
いち。
@tokisakananao307
読書好き。
読むスピードが遅い、もっと速く。
アウトプットが下手、もっと上手く。
何事も積み重ねあるのみ。
- 2026年7月7日
それでもまた誰かを好きになるこざわたまこ,カツセマサヒコ,一穂ミチ,光文社文庫編集部,千加野あい,朝比奈あすか,田中兆子,砂村かいり,麻布競馬場読み終わった「僕は思うんすけど、ミコトが変わったのは、変わりたいって本人が思ったからでしょ。今のままじゃ許せない自分がいたってことでしょ。なら俺は、その気持ちを尊重したい」 人生における分岐点、30代。うまくいかないことばかりでそれは恋愛も同じようなもの。20代の頃ほど勢いだけではうまくいかず、とびきり不幸というわけでもなくそれなりの生活をしている。これは、大人になりきったつもりがなりきれていない人間たちの心を描いた短編集。 周囲の環境や自身の経験は変えられないものであるがゆえに、人と違って、ズレがあるように思えて、不安の種に変わっていく。普通という境界線は曖昧なのに人並みの幸せとか、年齢に対する成長度合いとか、そういったものが自然に現れてきて焦りや葛藤を感じさせる。そんな中でも懸命に生きている登場人物たちに共感する部分が多くあった。 - 2026年7月4日
ヤエブキ機関 千万丈塔踏破録1necomi,安里アサト,尾崎伊万里読み終わった「人が殺されるのは怖いでしょ。人を殺すのは怖いでしょ。だってそれは悪だもの。どんなに理由をつけてもどんな正義を掲げても、人を殺したらそれは悪だもの」 滅びゆく世界を救う大儀式・千万丈塔踏破に挑む双子の術師・天茜と碧燈。彼らは邪教集団の霊術テロを防ぐため、帝都備役の少女・祭花と手を組むーー。これは滅びの宿命に抗う英雄たちの物語ーー。 固有名詞のオンパレード。参考文献は古今和歌集とか古事記とかそんなものばかりらしい。和風×サイバーパンクとかいう奇天烈なこの世界観をより深く理解するために、無理矢理情報を詰め込んだが、読み終わった時には少なくとも面白いと思えたので、出会えてよかったと思っている。わからないときはとにかく読み進めろって誰かが言ってた。 あとがきの後に読み手の意識が覆されるなんて1巻からハードモードすぎないですか。 出てくる要素欲張り構成。刀、霊術、銃、ダイオウイカ、ティラノサウルス、機械人間、人種階級など。とにかく多い。 巻末に設定資料集があって助かる、と言いたかったが、知らないキャラクターによる対話形式になっていて個人的には残念。説明だけでいいんです。辞書的なやつにしてほしかった。読みづらい。 力が入っているようで2巻刊行も決まっているので、そこでさらに解き明かされる真実に期待したい。 - 2026年6月23日
夜警ども聞こえるか皮肉屋文庫読み終わった「今に見ていろ。その聞き分けのない耳に、いつか聞かせてやる。」 フリマアプリで購入した一台のボイスレコーダー。そこには、夜間自主警備、通称「夜警」を行う学生たちによって語られたと思われる、数多の怪談音声データが残されていた。本書はそのデータとボイスレコーダーにまつわる記録ーー。 短編による場面転換がとても顕著にみられる。伏線であっても数が多すぎるのには苦しいものがあった。多分30個以上はあった。なので、これらを形作るものにいよいよたどり着いた時、あっけらかんとしてしまったことを許してもらいたい。短編ごとの怪異が響く感じは良い部分で、あえて読み手が考える余地を残していることは理解できる。 - 2026年6月17日
