルチャーの変遷を追った一冊となっている。ドラマ『ザ・ルーツ』、映画『それでも世は明ける』、小説『地下鉄道』など、アメリカにおける奴隷制度を題材にした作品は色々と見たり、読んだりしてきたが、それでも抜け落ちている視点がまだまだあることを痛感させられる。近視眼的ではなく、もっと俯瞰した形で、北米に閉じないアメリカスとアフリカの関係性を捉えることで、文化の豊かさをさらに噛み締められるのだ。 ここ日本でもヒップホップが爆発的人気を獲得している今、ヒップホップのルーツとどう向き合うべきか?という問いは、しばしば問われがちだ。つまり、それが借り物の文化であることに自覚的かどうか。しかし「貸し借り」という窮屈な図式に陥るよりも、本著を読むと、アフリカの人々が連綿と伝承してきた音楽スタイルの延長線上に、日本のヒップホップが存在していることに気づかされ、歴史の壮大さに対して自然と敬意が芽生える。それを可能にしているのは、著者が「環大西洋」という広い領域を対象に、現行のブラック・ミュージックを位置付けているからだ。また、ブラック・カルチャーはアフリカ系アメリカンが占有するものではないことを丁寧に示しており、後ろめたい気持ちがいくばくか和らげられる人もいるだろう。(決して盗用の肯定ではないことは補足しておく。) 「自分は〜である」とその反対の「他者は〜である」というアイデンティティ画定の呪縛を解除し、絶えず混交状態を生きている私たちの生の実態をむしろ見つめましょう。そのことを教えてくれるのもブラック・カルチャーです。ブラック・カルチャーが植民者の文化を受容し、何世代もの創意と工夫によって自文化をつくりあげてきたように、私たち一人ひとりもまた、日本語をはじめとする文化を共有しながらも、世界のさまざまな文化にかかわり、ときに他者の文化を自己の属性に変えながら、生きています。 「ブラック・カルチャー」とはなっているが、音楽が一番フォーカスされているテーマである。奴隷制によりアフリカの各民族が分断され、奴隷としてアメリカスで過酷な労働に従事する中で、なんとか伝承されてきたのは、口頭伝承だからこそ。文字に残されなかったがゆえのニュアンスがメロディやリズムに息づき、その揺らぎがブラック・ミュージックのグルーヴを生んでいる。今ではポップミュージックにも大きく浸透し、多くの人々を惹きつけてやまない。文字の記録こそ進んだ文明の証とされがちだが、必ずしもそうではないことを示している点も興味深い。 西洋音楽が楽譜に書いた理論を再現するという抽象的世界から出発するのに対し、アメリカスの奴隷制社会から生まれた音楽は、奏でられる音を聴き、真似て覚えるという個別・具体的世界から生まれてきた現実と無関係ではないはずです。 世の中では「新しさ」が重視され、斬新であることが称揚されがちだが、本当にそうだろうか。著者はブラック・ミュージックの性質を思想家のアミリ・バラカンの概念を用いつつ「変わりゆく同じもの」だと主張している。単純に「新しい」というだけではなく、その未来は過去から生み出されている。ヒップホップのサンプリングはまさに最たるものだろう。偶然なのか、この「変わりゆく同じもの」をテーマにした日本語ラップの曲を思い出した。 新書とは思えないほど広範な議論が展開、紹介されており、ここで紹介したのはほんの一部だ。「ブラック・ミュージック」好きの方は、ぜひ読んでほしい一冊。


Sanae@sanaemizushima2025年8月23日読み終わった今年セネガルの奴隷貿易の拠点であった世界遺産ゴレ島を訪れたとき、アフリカ系アメリカ人やアフリカからの訪問者も多く、そういう人たちから黒人は凄まじいものを背負っているというのをひしひしと感じた。 ジェイムズ・コーンの言葉 「黒人以外の人間が、黒人の背負ってきた苦しみや痛みを理解するのは難しい」とこの本でもその言葉が紹介されている。 しかし著者の中村先生からこの本から受け取った言葉は「その苦しみや痛みの由来を知る努力をするべきだ」ということ。 関係し合う考え方、全-世界の捉え方に「ブラックカルチャーは私たちの一部である」という言葉が心に響く。11章を何度も読んだ。




素潜り旬@smog_lee_shun2025年8月19日読み終わったポエトリー・リーディングの記述が少しあり、アミリ・バラガ、サン・ラなどについて。そしてダブ・ポエトリーも。第一章と第三章の、精霊、ドラミング、声、叙事詩…第七章の〈文字のなかの声〉ダブの詩人たち…著者の語りに含まれるポエジーを聞いた。


すぱこ@supako_282025年7月6日読み終わった読みたいと思っていたのでスッキリ。ブラックミュージックといわれる音楽が好きなのだけど、ルーツと流れと未来をこの一冊で考えながら読めたのはとても楽しい読書体験だった
しもん@shiminnoaka2025年5月3日読み終わった人類史の負の側面である大航海時代の奴隷貿易から、その後20世紀まで合衆国を始め世界各地で実施されていた人種隔離政策。しかし抑圧されてきた人々はそのような状況下においても自分達の誇りを失わず、連帯と結束のための文化を生み出し約400年という長きに渡ってそれを継承し洗練させてきた。それは他者との分断が喫緊の課題として叫ばれる現状に大きな希望と揺るぎないエネルギーを与えてくれるに違いない。 本書は新書サイズでありながら概説書として有用であるのみならず、個人が陥りやすい臆見に対する鋭い指摘を挟みながら、私にとって他者の文化である〈ブラック・カルチャー〉を私に"関係"するものとして導いてくれる。そのような本との出会いに対して、我々は途方もないほどの嬉しさに打ち震えるほかないのである。
はるか@halorso2025年4月23日読み終わったジャズを中心とした北米の音楽史やブラックフェミニズムなど、以前ばらばらに読んでいたものが環大西洋的に語られることで頭のなかで有機的につながり、紹介される用語を想起するとき地域は広がり、由来や文化宗教の背景が北米起点よりも以前の具体的なアフリカの国につながっていく読書だった。文化の盗用について<関係>という概念から語る箇所は折に触れ読み返したい。聞きたい音楽や読みたい本がめちゃ増える。



















































