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いち。
いち。
@tokisakananao307
読書好き。 読むスピードが遅い、もっと速く。 アウトプットが下手、もっと上手く。 何事も積み重ねあるのみ。
  • 2026年5月27日
    52ヘルツのクジラたち
    「ひとには魂の番(つがい)がいるんだって。愛を注ぎ注がれるようなたったひとりのひと。あんたがその魂の番に出会うまで、わたしが守るよ」 52ヘルツのクジラとは、他の仲間に聞こえない高い周波数で鳴くため、音を届けられないという孤独の存在。家族に人生を壊され続けてきた女性、貴湖は同じような扱いを受けている少年、ムシと出会う。これは同じ孤独感によって惹きつけられた2人が成長し、愛を知るまでの軌跡ーー。 人生を生きる上で自分を邪魔する障害が現れたとしても、共に打ち砕いてくれるような人がきっとどこからか現れて、悪い流れを断ち切ってくれる。自分に嘘をつかなければ、何かがいい方向に働いて変わっていく。そんな様子がクジラの鳴き声という比喩表現となって、壮大な物語として感じられる。人の愚かさと優しさのせめぎ合いに苦しんだり温かくなったりする、社会派小説の擬似体験は確かにフィクションだけれども、どこかリアリティがある。これが癖になる理由の一つだと理解した。
  • 2026年5月24日
    一次元の挿し木
    一次元の挿し木
    「僕が彼女の手を取り、抱き寄せたその瞬間から、迷宮に足を踏み入れていたのだ。」 ヒマラヤ山中で二百年前に見つかった人骨をDNA鑑定にかけると、四年前にいなくなった妹のデータと一致した。遺伝人類学を学ぶ悠はこの異様な結果を教授の石見崎に相談しようとした矢先、彼を遺体として発見する。さらにその直後、鑑定していた人骨が盗まれる。悠は妹の行方とともに謎を追いかけんと奮闘する。この先に待つ真実が壮絶なものであることを知らずにーー。 人を形作る細胞の説明を随所に散りばめるなど、専門知識紹介が多い中でも読みやすく感じる。その理由は登場人物の視点を細かく分け、丁寧に描くことで可能にしており、物語の描写がよりスッと入るような感覚がある。タイトル回収もわかりやすく綺麗なものだと思う。
  • 2026年5月20日
    小説の神様 あなたを読む物語(下)
    「わたしは続きが読みたい、だからこの想いを物語としてあなたにぶつける。」 「君という物語の最初の読者は、僕でありたい。じゃなきゃ嫌なんだ。」 成瀬はついに再会した親友に小説の魅力を否定され、小説を通して救われた自分にその責任があると感じ、物語に可能性はないことを思い知らされる。その一方で、一夜と詩凪は物語を紡ぐことに対して大きな壁を抱えたことで、ある選択を迫られていた。彼らは考え続ける。物語とは何のためにあるものなのかーー。 物語の上で読者と作者がつながったとき、はじめて意味を理解できるのだとしたら、そんな奇跡は起こらなくて当然である。しかし、作り手が作り手であり続ける本当の理由は、顔も知らない求めてくれる人がいるから、理解しようとしてくれる人がいるから。本屋に行って惹かれた本を手にとる、そんなささいなことが日常に潜む奇跡と言ってもいいのかもしれない。
  • 2026年5月16日
    小説の神様 あなたを読む物語(上)
    「わたし、小説を書くのやめたの。」 「物語で人の心が動くなんて、錯覚だ。」 合作小説を執筆してから少し経ち、一夜と詩凪は続篇を書こうと動いていたものの、詩凪はこれまでに続刊を出したことがなく、進捗はいまいちだった。その一方で文芸部の後輩成瀬は小説に出会うきっかけとなった、かつての友人に再会するーー。 人が書いた物語を批評するのもまた人である。小説において売れるか売れないかに起因するのはトレンドや市場への適応。それは作者が描く特別な物語よりも魅力的といえるのか、売れない=面白くない、ではないはずだと信じる人達がもがく様子からコンテンツの価値観について深く考えさせられた。
  • 2026年5月14日
    悪魔情報
    悪魔情報