読み終わった「いつかまた生まれるその時まで」 フリーライターの小林、心霊スポット巡礼系動画クリエイターの池田、2人は池田の動画チャンネルのファンブックを刊行する企画を立てていた。過去の動画を洗い出して考察する中で、彼らの元に奇妙な出来事が起こるようになるがーー。 あぁ…また岩だ。いにしえの昔からその土地に居続けた存在ともいえるそれから呪いが溢れ出てきたのか、はたまた溢れさせたのか、誰かを陥れようとする気持ちにつけ込んで、この終わらない輪廻に誘おうとしている。でもそれは人が犯してきた業のようなものでもある。次はあなたの番、かもしれない。 輪廻転生というものがあるとしたら、何者かに殺された人間が新しい生を受けている可能性がある。もし前世の記憶まで保存していたなら、片隅にある憎悪は消えていないと考えられる。この場合、トリガーの安全装置はすでにはずれていて、手段さえあれば実行するに事足りる。 この物語から痛みは消えず残留することを教えられている気がする。痛覚残留。そこに居なくとも魂は生きているのかもしれない。読み進める中で疑問の連続を感じながらも面白かった、それは確か。 - 2026年6月11日
禍話nFEAR飯(かぁなっき、加藤よしき),梨読み終わった人気ラジオ禍話には、幻の第n回放送があるという噂があった。しかし、パーソナリティである2人はそんな回があった記憶はないという。果たしてこの放送は存在したのか、しなかったのかーー。 スラスラと読みやすい短編ホラー。幕間の対談パートがより現実感を生み出している。怪奇現象には目に見えないエネルギーでもあるのか、危険が伴うイメージがある。冒涜しているつもりがなくても、あちら側にとっては知ったことではない。体験談が知らない形に変容したり、思考した展開が現実になったりすることがあるのは、根源となる存在のいたずらか、別の影響か。この確証がないところに考える意義がある部分が一つの魅力といってもいいだろう。 - 2026年6月9日
美澄真白の正なる殺人東崎惟子読み終わった「私はとても驚いた。だって私は笑っていたのだ。」 警官である父親に影響され、正義の味方を志す美澄真白は、かつての親友、紫音と8年ぶりの再会を果たす。真白は紫音が闇を抱えて生きていることも知らずいたが、身体の傷や彼女の母親の姿を見て違和感を感じていく。正しさとは何かを自問自答し、大切なものを守るために、彼女はいま大きな決断を下そうとしているーー。 他人の異常行動や思考を目にした時、正面から崩すことは難しい。それゆえに手段が大胆かつ強引になってしまう。そんなつもりがなくても、そうするしかない状況に陥った時どうするか、美澄真白に宿る自分は二の次でいいと考える行動に、正義の味方という曖昧な目標に、善意だけが含まれているわけではないと理解する。トロッコ問題で、助けるときに1人か多人数かを選び取るように、何が正しいかわからないような問題があるのは当然なのかもしれない。選択肢とは何かを決めるためのもの、だから決断していく必要がある。 - 2026年6月4日
ラブカは静かに弓を持つ安壇美緒読み終わった「たとえ、経歴とかが嘘だったとしても、君は、ちゃんと、ここに来た。この世は何が起こるかわからない」 全日本音楽著作権連盟、通称を全著連。これに所属する橘はある調査のため、ミカサと呼ばれる楽器メーカーの音楽教室へ生徒として潜入し、スパイとして活動を開始する。彼は身分を偽りながら、目的のために講師である浅葉とその仲間と接触し続ける。その日々の中で確実に、彼の意識はかつて情熱を燃やした音楽へと傾き始めていたーー。 嘘がテーマの物語で、主人公の葛藤がストレートに表現されている作品。気がついたら取り返しのつかない状態になっていて、それをわかっていたのに止められない事情があって、でもそれは決して本意ではなくて、絶対悪は別のところに存在するのに自分が引き金を引いた事実は変えられない。現実に生きていて嘘をつかないというのは大小にかかわらず、不可能に近い。真実だけ伝えることが正解とはいえない。そんな不完全な状態から脱却しようとする主人公に、変わるきっかけが舞い込んだって、そんなうまい話があったっていい。 - 2026年5月31日
