断片的なものの社会学

103件の記録
- 朝日出版社@asahipress2025年5月23日出版社よりたとえば誰かが死んだ知らせを受けたとき、幸せな人生だったな、とか、波瀾万丈でかわいそうな人生だった、とか考えることがよくありますが、他人の人生なんて勝手に理解できるわけない。物語にして納得するのはラクだし簡単なことですが、もしかしたら世界を狭めているのかもしれません。 この本を読んだ後は、道に落ちている石ころが輝いて見える、いやそれも違います、石が「ただある」、そのことの驚きを感じることができる、そんな一冊だと思います。 著者の他の本では『街の人生』(勁草書房)も忘れることのできない一冊です。こちらもあわせておすすめします。
- 綿@shelf_soya2025年5月17日読み終わった語り口がかなりしっくりくる。「手のひらのスイッチ」の幸せのイメージとされる規範の暴力、それに縛られて生きること、しかし一体どれだけ「個性的」でそこから規範から離れた「孤独」を選択できるかというエピソードが、自分が考えていることの延長にある話で、ここに読みたいことが書かれている、という気持ちになった。
- とむ@tom_books2025年5月13日再読中読み始めてすぐ、数年前最初に読んだ時と明らかに感じ方が違うことに気づいてびっくりした。別人になったは言い過ぎだとしても、毎年ただ数字を増やしていっているだけではないんだなとこんなところで実感する。
- リチ@richi2025年4月30日かつて読んだ心に残る文も多く、本が栞だらけになってしまった。孤独や、差別、暴力、幸せ、居場所、などなど、様々なことが、本を読み進める流れに乗って自然に考えが深まる気がする。こう書くと何か難しそうなのだが、全く難しくない(それは丁寧に言葉を尽くして書かれているからだ、と思った)、というところだ。
- こまつな@komatsuna2025年4月29日読み終わった新幹線、地方のローカル電車内で読んだ。合ってた。 ラベルをなかったことにするのではなくて、「ラベルとともに生きる」のは、心の中の特に汚い感情と常に対峙し続けなくてはいけないし、その汚い感情の存在を常に認めなくてはいけないから、すごい辛いしみすぼらしいしむずかしい
- はるのひ@harunohinouta2025年4月24日気になる読みたい買った去年の春にXで突然流れてきたかわいい子犬(ちくわちゃん)きっかけでフォローした社会学者の岸政彦先生。ご著書も気になってたけどここ数年読書欲が低めでなかなか手が伸びず…でも最初に読むならこの本がいいなと思ってた。読書熱が戻ってきたので満を持して購入。 ちなみに今年の1月に『文藝』2025春号に掲載されたエッセイ「犬は自転車」で初めて岸先生の文章に触れて、とてもよかったし好きな文体だったから他のご著書を読むのがさらに楽しみになった。
- 清水美穂子@favoriteworks2025年3月29日かつて読んだ閉館後の図書館で、本の森を散歩する『ナイト ライブラリー』のイベント2回目。図書館員の気になる本のなかに、この本があった。 この本を読んだとき、心に残る話がたくさんあったのだけど 「幸せというものは、そこから排除される人びとを生み出すという意味で、同時に暴力的でもある」というのがハッとする言葉だった。でも、 「完全に個人的な、私だけの『良いもの』」なら、誰を排除することもないのだ。 なにかに傷ついたとき、黙ることも怒ることもできるけれど、笑うこともできる、というのもよかった。 それから、岸政彦さんの本を読むようになったのだったかな。
- 五日@itkkti_19862025年3月26日買った読み終わった人生は断片的な出来事が連なってできている。一つ一つの断片からその人を読み解けるわけではないし、何があるわけでもない。それなのに著者の語りによってその断片は歪なまま乱反射して光る宝石のようにも見える不思議。とりあえず1/4ほど読んだ。 4.12 追記 なんでもない断片をかき集めた我々の人生は、「かけがえのないもの」でもなんでもない。しかし、なんでもないからこそ、投げ捨てたり、疎かにしたり、あり得ない判断をしてしまったりすることができるし、だからこそ得られる煌めきがあること。