    「この世には知らない怪異が山ほどある。それを知ることがいつか役に立つ日がくるかもしれない。」 2chのような掲示板形式で展開されるオカルト現象を題材にした本。洒落にならない怪異に対して弁論をくり広げるスレ民達は密かに期待している。悪魔情報というユーザーが現れることをーー。 笑いごとではないくらい異常な現象に対して、キレのあるツッコミや閃きを投稿していく名無し人達のセンスがありすぎて、怖いどころかクスっと微笑んでしまう新感覚の本だった。電子書籍の方が向いていそうな本に出会えるとは想像もしていなかった。こういうのも表現もありなのか。
  • 2026年5月12日
    小説の神様
    小説の神様
    「小説とは願いなのかもしれない。物語を通じて私達は勇気をもらって歩き出せる気がするから」 千谷一夜は売れない高校生作家で、かつての輝きを失い小説が書けずにいた。しかし、突如現れた同い年の人気作家の小余綾詩凪と合作小説を執筆することになる。果たして2人が書き上げる小説にはどんな物語が綴られるのだろうかーー。 一夜は本が売れないことに焦りを感じている中で詩凪と出会う。自分の物語を書き続けることでしか自分の価値を証明できないが、万人受けしない事実がそれを否定するかのように現れる。正解なんて存在しない、売れなくては作家としてやっていけなくなるかもしれない。そんな葛藤にもがく彼を応援せずにはいられなかった。
  • 2026年5月10日
    白昼夢の青写真2
    白昼夢の青写真2
    「信じてるわ。あなたの描く物語で、私を史上初の女優にしてくれるって。」 タフすぎるヒロインと出会い、やがて大成するであろうウィリアム・シェイクスピアが劇作家に成るまでの苦悩と成長を描いた中世ヨーロッパのお話。 時代に抗い、価値観に囚われず挑戦し続けたウィルとオリヴィアが生きている情景がしっかりと脳内に浮かぶ。原作をプレイしたあの瞬間の再演ともいうべきこの体験は凄まじい満足感を確かに与えてくれる。この作品はまだまだ面白くなることをここに宣言させてほしい。
  • 2026年5月7日
    なぜ「あしか汁」のことを話してはいけないのか
    「あしか汁とは何なのか、たったそれだけの好奇心が全てを変えてしまいました。」 これは私の大叔父が残したノートに残された奇妙な言葉を探る中で起きた壮絶な記録。真相にたどり着くまでの過程に何があったのか、この全てを見届ける覚悟があなたにありますかーー。 キーワードを追いかけていくことで謎が紐解かれていく地続き構造…だけじゃない。あしか汁なんてキテレツな言葉を持ってきて何が待っているのかと思えば、戒めとか呪いをコケにしてきた人々の罰だったんだなぁ……。
  • 2026年5月5日
    文庫版 近畿地方のある場所について(1)
    「私はある人物を探している。その人物についての情報をお持ちの方はご連絡いただけないだろうか」 小澤雄也は出版社に勤める編集者で、退職した部下の仕事の穴埋めに負われている。そんな中『別冊Q』というオカルト誌の復活刊行が決定したため、その分野を得意とする瀬野千尋に話を持ちかけるがーー。 怖さに連れられて悲しさが飛び込んでくる、物語性が強く残るホラー作品。大切なものを失い続けたとき、人がどうなってしまうかをこの本はある意味で予言しているのかもしれない。とはいえリアリティありすぎなホラーとしての怖さがしっかりと感じられる。物語後半のギャップには驚きを隠せなかった。
  • 2026年4月29日
    火のないところに煙は
    「火がないと思い込んでいても、煙はすでに迫っているのかもしれない。そう思わずにはいられなかった。」 短編集だが、どの話においても「日常に起こる怪異がベースとなる一貫性」があり、平穏が嫌な気配とともに塗り替えられていく様は怖くても続きを読まなくてはと思わせてくる。現実か創作かの境目があるように見えるが、それすらも考えるべきではないのかもしれない。まさかと思う展開が何度も味わえる傑作。
  • 2026年4月26日
    口に関するアンケート