赤と青とエスキース青山美智子読み終わった「長い旅をしてきたね。君はわたしの知らない景色をたくさん見てきたことだろう。それをわたしは知る由もない。それが、いいんだ。とても。」 メルボルンに留学中のレイと画家を目指す日系人ブーは期間限定の恋人となる。額縁工房に勤める空知は何気ない毎日を過ごす中で、エスキースという絵画に出会う。1枚の絵画があらゆる風景や人々の想いを見てきた記憶がここに記されているーー。 物語を見届けたとき、すべてが繋がりを持っていることに気づくことで見える風景が広がっていく構造。あらゆる表現の赤と青の対比を巧みに使う技法には驚かされ、描かれるキャラクターの感情の揺れには共感と学びが多い。別視点を持ってきておいて実はバチバチに繋がっているお話だったんですよという構造、すごいの一言では表せないし、心地いい。 - 2026年5月27日
52ヘルツのクジラたち町田そのこ読み終わった「ひとには魂の番(つがい)がいるんだって。愛を注ぎ注がれるようなたったひとりのひと。あんたがその魂の番に出会うまで、わたしが守るよ」 52ヘルツのクジラとは、他の仲間に聞こえない高い周波数で鳴くため、音を届けられないという孤独の存在。家族に人生を壊され続けてきた女性、貴湖は同じような扱いを受けている少年、ムシと出会う。これは同じ孤独感によって惹きつけられた2人が成長し、愛を知るまでの軌跡ーー。 人生を生きる上で自分を邪魔する障害が現れたとしても、共に打ち砕いてくれるような人がきっとどこからか現れて、悪い流れを断ち切ってくれる。自分に嘘をつかなければ、何かがいい方向に働いて変わっていく。そんな様子がクジラの鳴き声という比喩表現となって、壮大な物語として感じられる。人の愚かさと優しさのせめぎ合いに苦しんだり温かくなったりする、社会派小説の擬似体験は確かにフィクションだけれども、どこかリアリティがある。これが癖になる理由の一つだと理解した。 - 2026年5月24日
一次元の挿し木松下龍之介読み終わった「僕が彼女の手を取り、抱き寄せたその瞬間から、迷宮に足を踏み入れていたのだ。」 ヒマラヤ山中で二百年前に見つかった人骨をDNA鑑定にかけると、四年前にいなくなった妹のデータと一致した。遺伝人類学を学ぶ悠はこの異様な結果を教授の石見崎に相談しようとした矢先、彼を遺体として発見する。さらにその直後、鑑定していた人骨が盗まれる。悠は妹の行方とともに謎を追いかけんと奮闘する。この先に待つ真実が壮絶なものであることを知らずにーー。 人を形作る細胞の説明を随所に散りばめるなど、専門知識紹介が多い中でも読みやすく感じる。その理由は登場人物の視点を細かく分け、丁寧に描くことで可能にしており、物語の描写がよりスッと入るような感覚がある。タイトル回収もわかりやすく綺麗なものだと思う。 - 2026年5月20日
読み終わった「わたしは続きが読みたい、だからこの想いを物語としてあなたにぶつける。」 「君という物語の最初の読者は、僕でありたい。じゃなきゃ嫌なんだ。」 成瀬はついに再会した親友に小説の魅力を否定され、小説を通して救われた自分にその責任があると感じ、物語に可能性はないことを思い知らされる。その一方で、一夜と詩凪は物語を紡ぐことに対して大きな壁を抱えたことで、ある選択を迫られていた。彼らは考え続ける。物語とは何のためにあるものなのかーー。 物語の上で読者と作者がつながったとき、はじめて意味を理解できるのだとしたら、そんな奇跡は起こらなくて当然である。しかし、作り手が作り手であり続ける本当の理由は、顔も知らない求めてくれる人がいるから、理解しようとしてくれる人がいるから。本屋に行って惹かれた本を手にとる、そんなささいなことが日常に潜む奇跡と言ってもいいのかもしれない。 - 2026年5月16日