- Miharu@mhr0232025年3月15日読み終わった大切な本@ CHIENOWA・BOOK・STORE大学生の時図書館で借りてすごく良くて、いつか絶対買おうと思っていた本。地元の本屋さんで見つけて買った。素敵だなと思った装丁が鈴木成一デザイン室だった時の嬉しさ。 「ユッカに流れる時間」の話がなぜかとても印象に残っていてたまに思い出してしまう。
- amy@note_15812025年3月14日かつて読んだ感想この本に綴られている取り留めのない、ゆらゆらと揺蕩って流れているような誰かの日常の断片と岸先生の距離感がすごく心地よかった。いまはSNSで何かに対する意思や意見を表明することが求められていて、述べることの根拠や理由なども考えて一生懸命に140字や数百字に詰めることを構築しなければと切羽詰まっていたのだなあと思い知らされた。隙間というか余白のある場所というものが少なくなってきて、そういう場を脳内に作ってくれるような本は貴重だ
- 夏海@72noumi2025年3月10日読み始めた読み終わった@ 自宅どっちがいいということではない、ただ〜というだけである。という言い方がたびたび出てくる。他人の話を多く聞けば聞くほど、理解しようと思えば思うほど、断言できないことばかり増えていく。疲れたときには、このくらい曖昧な言葉に救われることもある。
- アキ@aknmnr01412025年3月10日心に残る一節断片的な人生の記録を、それがそのままその人の人生だと、あるいは、それがそのままその人が属する集団の運命だと、一般化し全般化することは、ひとつの暴力である。
- comi_inu@pandarabun2025年3月7日かつて読んだオールタイムベストこれを読んだときに坂口安吾の『文学のふるさと』を思い出した。 「生存の孤独とか、我々のふるさとというものは、このようにむごたらしく、救いのないものでありましょうか。私は、いかにも、そのように、むごたらしく、救いのないものだと思います。(略)モラルがないということ自体がモラルであると同じように、救いがないということ自体が救いであります。 私は文学のふるさと、或いは人間のふるさとを、ここに見ます。文学はここから始まる――私は、そうも思います。」 文学になる以前の物語の断片、生存の孤独がここにはある。そしてその生々しさを真摯に集め、考える学者がこの世にいる。 この作品を読めば、ごく個人的で誰も知る由のない出来事たち、意識した瞬間に意味を持たなくなるような事柄たち、夥しい数の人間のひとりひとりの中に込められたとるに足らない物語たちの結晶体がわたしたちが生きるこの社会であるのだとよくわかる。 確かに社会学の本である。社会学の本でありながら、ああ人間って、人生ってそうだよなあとしみじみさせる一冊でもある。 道端に置かれた巨大なアロエの鉢に水をやるひとがいるのだと、そう考える時間をくれた作品だ。
- renterao@_balaclava_mag2025年3月6日読み終わったとある日、諸事情で家に入れなくなってしまった。 読書しながら開錠を待とうと入ったのは、正月の夜、人が多くも少なくもないファミレス。 シチュエーションは、言い過ぎかもしれないが、この本のささやかな感動と運命じみたリンクを感じた。 という思い出も含めて、良い本。
- 白川みどり@midorishi_2024年8月27日かつて読んだ優しさってなんだろうってずっと考えてた。この本かもしれないと思った。岸さんは「ほんとうにどうしていいか分からない」と言う。暗い海の中を潜りながら、揺れ惑う。正しさとか普通とか幸せとか、そういった規範から排除されてしまう人々のことも、その規範の中で生きている人々のことも、誰のことも置いていかない。
- 空気@lumemolle2023年4月8日徹底的に世俗的で、徹底的に孤独で、徹底的に厖大なこのすばらしい語りたちの美しさは、一つひとつの語りが無意味であることによって可能になっているのである。p39 「被害者」のようなものになっていく。〜「抵抗者」になっている。不謹慎な笑いは、人間の自由というもののひとつの象徴的なあらわれである。p101 そもそも幸せというものは、もっとありきたりな、つまらないものなのではないだろうか。p116 自分のなかには何が入っているのだろう、と思ってのぞきこんでみても、自分のなかには何も、たいしたものははいっていない。ただ、そこには、いままでの人生でかきあつめた断片的ながらくたが、それぞれつながりも必然性も、あるいは意味さえもなく、静かに転がっているだけだ。p193