    「呪われた木がある場所を知っているんだけど、気になるからみんなで見に行かないか。」 ーあらすじ 呪われた木に集う大学生グループ。彼らがそこで見たものは何だったのか、なぜ見えてしまったのか、彼らへのインタビューに隠された真実が眠っているかもしれないーー。 ーコメント 人同士のすれ違いという目に見えない恐怖は蓄積することで取り返しのつかない事態に発展する。これはひぐらしのなく頃にで学んだことだが、まさにその類いのじわじわと迫りくる怖さが感じられる。
  • 2026年4月25日
    屍人荘の殺人
    屍人荘の殺人
    「私はどうしても復讐しなければいけなかったんです。あの人達の人生を狂わせた張本人を。」 大学のミステリ愛好会に所属する葉村と明智。今日も今日とてくだらない会話をしていると、同じ大学の探偵女子、剣崎から映像研の夏合宿に行こうと誘いを受ける。彼らは紫湛荘というペンションに泊まることになるも、信じられない事態に巻き込まれ、籠城を余儀なくされる。それだけではとどまらず、一夜明けると部員が死体となって発見される。まさに地獄が幕をあけた瞬間であったーー。 一難去ってまた一難とは、この作品のように、外も内もクローズドサークルである状況を指した言葉なのかもしれない。この特殊な状況には確かに現実味がある。複雑ではないが真実に迫りきれないバランスが読む速度を加速させていく体験として確立されている。
  • 2026年4月21日
    世界でいちばん透きとおった物語
    「顔も知らない最低な父親の遺稿を見つけて、そのすべてを否定してやるつもりですよ、僕は。」 著名作家である父親は女性関係に困らず遊び続けていて、その中の1人は子供まで身籠った。その子供がまさしく自分=燈馬のことだ。ある日、父親の息子である宮内という男が燈馬を訪ねてくると、父親の遺稿を探してくれと依頼される。面倒ながら引き受けた先で、燈馬は秘められた真実を知ることとなるーー。 電子書籍では味わえない仕掛けが用意されているという見出しが特徴の本作は、確かに面白い仕掛けとして機能しているが、個人的にそこまで驚きがないまま読み終えていた。燈馬の心情変化に追従することで見える真実には魅力があるものの、自分のように人を選ぶ作品ではあるのだと思う。
  • 2026年4月19日
    アナヅラさま
    アナヅラさま
    「まるでブラックホールのような大穴が存在したなら、罪に問われずに邪魔者を排除できるだろうか。」 山奥に存在する大穴、通称"アナヅラさま"は落ちたすべてを飲み込むという。小鳥遊穂香はとある依頼をきっかけに連続殺人事件を追う探偵だ。彼女は事件にアナヅラさまが関係していることを突き止め、犯人探しに奔走するが、その先に待つ展開は想像を遥かに超えていたーー。 殺人において、証拠を簡単に消すことができたなら、完全犯罪は可能かという部分にフォーカスをあてており、穂果の一癖ある設定、奇妙な大穴の存在を用いて、独特の雰囲気を生み出すことに成功している作品。読みやすく内容が入りやすい印象を受けた。
  • 2026年4月16日
    わたしの美しい庭
    「大切な人を失うことになったとして、自分まで変える必要があるのだろうか。そんな答えを出せるのは神さまくらいだろう。」 マンションの屋上には小さな神社が祀られている。血のつながりがない百音と統理、大好きな彼を忘れられない桃子、同性が恋愛対象の基、悪いことを断ち切ってくれるこの場所には、心のわだかまりを持った人が集まってくる、彼らは今日という日を大切に生きていくーー。 他人に対して変わった人というレッテルを貼るのは意識したものだろうか、あなたに迷惑をかけるわけでもないのに、価値観が違うことを指摘するのは正しい行いだろうか。人生を生きる中で自分を相手に委ねるのではなく、自分自身がどうしたいかを思い出させてくれるような、くすぐったくて温かい日常がこの本に詰まったメッセージだ。
  • 2026年4月14日
    十戒
    十戒