- 2026年5月14日
悪魔情報城戸,オモコロ編集部読み終わった「この世には知らない怪異が山ほどある。それを知ることがいつか役に立つ日がくるかもしれない。」 2chのような掲示板形式で展開されるオカルト現象を題材にした本。洒落にならない怪異に対して弁論をくり広げるスレ民達は密かに期待している。悪魔情報というユーザーが現れることをーー。 笑いごとではないくらい異常な現象に対して、キレのあるツッコミや閃きを投稿していく名無し人達のセンスがありすぎて、怖いどころかクスっと微笑んでしまう新感覚の本だった。電子書籍の方が向いていそうな本に出会えるとは想像もしていなかった。こういうのも表現もありなのか。 - 2026年5月12日
小説の神様相沢沙呼読み終わった「小説とは願いなのかもしれない。物語を通じて私達は勇気をもらって歩き出せる気がするから」 千谷一夜は売れない高校生作家で、かつての輝きを失い小説が書けずにいた。しかし、突如現れた同い年の人気作家の小余綾詩凪と合作小説を執筆することになる。果たして2人が書き上げる小説にはどんな物語が綴られるのだろうかーー。 一夜は本が売れないことに焦りを感じている中で詩凪と出会う。自分の物語を書き続けることでしか自分の価値を証明できないが、万人受けしない事実がそれを否定するかのように現れる。正解なんて存在しない、売れなくては作家としてやっていけなくなるかもしれない。そんな葛藤にもがく彼を応援せずにはいられなかった。 - 2026年5月10日
白昼夢の青写真2Laplacian,緒乃ワサビ,霜降読み終わった「信じてるわ。あなたの描く物語で、私を史上初の女優にしてくれるって。」 タフすぎるヒロインと出会い、やがて大成するであろうウィリアム・シェイクスピアが劇作家に成るまでの苦悩と成長を描いた中世ヨーロッパのお話。 時代に抗い、価値観に囚われず挑戦し続けたウィルとオリヴィアが生きている情景がしっかりと脳内に浮かぶ。原作をプレイしたあの瞬間の再演ともいうべきこの体験は凄まじい満足感を確かに与えてくれる。この作品はまだまだ面白くなることをここに宣言させてほしい。 - 2026年5月7日
- 2026年5月5日
- 2026年4月29日
火のないところに煙は芦沢央読み終わった「火がないと思い込んでいても、煙はすでに迫っているのかもしれない。そう思わずにはいられなかった。」 短編集だが、どの話においても「日常に起こる怪異がベースとなる一貫性」があり、平穏が嫌な気配とともに塗り替えられていく様は怖くても続きを読まなくてはと思わせてくる。現実か創作かの境目があるように見えるが、それすらも考えるべきではないのかもしれない。まさかと思う展開が何度も味わえる傑作。 - 2026年4月26日
- 2026年4月25日
屍人荘の殺人今村昌弘読み終わった「私はどうしても復讐しなければいけなかったんです。あの人達の人生を狂わせた張本人を。」 大学のミステリ愛好会に所属する葉村と明智。今日も今日とてくだらない会話をしていると、同じ大学の探偵女子、剣崎から映像研の夏合宿に行こうと誘いを受ける。彼らは紫湛荘というペンションに泊まることになるも、信じられない事態に巻き込まれ、籠城を余儀なくされる。それだけではとどまらず、一夜明けると部員が死体となって発見される。まさに地獄が幕をあけた瞬間であったーー。 一難去ってまた一難とは、この作品のように、外も内もクローズドサークルである状況を指した言葉なのかもしれない。この特殊な状況には確かに現実味がある。複雑ではないが真実に迫りきれないバランスが読む速度を加速させていく体験として確立されている。
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