    「日常感あふれるこの状況で、当然のごとく殺人が起きている現実を直視せずにいられるかどうか、私自身にすら分からない。」 父親の兄が亡くなり、遺産として残った島の活用としてリゾート再建計画の下見をするため、里英と父親を含めた関係者数人は島へと向かうことに。日付が変わって朝、関係者の1人が死体で発見され、近くには十戒が記された紙切れがあった。これを守らなければここにいる全員、命の保証はないーー。 スマホも電波も食料もある安全な状況の中、課せられたルールを守る以外の理由で動き出すことが許されない状況を作り出し、日常を恐怖へと変え、正しい行いをしていれば助かるんだという希望を与えて、激しく感情を揺さぶってくる。空気感が新しいミステリーだった。 読む上での注意点はただひとつ。何も理由を聞かずに同じ著者の「方舟」を読んでから手に取ること。この衝撃はきっと一度きり。
  • 2026年4月9日
    方舟
    方舟
    「なんとしても犯人を見つけなければ。そして犠牲になってもらわなければならない。」 運悪く地下建築で閉じ込められた男女の集まり。地下水が入り込みタイムリミットが迫るなか、殺人が起きてしまう。お互いを観察し犯人を見つけ出せれば、たった1人が犠牲になればこの地獄から抜け出せるのだと、誰もが信じていた。 じわじわと迫る水位のように面白さが蓄積していく。めくる手がどんどんと早くなる、そんな魅力がこの400ページに詰まっている。そして結末にたどり着いた時、思わず天井を見上げてしまうだろう。
  • 2026年4月6日
    神さまのビオトープ
    「わたしも、みんなも、秘密と決意に満ちた暮らしを守っていけますように」 うる波は、死んだ旦那さんの幽霊と暮らしている。彼の存在を秘密にして生きていく中で様々な人物に出会い、彼と話して折り合いをつけていく。自分のように何かを抱えて生きている人は身近にいる。そんな出来事を記した四篇の話。 幽霊と暮らす。確かに普通じゃない、けど。もし自分がお別れした大好きな人とまた一緒に暮らせるとしたら、触れ合えるとしたら、周りなんて気にならないんじゃないか、可能性があるなら望む人もいるはずだ。自分はまだそんなかけがえのない人とは出会えていないけど、もし出会えたなら現実には2度目がないことを、この本を読んだことを思い出して、大切にしたいと思った。
  • 2026年4月2日
    「好き」を言語化する技術
    「あなたの感情を他者に介入させず、純粋な形に落とし込んでいく。なぜそう思ったか、ただひたすらに細分化して慣れていってほしい。」 好きなものを好きだと叫ぶことをやめられないのが人間であり、それをうまく言語化できないのが人間である。意識して細かく思い出すことや工夫を凝らすことを続けてしか自分の想いが言葉にならない。そのハードルを下げつつ方向性を示すのがこの本だ。 推しや趣味を好きたらしめる理由を説明できるかと自問自答したとき、何でだっけ?となる。当たり前のことだが、これをもし言葉にして即答できたら、自分なりの答えを持てていたら、かっこいいと純粋に思う。この本を読んで、日常の様々な行動をなぜと唱えて理由を述べられる人間でいたいと思えた。
  • 2026年3月30日
    汝、星のごとく
    「自分の楽しさや苦しさを優先して、相手を想いやれない。一緒にいたいって思うのにできない、だからやっぱり、私たちは馬鹿なんです。」 瀬戸内の島で暮らす暁海、男好きの母親に振り回される櫂、孤独を抱え、親にも恵まれず、自慢できることもない、同じ境遇にいた2人が結ばれるのは必然だった。ただお互いに意識し合って、すれ違って、そんなひとときの幸せを噛み締める。本当はただそれだけでいいのに、うまくいかない。そんな2人の切なくてどこか少し温かい物語。 生きる過程で環境が、人が、自分さえも変わっていく。なのに変わってほしいものは変わらない。そんな当たり前のことのせいで感情の浮き沈みをくり返していく。そんな日々が、星のように輝いて見える。ささやかな幸せを追っていく、想う人は違ってもその温かさはきっと同じであってほしい。 とにかく…読めて本当によかった。ありがとう。記憶を消してまた読みたいリストに入れます。
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